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短編小説「関係ない」

あらすじ
小学6年生である立花あかりは正義感が強く喧嘩っ早い女の子。誰かが困っていると直ぐに手助けする。でも、いつも手が出てしまい、結局は先生やお母さんに怒られてしまう。クラスでいじめられていた田中くんをいつものように暴力で助けたあかりだったが「お前には関係ないだろ!!」と言われてしまう。折角、助けたのに、と不満を感じていたあかりだったが、そんな時、クラスの女子である松林さんがあかりの靴を隠そうとしていることを知る。暴力で解決することはよくないことだと薄々感じていたあかりは機転を効かせて、松林さんを尾行し、隠し場所を見つけてやろうとすると、下駄箱で田中くんと松林さんが討論している姿を見つけてしまう。


私は正義感が強かった。

誰かが困っていたら手を差し伸べるのが当たり前だし、そうやって行動できる自分が誇らしかった。

「お前には関係ないだろ!!」

だから、田中くんにそう言われたとき、凄く腹が立った。

折角、助けてやったのに。なんだ、その言い草は。



田中くんはいじめられている。

きっかけは分からない。でも、田中くんは鈍臭いところがあって、いつもクラスに迷惑をかけていた。

最初は男子同士、ふざけて戯れあっていたが、それは徐々に過激になり、6年生になる頃には誰がどう見てもいじめに見えるほどまでになった。

クラスの女子のほとんどがそれを見て見ぬふりをしている。

だが、私は我慢できなかった。

「おい、男子ども!」
「な、なんだよ、あかり」
「弱いものいじめなんてちょーダサいよ」
「いじめじゃーねーし、遊んでるだけだろ? なぁ?」

男子どものリーダーである翔太が田中くんの首に腕を回し、そういった。

「田中くん、嫌がってるじゃない!」
「うるせーな、女のお前には関係ないだろ!」

ピキッ。頭の中で何かが切れる音がした。

冷静さを欠いた私は翔太の首を思いっきり締め上げていた。

「……グヘェ!! あ、あかり!! ギブだって、ギブギブっ!!」

私が緩めると翔太はその場でヘナヘナになって座り込んだ。

男子どもは「先生にいいつけてやる!」と捨て台詞を吐きながら、翔太を保健室まで運んだ。

「田中くん、大丈夫?」

私は手を差し伸べる。しかし、田中くんからは反応がない。

「……どこか痛む?」

私はしゃがんで田中くんの顔を覗こうとした。すると、いきなりばっと立ち上がって、

「お前には関係ないだろ!!」

そういって教室を飛び出していった。



その日の放課後、私は職員室に呼ばれた。

「……なんで呼ばれたか、わかるな?」
「わかりません」
「佐々木の首を絞めたそうじゃないか」
「私、女の子ですよ?そんな乱暴なことはできませんよ」

私はそういって、ウィンクをする。

「あのな、立花。俺は先生としてお前のことをずっと見てきた。何でもかんでも暴力で解決しようとするお前をな!」

先生はそういうと私の頭をぐりぐりしてきた。

「痛いって! 暴力反対! 暴力反対ですっ!」
「どの口が言うか!」
「お母さんにいいつけてやる!」
「大丈夫だ、お母さんからは許可を得ている」

先生とお母さんは学生のころ、先輩後輩だったこともあってか、何かあれば直ぐに連絡がいく。それゆえ、お互いの信頼が厚い。学校での出来事は全て筒抜けだ。

そして、仮に私がお母さんに泣きついても、「あんたが悪いんでしょ!」と言われることも想像できる。

「まぁ、立花が悪いわけじゃないのは先生も知ってる。それに先生としても今回のことで佐々木と田中と話すきっかけになったからな、ありがとう」
「素直にそうやっていってくれればいいのに」
「ただ、やり方は褒められたもんじゃないだろう?」
「それは、まぁ、そうですね」

