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ダムの水が尽きた日、みんな空ばかり見ていた

川底が丸見えだった。
カラッカラに干上がって。


流れも、水たまりも、ない。
泥のこびりついた小さな赤いボールが、石ころの間にポツンと挟まってる。


この半年、まともに雨が降っていない。


固唾を飲んで、夕方のニュースを待つ。
アナウンサーが淡々と告げた。
「本日の宇連ダム貯水率は0%です」



まな板の上で、包丁を持つ手が止まった。
ついにここまで来たか。


もう泥の混じった底の水までポンプで吸い上げてるらしい。
このままいくと、給水車なのか…。



会えば、誰もが雨の話ばかり。
「雨、降らんねぇ」


ぽつぽつと申し訳程度に降ると、
「もっと、本気出して降らんかい」
と毒づいて、
「雨雨、降れ降れ、もっと降れ」
と歌う。



みんな、空ばかり見ていた。



我が家では、お風呂は二日に一回。 
残り湯は夫がバケツで運んで、花の水やりやシンクの掃除がルーティンになってた。



このところ、密かに水を買う人が増えているらしい。
内緒の買いだめ。



ここは、発祥の地
もしこれが江戸時代なら、人々は「ええじゃないか、ええじゃないか」と踊り出している。



スタンドの洗車機に並ぶ車にイライラする。
(なんで、今⁈)

この息が詰まるような空気。



空が低くなっていた。



布団に入った頃、世界が雨に飲み込まれた。
空が落ちてくるような、圧倒的な音。


なのに、不思議と静かだった。
ずっと聞いていたかった。



「…… 雨。」



カーテンを開けようかと手をかけたけど、やめた。
今、覗いたら止んでしまう気がして。


「あっ、見られた」って。




創作大賞応募エッセイをまとめています。


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