スキルマーケット ロバの穴と高橋の会話
4月12日20時5分
「こんにちはロバの穴です。お電話ありがとうございます。話しにくい内容でも大丈夫ですからねロバの穴ですから。言いにくいことを叫ぶ穴。童話みたいにそこに叫んだ言葉はどこかに漏れたりしません。上から土をかけて蓋をします。だからどんな事を言ってもらっても問題ないです。親友に恋人が出来て銃で撃ち殺したいとか、先生の子供を妊娠してそのまま産みたいみたいな相談でもなんでも。この電話でモラルとかコンプライアンスなんてものは要りません。だって穴に向かって叫ぶひとりごとですから。以上で長い自己紹介は終わりです。あとはあなたのお話ししましょう。アカウント名は世界滅亡さんですね。なんてお呼びしたらいいですか?」
「高橋です」
「高橋さん、はじめまして。今回はありがとうございます。今は20時5分です。希望の終了時間はありますか?」
「三十分でお願いします」
「今日はどういうご依頼でしょうか」
「なんでも相談できるって本当ですか?」
「ええ、学校に関する悩みならばなんでも構いません。秘密は厳重に守ります」
「なんでもですか?」
「なんでもです」
「助けてください。ほおずきに殺されます」
「……ほおずき?」
「はい、ほおずきです」
「えっと……僕の知ってるオレンジ色のほおずきのことですかね」
「はい」
「中に卓球のオレンジ色の玉みたいな実が入ってる」
「はい。信じてないですよね。ふざけてるって思ってますよね。バカにしてますよね」
「そんなことはないです。もっと詳しく話を聞かせてください」
「……もっとまじめに聞いてくれると思ってた」
「いや、聞かせてください。ほおずきがなぜ殺そうとするのか」
「お金の無駄だった。もう切ります」
「わかりました。ほおずきに毒があるのか調べておきます。また相談してくださいね。僕はいつでもお待ちしています」
4月19日21時8分
「こんにちはロバの穴です。お電話ありがとうございます。童話みたいにそこに叫んだ言葉はどこかに漏れたりしません。上から土をかけて蓋をします。だからどんな事を言ってもらっても問題ないです。二回目のご相談ありがとうございます。アカウント名、世界滅亡さん。お呼びするのは高橋さんでよろしいですよね」
「また電話してしまってすみません」
「前回のご相談は、ほおずきに殺されるというご相談でしたね」
「はい」
「前回は相談を真摯に受け入れることができずに申し訳ございませんでした。お詫びといってはなんですが、ほおずきの事を調べました。観賞用のほおずきにはナス科に特有のアルカロイドを含んでいるそうです。アルカロイドは麻痺や幻覚などの症状が引き起こされることがあります。特に根の部分にあるヒストニンをいう成分は、流産にもなるとか。僕が無知でした。確かにほおずきで人を殺すことが可能です」
「調べていただいてありがとうございます」
「高橋さん、いったい学校でなにがあったんですか?」
「助けてください。お願いします。僕たちは殺されます」
「なにがあったんですか?」
「なにがあったわけでもないんです。でもおかしいんです。もう学校にひとり来なくなりました」
「病気ですか」
「うちの学校は寮生活なんです。こなくなった奴は僕の隣に住んでいるんですけど部屋の明かりがついてないし、そいつの部屋から物音一つしないんです」
「やめたんですかね」
「いや、先生は病気だから心配するなって。そいつのドアの所に植物で作られた変なお守りみたいなものが飾られてるんです。先生はほおずきでできてるって言っていました」
「でも、殺されるというのはちょっとわからないですね」
「毎朝読まなきゃいけない話があるんです。毎日プリントで配られるんですが、気味が悪くて」
「聖書みたいなものですか?」
「いいえ、怪談です」
「怪談……」
「毎日話は違うんですが、ほおずきに人が殺されるのは変わらないんです」
「そのお話、画像かなにか送れます?」
「回収されちゃうんですが、今日ちょっとだけ持ってきました」
「見せてもらえますか?」
5月24日21時03分
「こんにちはロバの穴です。お電話ありがとうございます。童話みたいにそこに叫んだ言葉はどこかに漏れたりしません。上から土をかけて蓋をします。だからどんな事を言ってもらっても問題ないです。三回目のご相談ありがとうございます。アカウント名、世界滅亡さん。お呼びするのは高橋さんでよろしいですよね」
「あいつが、学校に戻ってきました」
「病気で休んでいた人ですか? よかったです」
「でも、なんか変なんです。すごく勉強ができるし、運動も得意で、先生の言うことをとてもよく聞くんです」
「全然変じゃないですけどね」
「あいつを中学校から知ってるんです。全然キャラクター違うんです。病気になってあいつおかしくなったんです」
「それはある意味、良い病気かもしれませんね」
「いいわけ無いでしょ。あいつ別人になって生まれ変わったみたいです。あとクラスで三人くらい学校に来ていないんです」
「病気ですか?」
「病気だって先生が言ってます。あいつと同じようにドアに変なものを飾ってありました。もしまた同じ事が起きたら」
「心配しすぎですよ」
「ロバ穴さん。一つ質問があります」
「なんでしょう」
「先生の言うことは必ず聞かなきゃいけませんか?」
「え?」
「先生の言う通りにしなきゃいけないんですか?」
