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紅葉伝説:信濃國の鬼女

 信濃國(現在の長野県)には、古より語り継がれる鬼女の物語がございます。その名は紅葉(もみじ)。往昔、会津(現在の福島県)に生まれし美しき娘がおりました。幼名を呉葉(くれは)と申しましたが、やがてその美貌は京の都にまで聞こえ、帝の寵愛を受けんと上洛いたします。しかし、彼女が密かに身につけていた妖術が露見し、都を追われる身となります。流浪の末、辿り着きしは信濃國。戸隠の山深く、水無瀬(現在の長野市鬼無里)に居を構え、名を紅葉と改めます。美しき紅葉は、その姿で里人らを魅了し、多くの富と権力を手に入れました。しかし、その本性は鬼。夜な夜な、郎党を引き連れては里を荒らし、人々を苦しめました。人々は彼女を恐れ、「鬼女紅葉」と呼びました。里人の嘆きは、都にまで届きます。時に、帝は高名なる武士、平維茂(たいらのこれもち)に鬼女退治の勅命を下します。維茂は郎党を引き連れ、信濃へと下向いたしました。険しき山道を分け入り、水無瀬の地に辿り着いた維茂一行は、紅葉の妖術により、幾度となく危機に瀕します。しかし、維茂は不動の精神と、神仏の加護により、その悉くを打ち破ります。ついに維茂は、紅葉が籠もる岩屋に迫ります。紅葉は妖術の限りを尽くし、維茂を迎え撃ちます。しかし、長きにわたる戦いの末、夜明けとともにその妖力は衰え始めました。維茂は渾身の一撃をもって、紅葉の首を討ち取ったと伝えられます。鬼女紅葉が討たれた後、戸隠の山々には血潮のように鮮やかな紅葉が広がり、その地に残された鬼女の伝説は、秋の深まりとともに、今なお語り継がれているのでございます。

#創作大賞2025 #ホラー小説部門

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