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NashiにKoiする5秒前(2026年8月4日の日記)

8月4月(火)

梨が好きだ。梨とりんごどちらが好きと聞かれたら、梨と答える。梨なんてみんな好きだから、ちょっと通ぶってりんごの方が好きだと答えていた時期が俺にもありました。梨なんて種類でそんなに違いがないだろと。りんごの幅広さ、奥深さに比べると、梨の差異なんてたかが知れているだろうと。

しかし!

その考えは甘かったのです。

数年前、当時住んでいた家の近くに梨農家があって、畑の脇の家で直売もしていた。コロナ禍で自宅で仕事をしていたこともあって、仕事の合間に試しに買ってみると、これが実にうまい。ハマって頻繁に買いに行くようになった。

買いに行くようになって、梨は品種ごとに収穫時期がちょっとずつずれていることを知った。まず幸水が出て、次に豊水、その後にさいぎょくという見慣れない品種が登場して、最後にあきづきが並んだ。大きさもそうだし、味もけっこう違っておもしろい。水分量、酸味、歯ざわり、そしてもちろん甘み。梨というのはこんなに多様な果物だったのか。私は中でも彩玉が好きだった。埼玉で生まれた品種だそうだ。

2人で1日1玉を、1ヶ月半ぐらい食べ続けただろうか。保存方法も覚えた。梨を袋から出し、キッチンペーパーでくるみ、さらにラップで包む。ヘタを下にして、冷蔵庫の野菜室に入れる。面倒ではあるけれど、これで長持ちするらしいのです。

いま振り返っても、あの夏は、新型コロナウイルスが猛威をふるいまくった暗黒時代だったけれど、梨だけが明るい空気を生み出してくれていた。

次の年の夏、直売をしていた梨農家の家に行ってみると、門が閉まっていた。次の日も、その次の日も、門が開くことはなかった。栽培をやめたみたいだよと、風の噂で聞いた。

話はここで終わらない。

その後もすっかり梨派になった私。朝の梨なんて最高で、朝ごはんは梨でいい。そう思っていた。ところが、あるときから、朝、梨を食べると、その後に具合が悪くなることに気づいた。朝食後すこしすると、体からサーッと血が引いたような感じになり、頭がぼーっとして、力が入らない。何事かと思ったが、振り返ってみると、その症状が出る日は、朝に梨を食べていたのだった。

なんと! こんなにも愛している梨が、私に牙を向くとは。

さてはりんごの策略かとも思ったが、仕方がないので、朝の食卓に梨が出ても、私はそっとラップをかけ、冷蔵庫に保管し、昼食に食べるようにした。なぜだか朝以外はそこまで具合も悪くならない。もともと朝は低血圧で食欲がなく、何を食べてもある程度調子の悪くなる体質なのだけど、梨に含まれる何かが朝の私に対して抜群の効果を持っているのかもしれない。

梨はかなり季節限定の果物なので、たいていその年初めて食べるときには、10ヶ月ぶりぐらいになる。だから梨のこの攻撃性を忘れていて、今朝、初物の梨を、「あ、梨だ! 今年初だ! やった!」と喜んで食べてしまった。案の定、午前中はぐったり。ぐったりしながら、そうそう、これだよ、と思った。今年も梨の季節が始まったのだ。

彩玉はあの年以来、食べていない。とりわけおいしかったという記憶だけが残されている。記憶を確かめるためにも、久しぶりに食べたいのだけど。


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