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スキルマーケット ロバの穴と美月の会話

5月21日19時8分

「こんにちはロバの穴です。お電話ありがとうございます。話しにくい内容でも大丈夫ですからねロバの穴ですから。言いにくいことを叫ぶ穴。童話みたいにそこに叫んだ言葉はどこかに漏れたりしません。上から土をかけて蓋をします。だからどんな事を言ってもらっても問題ないです。親友に恋人が出来て銃で撃ち殺したいとか、先生の子供を妊娠してそのまま産みたいみたいな相談でもなんでも。この電話でモラルとかコンプライアンスなんてものは要りません。だって穴に向かって叫ぶひとりごとですから。以上で長い自己紹介は終わりです。あとはあなたのお話ししましょう。アカウント名はMOMOMOMOさんですね。なんてお呼びしたらいいですか?」
「すみません、美月でお願いします」
「はじめまして、美月さん。今回はどんなお話をしましょうか」
「なんでも相談していいって」
「はい、こちらは学校で起きている悩み事をなんでもぶちまけていいロバの穴です」
「学校、やめたいんです」
「という事は高校一年生ですか?」
「え、なんでわかるんですか?」
「この時期は入学してからこんなはずじゃなかったと思う方、案外多いんです。だから一年生だと思いました。あとは中学生か高校生。でもしゃべり方が大人だから高校生ですよね。高校受験お疲れさまでした」
「凄いですね」
「何人もの相談に乗ってますので、少し特殊な才能が身についてしまいました」
「中学校はほぼ受験勉強しかしませんでした。憧れの学校でした」
「せっかく入った新しい高校で悩みがあるのは辛いですよね」
「はい」
「でも、辞めたいと思うほどの悩みはよっぽどのことですよね。ご両親はご存じですか?」
「いえ、言えないです。親はこの学校に入ったことを凄く喜んでるんです」
「となるとご両親にも相談しづらいですね」
「そうなんです。でも夜が来ると怖いんです。明日学校いかなきゃいけないのかって」
「そんなときのロバの穴です。なんでも言ってください。個人名出したって構いません。私はその人に一生会うことはありませんし、当然調べるようなこともしません。穴ですから」
「わかりました。言いますね」
「どうぞ」
「毎朝、私の机の上にミニトマトが置いてあるんです」
「ミニトマト……ですか、どういうことでしょう」
「わかりません。最初は誰かの弁当から落ちたのかなって思ってました。だからゴミ箱へ捨てました。そしたら、次の日も同じようにミニトマトが置いてありました」
「なんなんですかね」
「周りに聞いても誰も知らないっていうし、先生に聞いてもイタズラだから気にしないでって。毎日捨てておきなさいとしかいいません」
「どれくらい続いてるんですか?」
「4月から一ヶ月以上続いています。毎日です」
「なんだか不思議ですね。なにか他におかしなことはないんですか?」
「はい。だから先生も真剣に犯人を探してくれないんです」
「食べられるんですかね」
「わかりません。怖くて。私、どうしたらいいですか?」
「とりあえず、捨てるのをやめましょうか」
「え、食べるんですか?」
「違います。先生にお願いして花壇に埋めてみましょう。トマト畑を作るんです」
「なんでそんなことを」
「おそらくそのイタズラしている人は美月さんが怖がっているのを喜んでいるはずです」
「気持ち悪い」
「だからトマトが来て嬉しいとポジティブ切り替えをするんです。そうすれば徐々にイタズラを諦めると思います」
「わかりました。やってみます」

6月4日 19時06分

「こんにちはロバの穴です。お電話ありがとうございます。童話みたいにそこに叫んだ言葉はどこかに漏れたりしません。上から土をかけて蓋をします。だからどんな事を言ってもらっても問題ないです。二回目のご相談ありがとうございます。アカウント名、MOMOMOMOさん。お呼びするのは美月さんでよろしいですよね」
「あ、覚えててくれたんですね。ミニトマトで相談した者です」
「こんにちは、そのあとどうですか?」
「毎日埋めています。もう二十日経ちました。最初のトマトから芽が少し生えてます」
「おお、凄いじゃないですか」
「実はクラスの男子が一人手伝ってくれています。だんだん楽しくなってきました。今はトマトに名前つけてるんです」
「いいですね。どんな名前ですか?」
「(稀代の殺人鬼の名前)」
「なんだかかっこいいですね」
「有名な連続殺人鬼の名前にしました」
「そ、そうですか。まぁキラートマトって言いますしね」
「早朝、学校に忍び込んで、だれがイタズラしているか確認したのですが見つかりませんでした」
「本当に目的がわかりません」
「でも、トマト畑を作る種を持ってきてくれると思うと少しは楽になりました。それ以外にイタズラをされているわけではないから、園芸委員になったような気持ちです。ロバ穴さんに相談したおかげです。ありがとうございました」
「そうですか」
「あだ名がミニトマトになっちゃいましたけど。それは大丈夫です。今日は他の相談事です」
「なんでしょう」
「男の子ってどんなプレゼントをあげたら喜んでくれますか?」

