モチモチ・ムーンライト🌕
動物タレント事務所には、大勢の動物たちが所属していた。
その中でも今をときめく売れっ子俳優は、猫のニャン吉だった。
この日も舞台『桜を咲かせる猫』に出演し、満員の観客から大きな拍手を浴びていた。

舞台が終わると、今度は映画『月夜の餅つき』のクランクアップへ向かう。
月夜の村で、うさぎたちと鬼が力を合わせて餅をつく心温まる作品だ。

エンディングには、ニャン吉の楽曲『モチモチ・ムーンライト』が使われる。
この日の撮影はなかったが、脇役の鬼のデンデンも一生懸命演じていた。
そして撮影終了。
スタッフたちは声をあげて言った。
「今夜は村の居酒屋で打ち上げだ!」
みんな大喜びだった。
ところが。
クランクアップ当日に撮影に参加していないデンデンは、打ち上げに誘われなかった。
「ぼ、ぼくだけ呼ばれてない……」
撮影現場の片隅でクランクアップを見守っていたデンデンはひとり寂しく、大きな角をしょんぼり垂らし、村の外れのデンデンの家の前に腰を下ろした。
夜空には満月。
デンデンの目からは大粒の涙がぽろぽろ落ちていた。

その時だった。
「はい、これ。」
一人の男の子が現れた。
差し出した籠にはほっかほかのおにぎりが3つ並んでいた。
「元気出して。」
デンデンは驚いた。
「ぼく、鬼だよ?」
「知ってるよ。でもお腹すいてるでしょ。」
男の子はにっこり笑った。
デンデンは恐る恐るおにぎりを受け取る。
ぱくり。
もちもちのご飯。
香ばしい海苔。
中には鮭。
思わず目を丸くした。
「う、うまい!」
もう一口。
「うますぎる!」
さらに一口。
「こんな美味しいもの初めて食べたぁ!」
涙と一緒にご飯粒まで飛び散る勢いだった。
すると突然、
パンパカパーン!
花火が上がり、木陰から大勢のスタッフが飛び出してきた。
「ドッキリ大成功!」
「えっ?」
デンデンは口いっぱいにおにぎりを詰めたまま固まった。
監督が笑いながら近づいてくる。
「実はこれ、ドッキリ番組の撮影だったんだ。」
「へ?」
「それと同時に海苔のCM撮影も兼ねていたんだ!」
周囲のカメラマンたちが拍手した。
モニターには先ほどの映像が映し出されている。
悲しそうな鬼。
優しい男の子。
そして、おにぎりを食べた瞬間の最高の笑顔。
誰が見ても心を打たれる映像だった。
監督は親指を立てた。
「デンデン。うまそうに食べていた顔が最高だったぞ!」
そこに、ニャン吉もやって来た。
「今日の名演技賞はデンデンだね。」
デンデンは照れくさそうに頭をかいた。
「じゃあ打ち上げ行こうか。」
「もちろん!」
みんなで居酒屋へ向かう。
その途中、男の子が尋ねた。
「デンデンさん、もう一個おにぎり食べる?」
デンデンは満面の笑みで答えた。
「食べる!」
その返事もまたカメラに撮られていた。
翌月。
海苔のCMは大ヒットした。
キャッチコピーはこうだった。
『泣いてる鬼も、思わず笑うその旨さ』
そしてデンデンは、動物タレント事務所初の”鬼タレント”として、一躍人気者になったのである。
めでたし、めでたし👏
片桐 みかん様の
⬇️こちらの企画に参加させていただきました。
#3つのお題に空想のひらめき
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#創作大賞2026
#オールカテゴリ部門