「そうですね。先生が言っている内容にもよりますが、基本的には先生の言うことを守っていれば問題ないはずです」
「……」
「でも、先生は間違っていることも言います。だから先生が言っていることが正しいのか考える必要があります。だからおかしいと思ったら教えてください。先生は何と言ってるんですか?」
「先生が言ったんです。ほおずきに包まれたら病気が治るからって」
9月6日20時14分
「こんにちはロバの穴です。お電話ありがとうございます。童話みたいにそこに叫んだ言葉はどこかに漏れたりしません。上から土をかけて蓋をします。だからどんな事を言ってもらっても問題ないです。四回目のご相談ありがとうございます。アカウント名、世界滅亡さん。お呼びするのは高橋さんでよろしいですよね」
「穴?」
「お久しぶりです」
「体が真っ二つに裂けたら人間ってどうなる?」
「お亡くなりになりますね」
「そのあと生きてるとしたら、どういう説明がつく?」
「それは、ありえませんよ。幻覚でも見たというしか無いですけどね」
「幻覚じゃないよ。俺目の前で見たんだから」
「え……」
「でも次の日、学校に来てたんだよ。どういうことなんだよ。なにが起きてるんだよ」
「落ち着いてください」
「みんなどうしたんだよ! 俺の知ってるお前たちはどこにいったんだよ! ほおずきに包まれるってなんなんだよ!」
10月4日20時18分
「こんにちはロバの穴です。お電話ありがとうございます。童話みたいにそこに叫んだ言葉はどこかに漏れたりしません。上から土をかけて蓋をします。だからどんな事を言ってもらっても問題ないです。七回目のご相談ありがとうございます。アカウント名、世界滅亡さん。お呼びするのは高橋さんでよろしいですよね」
「穴、お願いがあるんだけど」
「なんですか?」
「今度、うちの学校の文化祭に来て」
「文化祭ですか。私はあなたを助けたいという気持ちはあるのですが、あくまで私のサービスは通話だけを提供しているんですね。だから、それをやると別料金になるというか、規約違反になるというか」
「なんだよ、結局金かよ」
「いえ、そうではないんです。このサービスの規約で出会った方とサイトで決めた内容以外の行為はできないんです」
「いいから、来てよ」
「うーん」
「わかったよ。俺が死んでもいいってことだよね」
「そんな物騒なこと言わないでください」
「だって、相談に乗るとか言いながら結局は助けてくれないじゃん」
「話を変えましょうか」
「大人はいつもそうだ。助けてあげると言って手を差し伸べるくせに、いざその手を掴もうとしたらちょっとずらして握らせてくれない。結局自分が大切なんだ。助けるとか言って声だけでフンフン言ってても何も変わらないし。じゃあね」
「ちょっとだけ待ってください。私、高校の文化祭で若者の文化を研究したいと思っていたんです。おススメの高校を知りませんか?」
「え?」
「ええ、高橋さんが私に行ってみて欲しいなぁという高校の文化祭、教えてください。私はプライベートで行ってみます」
「……鬼無灯高校」
「え?」
「鬼無灯高校の文化祭、ほおずきが綺麗でマジおススメです」
「ありがとうございます。調べてみますね」
11月4日 20時0分
「こんにちはロバの穴です。お電話ありがとうございます。童話みたいにそこに叫んだ言葉はどこかに漏れたりしません。上から土をかけて蓋をします。だからどんな事を言ってもらっても問題ないです。八回目のご相談ありがとうございます。アカウント名、世界滅亡さん。お呼びするのは高橋さんでよろしいですよね」
「文化祭来てくれた?」
「行かせてもらいました」
「ホントですか。ありがとうございます。ありがとうございます。僕たち生徒全員を助けてください。文化祭が僕たちの想いの全てです」
「若者のエネルギーが溢れてて、とても楽しませていただきましたよ。やっぱり青春っていいですね。」
「無理」
「え?」
「そういうことじゃなくて、わかってもらえたよね」
「文化祭を楽しんでいる高校生って感じはよく伝わりましたよ」
「え?」
「ほとばしる十代のエネルギー、私も学生時代に戻りたいって思いました」
「なんもわからなかった?」
「ジェネレーションギャップで、なんのパロディかわからないものはありましたが、理解して楽しませてもらいましたよ」
「マジで言ってる?」
「はい、とてもよかったです。改めて高橋さんの悩みに向き合えそうですし、あの学校なら高橋さんを受け止めてくれると思いました」
「なにも、わからなかったんだ」
「高橋さん。私、最近秋葉原行ったんです」
「なんの話?」
「知らない間に街ごとオタクになっててビックリしました」
「関係ない話するのやめてくれよ」
「色々な製品売ってたんですけどね、最近の盗聴器って優秀なんだなぁってびっくりしました」
ロバの穴が机に書き残していたメモ
おかしな点 気になる点
鬼灯畑 →なぜ近寄れない?
鬼灯祭 →校内に鬼灯の飾りはない
職員室で売られていたジャム なぜ関係者限定
演劇部の台本 →鬼とは
校舎 →入口が一つしかなくて一方通行。上の階まで行くときに、全ての階の教室の前を通らなくてはいけない。
最上階 →地図と違っていた。行き止まりにドアがあった
廊下 →廊下が教室に挟まれていて見えない。普通は窓がある。
紅葉伝説 →学校の近くにある鬼無里村にまつわる伝説との関係
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