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医師の「地味に時間を食う仕事」をAIで削る、院内サマリ生成ツール開発記

普段、病院や介護施設を運営する医療法人の経営に関わる仕事をしています。

今回、関係法令や各種ガイドラインの遵守を前提に、院内向けのWebサービスを設計し、試作品として動くところまで作りました。

この記事では、何を作ったか、なぜ作ったか、どこまで動いているかを紹介します。

同じような課題を持つ医療関係者の方、似たような仕組みを作っている方、あるいは既存の医療AIサービスを使っている方から、感想やツッコミ、「うちではこうしている」という話を聞けたら嬉しいです。それが、この記事を書く一番の目的です。

何を作ったか

一言でいうと、他院からの紹介状(診療情報提供書)をAIが読み取り、院内の記録フォーマットに整形してくれるWebツールです。

モックアップのため、荒涼としたデザインになっています

使い方はシンプルです。

  1. 紹介状のスキャン画像やPDFをブラウザにアップロードする
    ※クリップボードからの貼り付けにも対応

  2. AI(Vision対応のLLM)が文字を読み取り、院内で使っているサマリ形式の下書きに整形する

  3. 画面は左右二分割になっており、左に原本、右にAIの下書きが並ぶ。医師は原本と見比べながら下書きを手直しする

  4. 確認が済んだら、ワンクリックでコピーして電子カルテに貼り付ける

これはサンプルですが、本物に近い書類でも、実用に耐える出力をしてくれました

なぜ作ったか

他院から患者さんをご紹介いただくと、紹介状が届きます。多くは紙やFAXで、当院ではそれをスキャンして保存しています。

医師はその紹介状を読み、要点を自院の電子カルテに手で転記します。

1件あたりは数分から十数分の作業です。ただ、診療の合間に行う「読んで、要約して、電子カルテにタイピングする」という作業は、地味ですが確実に医師の時間と集中力を削っています。

そして、この作業の大部分は「情報の形式変換」であって、医師の判断そのものではありません。

Vision対応のAIモデルが実用水準に近づいてきた今、ここはAIに下書きを任せて、医師は確認と修正に専念する形にできるのではないか。そう考えたのが出発点でした。

医療だからこそ、こだわった点

医療情報を扱うため、設計段階から次の点を軸にしました。

① AIの出力を信用しない前提の画面設計

生成AIには、書かれていないことをもっともらしく書いてしまう、捏造のリスクがあります。

そのため、このツールはAIの出力をそのままカルテに入れる設計にはしていません。

原本と下書きを常に並べて表示し、医師が目視で照合してからコピーする導線にしています。最後には、確認のステップも挟むようにしました。

② 患者情報の扱い

医療情報を扱うため、データの保存場所や処理の流れには特に気をつけました。

データは国内リージョンで処理し、AIの学習に使われない構成を選んでいます。また、アップロードした原本やAIの下書きは、短期間で自動削除される設計にしています。

※このあたりは、今後も関係法令やガイドラインと照らし合わせながら、慎重に確認していく予定です。

③ いきなり実患者データを使わない

開発は3段階に分けました。

まずは架空データだけで作り込み、次に架空の紹介状で精度検証を行います。捏造や読み落としがどれくらい起きるかを、定量的に確認するためです。

実患者データを用いた運用は、その先に置いています。

現在も、実患者データ投入前の検証フェーズを進めています。

どう作ったか、医師がAIと一緒に開発するという形

私はコードを書いていません。

私がやったのは、課題と要件を言葉で伝え、AIが出してくる設計や選択肢に対して判断を返すことです。

開発の実務はコーディングエージェントが担い、さらに別のAIを独立したレビュー役として立てました。

レビュー役にはコードのチェックをしてもらい、要所で人間が確認するという流れで、少しずつ作っていきました。

実際、片方のAIが見落としたバグを、もう片方のAIが拾う場面が何度もありました。自動テストも、気づけば1,000本を超えていました。

設計を始めてから、クラウド上で一連の動作を確認できるまでの期間は約3週間でした。もちろん専門のプログラマーではないので、診療やその他の業務の合間をぬって作業しました。

コーディングにもそれなりに時間がかかりましたが、私とAIとの対話、AIから私へのレクチャー、私が考える時間がメインです。結果として、ボトルネックは人間である私でした。

普段からAIエージェントのサブスク契約をしているため、追加でかかった費用はクラウドサービスの利用料が中心です。試作段階としては、かなり小さなコストで進めることができました。

現在地

現時点では、クラウド上の検証環境でツールが動いており、私自身が架空の紹介状を使って、

アップロード
→ AIによる整形
→ 手直し
→ コピー

という一連の流れを完走できています。

次のステップは、院内の別の医師に試用してもらうことと、読み取り精度の本格的な検証です。

特に、以下の点を確認したいと考えています。

  • どの程度、医師の記載時間を減らせるのか

  • どのような項目で読み落としや誤読が起きやすいのか

  • AIの下書きが、かえって確認負荷を増やしていないか

  • 実運用に進める場合、どのような院内ルールが必要か

おわりに、感想・ツッコミ歓迎です

たとえば、こんな反応をいただけると嬉しいです。

  • うちの病院にも同じ課題がある

  • その設計だと、ここが危ないのでは

  • こういう機能があったら使いたい

  • 既存サービスでは、ここまでできている

どんな反応でも歓迎です。コメントで教えていただけると嬉しいです。

医療はレギュレーションが厳格なため、新しい技術の導入にはどうしても慎重になります。一方で、現場の人間がAIと組んで、自分たちの困りごとに合った道具を作る余地は、かなり大きいのではないかとも感じています。

こうした小さな試作が少しずつ増えて、医療現場の「地味に時間を食う仕事」を減らし、やるべきこととやりたいことに集中できるようになるといいなと思っています。

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