#00 AI時代、最後に残る問いは「あなたはどうしたいの?」──1,000回のセッションで見えたこと
認知科学をベースにしたキャリアコーチングを始めて、早いもので3年目に突入しました。
これまで1,000回を超えるセッションを行い、様々な人生の岐路に立つクライアントの方々に伴走してきました。20代の「何者かになりたい」から、50代の「自分の人生を生きていいんだろうか」まで、転職、独立、副業、家族、お金、挑戦の途中で心が折れそうになる夜…。
1|ここ数年でコーチングが急に身近になった
ここ数年で、「コーチング」という言葉は一気に身近になりました。
会社では1on1が当たり前になり、マネージャー研修にコーチングが組み込まれ、書店にはコーチングの本がチラホラ目につくようになりました。かつては経営者やトップアスリートだけのものだった「コーチをつける」という文化が、普通のビジネスパーソンや学生にまで広がっています。
なぜ、いま「コーチング」なのか。
理由は、時代にあると感じています。
まず、「キャリアの正解モデル」がなくなりました。少し前までは、「いい大学に行って、いい会社に入って、定年まで勤め上げれば幸せになれる。」というロールモデルらしきものがあった気がします。終身雇用を前提にした、キャリアのレールというやつです。良し悪しは別として、「迷わずに済む」時代でした。また、就活を終えれば、あとは定年まで何も考えなくてもOKというキャリア選択の回数が少ない時代でもありました。
でも、いまは違います。転職も独立も副業も当たり前になり、選択肢は爆発的に増えました。しかも人生100年時代、人生がずっと長くなってしまった。選べる自由が増えるほど、「自分が何をしたいのか分からない」という悩みは深くなる。この逆説の真ん中に、いまの僕たちは立っています。
そこに、SNSが追い打ちをかけます。起業で成功した同級生、海外で働く元同僚、好きなことで食べているフリーランス。ひと昔前なら一生目に入らなかった「他人の正解」が、毎日スマホに流れ込んでくるわけです。「自分にもできるんじゃないか?」と、今まで見えなかった生き方が突然、自分の選択肢に入ってくる。可能性が広がると同時に、何者でもない自分への焦りも膨らんでいく…。
さらに、AIです。正解を出す仕事は、ものすごい勢いでAIに置き換わっています。調べれば答えが出る。頼めば資料ができる。知識や効率で差がつかなくなったとき、最後に残る問いは一つだけです。
「で、あなたはどうしたいの?」
この問いにだけは、AIも、上司も、親も、代わりに答えてくれません。
最近、内面や人間性、あるいはスピリチュアルなものへの関心が高まっているのも、僕は同じ地殻変動だと見ています。外側の正解が頼りにならなくなって、みんな、内側の実感に軸を戻そうとしている。だから、いまコーチングへのニーズが高まっている理由は、突き詰めれば「自己理解」への関心が高まっているからだと思うんです。コーチングが広がっているのは一時の流行ではなく、この大きな流れの一部です。
2|「コーチングって、怪しくないですか?」
とはいえ、です。コーチングと聞いて、眉に唾をつける方も多いと思います。
ぶっちゃけ、ちょっと怪しいですよね??
僕も正直そう思っていました。
正直に言うと、その警戒心は半分正しいです。コーチングは、資格がなくても誰でも名乗れる世界です。高額な契約、根拠のない自己啓発、何かの勧誘と地続きのもの…有象無象が入り乱れているのが、いまの業界の実態です。
ただ、だからこそ伝えたいんです。コーチングそのものは、怪しい魔法ではありません。確立されたメソッドです。
僕が立っている認知科学コーチングは、祈って待つものではなく、人間の認知の仕組み、つまり人間の原理原則に沿って、変化を起こす技術なのです。
3|認知科学コーチングとは何か
「自分を変えたい」と思ったとき、多くの人がまずやるのは、頑張ることです。早起きする。資格の勉強を始める。転職サイトに登録する。そして、数週間後には元の毎日に戻っている…。心当たり、ありませんか??