私だって、暴力はよくないことだってわかるけど、どうしても頭に血が昇ると手が出てしまう。

でも、本音では暴力じゃない解決策もあったのではないか、ってちょっぴり思うのだ。

それでも、先生はいつだって最後にはありがとうって言ってくれる。
それが何よりも嬉しい。

家に帰るとお母さんからもしこたま怒られたが、別に気にしない。

私は弱いものに手を差し伸べただけだ。やり方は間違っているかも知れないけど、自分の正義に従っただけ。

それだけのことなのだ。



その日を境に翔太たちと田中くんはかなり仲良くなった。

もちろん、いつも以上に騒がしくはなったが、いじめているような雰囲気ではなくなった。

クラスは平和になる、そう思っていた。

「立花さん、最近、調子乗ってるよね?」

私がトイレの個室に入っているとそんな声が聞こえた。この声は同じクラスの松林さんとその仲間たちだ。

正直、苦手な女子たちだ。

女子というのは面倒な生き物だと思う。男子みたいに暴力では解決できないことばかりだからだ。
そして、松林さんが私を嫌っている理由は知ってる。

「翔太くんの首を絞めるなんて、あり得ない」

松林さんはなぜか、翔太のことが好きなのだ。

私は翔太とは腐れ縁でずっと同じクラスだし、住んでいる場所も近所だった。だから、翔太が何か悪いことしていたら、その都度、ボコボコにしていたのだが、それが松林さんにとっては気に食わないようだ。

それにしても翔太のことが好きだなんて松林さんも趣味が悪い。

「ほんと、立花さんって暴力ばっかで女の子っぽくないし、あんな人がいたら怖くて授業に集中できないわ」

そう思われていたんだ。薄々感じてはいたけど、改めて本人から言われると流石に傷つくな。

私は息を潜め、話を聞いた。

「立花さんに分からせないと」

分からせるってなにを? やるってんなら相手になるけど?

「そうだ、立花さんの靴、隠しましょうか?」

どうしてそうなるんだよ!

私は心の中でツッコミを入れつつ、どうするべきか考えていた。

これが翔太だったら、今すぐボコボコにするのだが、女子相手、しかも戦う意思がないとなると流石に気まずい。

何かいい方法はないだろうか。

そんなことを考えているといつの間にか気配がしなくなった。

私は扉をゆっくり開く。そこには誰もいない。

さて、どうしよう。靴を隠されてしまうと探すのがかなり面倒だ。

…………うーん。

!! 
あ、そうか、隠し場所さえわかればそれでいいんだ!

バレないように松林さんを尾行して、隠している瞬間をこの目でしっかりと見て、後で靴を取りに行けば、今回のことは問題にならずに済むはずだ。

私も賢くなったじゃん、そう思うと急に嬉しくなった。

私は気分よく、下駄箱に向かった。


昼休みももうすぐ終わるこの時間。既に下駄箱には人影は少ない。

細心の注意を払いながら、ゆっくり松林さんたちを探した。

「あんたには関係ないでしょう!」

すると、急に声が聞こえた。

焦った私は近くにあった掃除道具入れの影に隠れて顔だけを覗かす。

そこにいるのは田中くんと松林さんたちだった。
何をしてるんだろう?

「それ、立花の靴だよね?」
「だったら何よ」
「なんで松林さんが持ってるの?」
「そ、それは……」

もしかして、田中くん、私の靴を守ろうとしてくれてるの?

「……なんか、白けちゃった、今日はもういいわ、行きましょう?」

そういって松林さんは私の靴をポイって投げて、その場を後にした。
お気に入りの靴なのに、投げるなよ。

それを田中くんは拾い上げ、ポンポンと軽く叩くと、私の靴箱にしまう。

いまだ!

「ばぁ!」
「うわあぁ!」

私は掃除道具入れの影から飛び出して田中くんを驚かした。
田中くんは勢い余って尻餅をついてしまった。

「はぁははっ! そんなに驚かなくても! わぁはははは!!」
「……」

予想以上の好反応に大爆笑してしまう。田中くんは心底嫌そうな顔をしていたので、一時、笑っていた私だったが、空気を察して笑うのを辞めた。

「……いつからいたの?」
「いつからだろう? でも、田中くんのかっこいいところは知れたかな?」

そういって、自分の靴箱の棚をトントンと叩く。

田中くんは照れたように視線を逸らす。

だけど、その後、直ぐに顔を上げて

「この前はありがとう」

と言った。

田中くんのこんな真剣な顔は初めて見た。真っ直ぐで綺麗な目をしている。
次は私が視線を逸らしてしまう。
田中くんの目を見ていると、凄く恥ずかしくなって、鼓動が早くなるのを感じた。

「私は関係ないんじゃなかったっけ?」

どういたしまして、そういえばいいだけなのに、その言葉出てこない。
なぜ、そんなことをいってしまうのだろう。

「意地悪しないでよ」
「……そうね」

私はそれだけいうと、逃げるように教室に戻った。

家に帰っても私の鼓動は早いままだったーー。





「付き合ってください」
「……だって、私、ガサツだし、女の子らしくないし、可愛げないし」
「関係ないよ、僕は君が好きなんだ」

真っ直ぐな綺麗な目で私を見つめるーーくん。
私は次こそ逃げないようしっかりと目を見てこう言った。

「……こちらこそよろしくお願いします」

~Fin~

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