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 今、校門の前です。
 ローカル電車に揺られて小さな駅につきました。そこからバスでその学校へ向かいます。僕の他にも何人も人が乗っていて、席には座れないほど混んでいました。しかも全員がその学校の文化祭へ行く人達でした。こんな人里離れた場所の学校の文化祭へいくなんて親族くらいかと思っていましたが、どうやら地域では人気の行事なのかもしれません。
 えっとバスが停留所に到着すると、乗客は道路脇の山に入っていきました。奥は暗くて森のように見えましたが、同じ道に違いないと思い、置いて行かれないようについて行きました。あ、すみません。
(間)
 十分ほど山道を歩くと、突然森が開けて近代的な建物が見えました。それが鬼無灯高校でした。これですね。けっこう綺麗ですよね。もっと古い校舎なのかと思っていましたが、近代的です。この校舎が一棟で、その奥にもう一つ建物があるみたいです。おそらく寮だと思います。ここから見る限り校庭はかなり広いですね。サッカー場が二面作れるくらいありそうです。では、文化祭に入ってみたいと思います。
 (校門には【鬼灯祭】と書かれた大きな看板が飾られており、何人もの生徒が客をを歓迎している)

 あ、これは記録用の撮影で……

 <動画終了>

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 自分がお人よしだってわかります。助けるっていうより気になるというのが正しいかもしれません。でも、どうしても気になったんです。だから来ちゃいました。僕は潜入とか得意なんですよ。
 しかし、ずいぶん豪華な部屋ですね。この部屋はパンフレットに載ってなかったんですけど、誰の部屋なんですかね、高鍋校長。
 あのパンフレットに載っている校長の写真を何度も見て分かった。あれは高鍋平一郎の写真です。しかし、年齢を考えると彼が生きているわけがありません。何かの力を借りて、死者が今でも生きていると考えました。僕は演劇部のほおずきんちゃんの話にヒントがあると思いました。おそらく学校側が裏で生徒に意識付けたい内容があるのでしょう。それは、ほおずきを使って鬼を消滅させ、人間に戻すということです。「思春期」という言葉は「思春鬼」とも言うと教えているのは、あなたたちですか?
 「思春鬼は退治しなければならない」
 確かに思春期には多くの誘惑があります。それを「思春鬼」と呼び変えて全て悪にすることで、勉強に集中させる。恋愛や娯楽に心を惑わされないように。それは一つの考え方としては否定しません。しかし、その実行方法がこの学校は狂っています。一度生徒を殺して、ほおずきで蘇生させる。そうすると思春鬼が消えるって。
 この学校の近くに鬼無里村がありますよね。あの村にまつわる紅葉伝説。紅葉は妖術を使うんですよね。ピンときました。もしかして、その妖術はほおずきを使った蘇生術なんじゃないでしょうか。そして紅葉には子孫がいるのではないかと。
 聞いていますか、高鍋平一郎!
 あなたですよ、ほおずきを使って死ねないあなた!

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 なーんてね。高鍋さんは賢いわ。てっきりだまされた。いや、みんなだまされてる。
 現代において人が生き返るなんて妄想みたいな話あるわけがないですよ。聞いてます? あんたは小賢しい。小賢しすぎる。危うく怪異という言葉にだまされてしまうところでした。高橋平一郎という先祖すら使って、あんたは人を騙してきたんでしょう。ねえ、高鍋さん。高鍋平九郎さん。
 物語の力は恐ろしい。陰謀論でもなんでも、信じてしまったらすがるしかありませんからね。あなたが考えたんだとしたら、本当に称賛しかありません。すごいですよ、こんなに人間の心の奥に住み着く恐怖を、自由自在に操れるんですね。ほおずきに神秘の力があるとか、ほおずきの怪異とか。生徒が書いたほおずきの怪談読みましたよ。びっくりしました。全く面白くない。あれ、あなたが書いたんじゃないんですか? でもあれを生徒達に読ませたんでしょう。そして信じさせたんでしょう。あんなもので生徒が騙せるなんて驚きです。
 断言します。あんたは”鬼無灯高校”という宗教を作り上げようとしている。