僕はあります。何度もあります。たとえば手帳。毎年「今年こそ使いこなすぞ」と意気込んで新しい手帳を買うのに、気づけば1月の途中から真っ白のまま。振り返れば、手帳を1年間使い切れたことが、ほとんどありません。コーチを名乗っている人間でも、この有様です。
でもこれ、意志が弱いからじゃないんです。人間には「変わりたくない」という生存本能が組み込まれているから。それをホメオスタシス(恒常性維持機能)といいます。脳は現状を維持するようにできていて、放っておけば元の場所に引き戻される。三日坊主もリバウンドも、根性の問題ではなく、構造の問題なわけです。

認知科学コーチングは、この構造を逆手に取ります。やることは、突き詰めれば一つ。「今の生き方の外側」に理想のゴールを設定することです。
今の延長線上に置いた目標は、現状維持の力に食われます。でも、今のままでは辿り着けない場所にゴールを置くと、脳はその新しい世界のほうを「本来いるべき場所」だと認識し直して、逆に現状のほうに違和感を覚え始める。歯を食いしばらなくても、自分が勝手に変わり始めるんです。

ただし、条件が一つだけあります。そのゴールが、思わずやっちゃってる自己欲求(want to)の延長線上に設定できていること。「やるべきだから」「期待されているから」で作ったゴールは、どれだけ立派でも、長続きしません。
じゃあ、自分の「want to」はどうやって見つけるのか? セッションを通じて、無意識を一緒に見ていくんです。認知科学コーチングでいう自己理解とは、性格診断の結果を眺めることではなく、無意識の自分に向き合うことです。頼まれてもいないのに、気づけばやってしまっていること。当たり前すぎて、本人は価値だとすら思っていないこと。その「無意識にやっちゃってること」にこそ、その人らしさが宿っています。そこを掘り出してゴールにつなげたとき、人は歯を食いしばらずに、苦なく、夢中で進み始める。1,000回のセッションで、僕が何度も見てきた光景です。
4|「いいコーチング受けたなあ」で終わらないために
世の中でコーチングと呼ばれているものの多くは、共感傾聴型です。じっくり聞いてもらって、受け止めてもらって、すっきりする。
で、翌日の朝、現実は1ミリも変わっていない…。
傾聴や共感が悪いわけではありません。僕自身、セッションでは徹底的に聴きます。ただ、「聴いてもらって楽になる」のと「人生が変わる」のは、別の話なんです。
認知科学コーチングは、変化の技術です。セッションのあとに残るのは「すっきりした」ではなく、「あれ、自分、変わり始めてるぞ?」という、戸惑いに近い感覚。僕が認知科学コーチングが素晴らしいなと感じている理由はシンプルです。現実が、動くから。
5|なぜ、僕がこれをやっているのか
……と、偉そうに書きましたが、僕自身、この構造に45年間捕まっていた人間です。
祖父からは「手に職をつけろ」「医者になれ」と言われて育ちました。そのレールを高校3年で降りたのが、人生最初の自分の決断です。でもその後、大手通信会社に入り、スタートアップで責任ある立場を任され、傍から見れば順調なキャリアの中で、ずっと「誰かの期待に応えること」をゴールだと思い込んでいました。
45歳のとき、はたと気づいてしまったんです。結局、期待に応え続けてきただけだったな、と。感情を押し殺して、ロボットのように働いて、自分がいま何を感じているのかすら分からない。いま思い出しても、あの頃の自分の顔は、ちょっと見ていられません。
そこから僕を変えてくれたのが、ほかでもない認知科学コーチングでした。「ゴールは、自分で決めていい」。たったこれだけのことが、45年間、僕の辞書にはなかったんですよ。現状の外側にゴールを置き直してから、見える景色が本当に変わりました。独立して、いまは一人会社を経営しながら、人の人生の転機に立ち会う仕事をしています。47歳の今が、人生でいちばんエネルギーがあります。これは強がりでも営業トークでもなく、事実です。
だから僕にとってコーチングは、自分の人生を取り戻した、その方法そのものです。あのときの僕と同じ場所に立っている人に、同じ扉を開けてほしい。それだけです。
6|1,000回のセッションで見えてきたこと
セッションを重ねる中で、気づいたことがあります。
まったく別の人生を生きている人たちに、同じ現象が起きる
ゴールを定めた人が、同じように無意識にゴールを下げていく現象。決断した人から順番に、現実に揺さぶられる現象。職業も経歴も違う二人が、「本当は◯◯したい」の質問に、ほぼ同じ言葉で答える現象…。
個人の物語は一度きりです。でも、現象には再現性があります。再現性のあるものは「法則」として、次に岐路に立つ誰かの役に立つ。今日から、コーチングを通じて発見した「人が変わる瞬間の法則」を、一つずつ書き留めていきます。
ここでは、特定の誰かの物語をなぞる書き方をしません。書くのは、複数の人に共通して起きた「現象」だけ。
キャリアコーチの集大成として、これまでの叡智をまとめていくので楽しみにしていてください。
ホメオスタシスに負けず、僕自身も現状の外側にゴールを置き、その生き方を体現していきます。
見守っていただける方は、ぜひフォローしてお待ちいただけたらうれしいです。
