「腐るまで待って」第5話【note創作大賞2024】
僕は帰宅すると、昨晩から解凍していた肉を冷蔵庫から取り出した。適当に塩コショウを振りかけ、フライパンで焼いた。そして、おもむろに肉にかぶりついた。
スマホを開き、SNSに書き込みをした。
今日はインタビューを受けてきました。夕那との思い出を語るのは辛かったけど、人とゾンビの恋を応援する僕としては記録に残しておきたかったので良い機会になりました。来週のケーキ予約も朝十時からになります。新作のケーキはウサギをイメージした旬の人参を使ったキャロットケーキになります。新作の夕那のクッキーも売れてます!よろしくお願いします!
部屋の片隅で置いてある大きなサイズの冷凍庫を開けた。冷凍庫の中にしまってある肉の在庫がそろそろなくなってきた。
大丈夫。まだ、あいつは真実には辿りついていない。
そして少し冷めてきた残りの肉にかぶりついた。
■
妹はゾンビでも人間の中に混ざって健気に生きていた。なのになぜ妹は殺されなければならなかったのか。そのヒントが夕那というゾンビが殺された事件に隠されているはずだというのは、俺の直感だ。
俺はパソコンの前で今日撮影した動画を何度も見返していた。あのケーキ屋の男の話が、自分の中で腑に落ちていなかった。この動画の中にその理由が隠れていると、俺の直感が言っている。
俺はあの男が犯人に襲われている話をしている部分で動画を止めた。
この部分にとても違和感があった。あの男はなぜ犯人に襲われたのだろうか。あの男の話が正しいと仮定した場合、あくまで幼馴染の女は親友の復讐で夕那というゾンビを殺したことになる。となるとあの男が襲われる理由が全くわからない。
ふいにあの男の言葉が頭によぎった。
「幼馴染だったのかと驚かれる」
頭をハンマーで殴られたようなショックとはこのことかもしれない。俺は何かとんでもない事に気づいた。
机の上に置いてある写真立てを見た。妹が中学校の時にバレーボールをやっていた時の写真だ。サーブを打つ瞬間を見事に切り取ったその写真は、男にとって元気をくれる宝物だった。
妹がゾンビとばれてから部活をやめさせられた。それでも妹は涙を見せずに笑っていた。そんな妹が大好きだった。妹は人間とゾンビは仲良くなれる、それをずっと信じていた。
俺はゾンビは殺してもいい存在だなんて思っている奴らは、一人残らず許さない。
梨花という女が鍵になりそうだ。今度、この女に会いに行こう。あの男のことも聞けるはずだ。
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