 カルト宗教のマインドコントロールする方法くらい、知らないとでも思ってましたか? すみません、本業が弁護士でしてね。カルト宗教には少し詳しいんですよ。せっかくなので講義でもしましょうか? まだ時間はたっぷりありそうですからね。僕がこのまま餓死するまでは。まず、精神をコントロールするには六つの要素が必要です。
 一、隔離。これは信者を家族や友人から隔離し、外部の影響を排除します。これにより、信者はカルトの教義に依存するようになります。二、制限。外部の情報を制限し、カルトの教義や指導者の言葉だけを信じるように仕向けます。これにより、信者は他の視点を持つことが難しくなります。三、恐怖。信者に対して恐怖を用いて従わせます。例えば、教義に従わないと罰が下ると信じ込ませることがあります。四、愛情と承認の操作。信者に対して愛情や承認を与えたり奪ったりすることで、行動をコントロールします。これにより、信者は指導者の承認を得るために従順になります。五、反復と儀式。教義や儀式を繰り返し行うことで、信者の思考や行動を固定化します。これにより、信者は教義に対して疑問を持たなくなります。六、経済的依存。信者を経済的に依存させることで、カルトから離れることが難しくなります。例えば、全財産をカルトに寄付させることがあります。
 覚えました? テストで出しますからね。あ、僕は大学で講師もやってるんですよ、宗教学。あんたたちみたいなカルトに騙されて悲劇に落ちてしまう人を一人でも助けるためにね。
 まず最初の隔離。これは簡単だ。こんな辺鄙な山奥に学校を設けて、出ていくこともできない状況を生み出せば完璧だ。次に制限。何でもこの学校では生徒達にスマホを持たせちゃいけないって聞いてますよ。学校から高性能なタブレットとPCを貸し出しているというのはそういうことですよね。監視下に置くための。恐怖はほおずきと高鍋平一郎ですね。あなたは高鍋平一郎は今でも生きていると生徒達に言い続けた。校舎の最上階の一番奥の部屋、もう一つの保健室という場所でね。それを皆は信じていることでしょう。そして愛情と承認の操作。これは学校の先生たちが行っている日々の授業でしょう。あのコメントを見るだけで相当先生には感謝しているようでしたので。反復と儀式です。これは学校というのは同じことを繰り替えすのが当たり前の生活なので、正しいことは何かを学校の基準で作ることができます。
 そして経済的依存。あなたは命を人質にして高額のお金を搾取しています。ほおずきを定期的に食べないと、その命はなくなるというでね脅迫で。こんなバスでしかこれないような田舎の文化祭にあんなにたくさんの人が来るなんておかしいって思ったんです。あれは全部卒業生ですね。こんな辺鄙な土地の文化祭に人がこんなに来ているなんてそれくらいの理由しか考えられない。あの職員室でこっそりと売っている鬼灯ジャムってやつを買う事で延命させるみたいなことを言っているんだろう。命と引き換えだったら、たとえとんでもない金額だとしても信者は元生徒達は平気で払う事でしょう。
 いや、僕は分かりますよ。こんな話を普通の人に行っても信じてもらえるわけがない。でも洗脳された人は違うんです。洗脳するという事は、信じる基準をずらされているってことなんです。もう、あなたたちの事しか信じられない状態なのでしょうね。この学校出身者を調べましたよ。とんでもない人ばかりでした。それが皆、あなたの手足だなんて信じられない。卒業生を警察や政治家、ありとあらゆるところに送り込んで、自分の言いなりになるような国を作り上げているんでしょう。この仕組みは誰の代から作られてるのですか? おそろしい仕組みです。なぜ公になっていなかったのか、不思議で仕方がありません。ほおずきで人が生き返るわけがない。
 おそらく生徒達を鬼灯の毒を使って仮死状態にするんでしょう。そして再び目を覚ました時に、まるでほおずきの力で自分がよみがえったかのように本人に伝える。そしてほおずきの力がないと、命はすぐなくなってしまうと脅す。おそらくマインドコントロールされているから自分の命を長らえるために、この学校に毎年通っているのでしょう。それがあなたのからくりだ。
 なんてことない、ただのほおずきを、まるで神の果物でもあるかのように洗脳して。
 なあ、あんたは何をするつもりなんですか?
 いや、やっぱり別に言わなくてもいいです。
 今日、僕はあんたのやっていることを壊しに来たんですから。
 あなた達は僕が単身でここに乗り込んできたと思っているんでしょう。そうですよね。スキルマーケットでは秘密厳守するって書いてるから、僕が高橋君の話を他の誰にも言ってないと思ってますよね。

 僕は顧客の秘密は決して誰にも明かしていません。ただ、僕に危険が迫っていることを伝えています。そして僕の友人を宗教から抜け出すように依頼をしています。
 僕の友人、高橋君を。
 そうです、僕は囮ですよ。
 この人の実績も確認しました。何人もの人をカルト宗教から脱退させています。僕は彼に賭けました。すでに今、さらさらハードさんがあなたから高橋君を救出しているはずです。彼がこの学校から逃れらればあとは社会に公開するだけ。当然、僕が拘束されていることも告白するでしょう。
 わかりますか? これ以上僕に何かしたら、それは高橋君が全て世に公開してくれます。
 だからそろそろこの結束バンドはずしてもらえませんかね?
 あと、この会話はずーっと高橋君と繋がってます。高橋君、聞こえる? ロバの穴は君の学校の最上階の校長室にいる。そう、第二の保健室と生徒達が恐れてるあそこだ。中は保健室じゃなくて、校長室になってるよ。高橋君は、ここに高鍋平一郎が今でも生きてるって思ってただろう? いないよ、高鍋平一郎なんて。その人死んでるんだから。みんな騙されてるんだ。この校長に。
 全部詐欺なんだよ。高鍋一族の作った巧妙な。
 ほおずきで人が生き返るわけがない、ほおずきで命が伸びるなんてありえない。
 何年も、何十年も、沢山の人たちがだまされてるんだ!
 高橋君、僕は君を助ける。だから、SNSでこの事を暴露してくれ。炎上させてくれ。そうすればこの学校の沢山の被害者も声を上げてくれるはずだ。
 高橋くん、お願いだ。この学校の悪魔から一人でも多くの生徒を救ってくれ!

#創作大賞2025 #ホラー小説部門

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