👺天狗と🍑桃太郎の再修業
片桐 みかん様の企画に参加させて戴きました。⬇️
天狗と桃太郎の再修行
鬼退治を果たしてから数年。
鬼たちはすっかり改心し、村へやって来てはアルバイトに励んでいた。

力持ちの黄鬼は荷運び屋さん。
赤鬼は掃除屋さん。
青鬼は洗濯屋さん。
小鬼たちは草むしりをしたり子どもたちの遊び相手に。
そんな平和な毎日が続いていた。
ところが、肝心の桃太郎はというと、
「あと五分……」
「桃太郎、もう昼じゃぞ!」
「あと三分……」
すっかり怠け者になっていた。
見かねたお爺さんは山奥に住む天狗に頼んだ。
「どうか、あやつの性根を叩き直してくだされ」
「任せておけ!」
天狗は鼻息も荒く飛び立った。
だが、この天狗。
空を飛ぶのは得意なのに、方向感覚は壊滅的だった。
三日後。
天狗は鬼ヶ島に到着した。
「桃太郎! 修行の時間じゃ!」
「ここ鬼ヶ島ですけど?」
アルバイト中の赤鬼が教えた。
「村は反対方向ですよ」
「なんと!」
さらに三日後。
今度は海の向こうの温泉街に到着。
「桃太郎!」
「いや、わし旅館の主人ですが」
また間違えた。
その後も、
猿の集会に乱入したり、
犬の品評会で演説したり、
雉の渡り鳥グループについて行ったり。
気が付けば半年が過ぎていた。
ようやく村へ辿り着いた頃には、天狗の羽はボロボロ。
鼻も日に焼けて真っ赤だった。
すると村人たちが驚いた。
「桃太郎が働いてる!」
畑では桃太郎が汗を流していた。
鬼たちと一緒に畑を耕し、橋を直し、朝も早起きしている。
「どういうことじゃ?」
天狗が尋ねると、赤鬼が笑った。
「天狗様をみんなで探しに行ったんですよ」
迷子になった天狗を心配し、桃太郎は鬼や仲間たちと半年間、日本中を探し回っていたのだ。
山を越え、
海を渡り、
村々を巡り。
そのおかげで怠ける暇などなかった。
桃太郎は笑った。
「修行って、誰かを助けようとすると自然に始まるものなんですね」
天狗はぽかんとした。
自分は何もしていない。
むしろ迷っただけだ。
しかしお爺さんは満足そうに頷いた。
「結果オーライじゃな」
その夜、村では盛大な宴が開かれた。
鬼も人も一緒に笑い、
桃太郎は久しぶりに早寝をした。
そして翌朝。
「あと五分……」
「あと三分……」
どうやら性根を叩き直されるべき者は、別にいたらしい。
#3つのお題に空想のひらめきを
#寝坊した桃太郎
#鬼のアルバイト
#方向オンチの天狗
#創作大賞2026
#オールカテゴリ部門
#掌編小説