9月22日19時01分 

「こんにちはロバの穴です。お電話ありがとうございます。童話みたいにそこに叫んだ言葉はどこかに漏れたりしません。上から土をかけて蓋をします。だからどんな事を言ってもらっても問題ないです。三回目のご相談ありがとうございます。アカウント名、MOMOMOMOさん。お呼びするのは美月さんでよろしいですよね」
「ロバの穴さん」
「どうしました。私のオススメプレゼントはダメでしたか?」
「ショウ君が、夏休み終わってから学校に来ていません」
「それは心配ですね。なにか病気にかかったんですかね」
「先生は体調不良って言っています」
「元気になれるようにお見舞いでも考えますか」
「でも、体調不良のはずがないんです。変な噂も流れてるし、怖いです」
「どういうことでしょうか」
「実は、ショウ君から休む前の日にDMが来たんです」
「どんな内容ですか?」
「僕が学校を体調不良で休んだら、美月さんはこの学校から逃げてって」
「物騒ですね」
「ショウ君が心配なんです。誰に相談していいかわからないし」
「先生に言ってみますか」
「学校から逃げてって言ってるのに先生に相談したらおかしいでしょ」
「それはそうですね。でも学校から逃げるということは学校を辞めるっていうことですかね。辞めれますか?」
「辞めたくないです。せっかく入ったのに」
「では、こうしましょうか。とりあえずショウさんに聞いてみるというのは」
「連絡してるんですけど、返事がないんです。既読にもならないし」
「会いに行ってみましょう。家はわかりませんか?」
「実は私たちの学校は全寮制なので、部屋がどこなのかはわかります。寮長が見張ってるから部屋まで行けないですけど」
「任せてくださ。学生寮の裏突破口を見つけるのは得意でした。寮の中に忍び込むための十の方法をお教えします」

10月8日19時06分

「こんにちはロバの穴です。お電話ありがとうございます。童話みたいにそこに叫んだ言葉はどこかに漏れたりしません。上から土をかけて蓋をします。だからどんな事を言ってもらっても問題ないです。四回目のご相談ありがとうございます」
「まだショウ君が学校に来ません」
「それは心配ですね」
「部屋にも鍵がかけられていて、誰も入れないそうです。先生は問題ないって言ってるけど。ショウ君が死んだんじゃないかっていう噂もでてるんです」
「美月さんは誰かに相談しましたか」
「いえ、何も」
「よかったです」
「ショウ君、ほんとに殺されちゃったんでしょうか」
「一つ聞いてもいいですか」
「なんでしょう」
「ミニトマトはまだ毎日届きますか?」
「実は、トマトは来なくなりました。ちょっとそれは安心しています」
「やっぱりですか」
「どういうことですか?」
「トマトが止まったのは、いつ頃ですか?」
「半年くらい前かな」
「ショウさんが来なくなった日と関係ありませんか?」
「そういえば、ショウ君が休んだ日からこなくなりました。どうしてわかるんですか?」
「美月さん、今すぐ学校を逃げましょう。ショウさんの言うとおりです」
「え? でも親に相談しないと学校は辞められないです」
「ショウさんの警告を受け取らないんですか!」
「でも、せっかく入ったし。あとショウ君は治療に専念できる学校へ転校したそうです」
「先生がそう言ってるんだから、そうなんだと思います」
「そんなの信じるんですか?」
「だって、ショウ君から連絡がこないし。ショウ君のお母さんも教室にご挨拶しに来たんです。いままでショウと仲良くしてくれてありがとうって」
「それで納得できるんですか?」
「トマトの事、ショウ君と関係あるって言いましたよね」
「はい。ショウさんからのメッセージだと思ったのです」
「あれは、ショウ君が私としゃべるきっかけを作りたかったからなんです。てっきり怪異か何かと思ってましたけど」
「どういうことですか」
「先生が、私に言ったんです。ショウ君から『イタズラしちゃってごめんね』と伝えてと言われたと」
「……」
「全部、先生の言う通りなんです。先生のいう事をはじめから聞いていればよかった。半年もバカみたいに色々悩んじゃった。全部ショウ君のせい。先生が言う事って正しいんです。今日はお礼を言いたくて連絡しました。今までありがとうございました。先生を信じられなかった私を優しく見守ってくれて感謝しています」
「美月さんに確認して欲しいことがあります」
「なにをですか?」
「本当に机の上に置かれたのは、ミニトマトだったのか」
「そんなの先生がわかるわけないじゃないですか」
「じゃあ、シユウ君に聞いてみてください。それはミニトマトじゃないのではないかと」

11月5日23時05分

「こんにちはロバの穴です。お電話ありがとうございます。童話みたいに――」
「助けてください」
「どうしました」
「シユウ君は、シユウ君は……」
「どうされました?」
「シユウ君の父親から連絡がありました」
「父親?」
「学校にいるはずだって言われました」
「どういうことでしょう」
「しかもシユウ君にはお母さんはいないって言ってました。幼稚園の頃に離婚して、父親一人で育ててきたって。シユウ君はどこに行ってしまったんでしょうか。もうなにがなんだかわからないです」
「やっぱりそうですか」
「なにかわかってるんですか?」
「実は、こちらで独自に調べていました。美月さんの学校はおかしい。今すぐ学校から逃げるべきです」
「でも」
「でもじゃありません。今、クラスで他に休みがちになっている生徒もいたりしませんか?」
「はい、山口さんが今お休み中です」
「そうですか、もしかしたら山口さんにはもう会えないかもしれません」
「どういうことですか」
「シユウ君は学校の犠牲になりました。間違いありません」
「え……」
「急いでください。他にも逃げられる生徒はいますか?」
「みんな私が話していることをちっとも理解してくれません」
「だったら、まずは一人でもいいです。すぐにそこから逃げましょう。他の生徒はこれから私が一人ずつ説得します」
「でも、どこに逃げればいいんですか?」
「校門の前に行けますか? 私は今そこにいます」
「え?」
「大丈夫です。安心してください。私の知り合いで学校をやっている人間がいるんです。そこなら寮もあるし、一旦保護してくれると思います。急ぎましょう」
「ありがとうございます。今から出ます。じゃあ、切りますね」

#創作大賞2025 #ホラー小説部門

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