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【読書感想文】あなたの四月を知らないから(前編)

 ネタバレはありませんが、できれば本作は先入観無しで一度お読みいただき「あなたの四月を知らないから」の世界を楽しんでいただきたいと存じます。
 この本は「大阪城は5センチ」と「ゼログラムの花束」から構成されていますが、今回は「大阪城は5センチ」の感想です。
(以下、本文です)

 最初の1文があまりにも衝撃的でした。こんなにも惹きつけられる冒頭の文章は生まれて初めてでした。
 ドカン!とか、ズッキュウーーーン!とかいう衝撃を受けた後は、ジェットコースターが急降下していくように一気に物語の世界に引きずりこまれてしまいました。
 とはいえ、作品内にジェットコースターみたいなスリルは無いし、サスペンスのような不安も無い、どちらかと言えば「ちょっと変わった日常」を描いているのに、登場人物たちに共感したり応援したり、少し俯瞰したりしながら同じ世界で過ごす時間を楽しませてもらいました。
 登場人物たちの会話はもちろん、地の文も生きているかのような艶めかしさ、艶やかさを感じて、魅了されながら一気に読ませられました。
 そして、感じたのは

「これは解放の物語だったのか」

 という思いでした。
 作者の意図しているところではないと思いますが、主人公を始めとした登場人物たちの解放の物語のように感じたところです。そう考えて、冒頭の1文に戻ると、衝撃的だった文章が、さらに重量を増してドッカーーーンと衝撃的になりました。最初の1文に「解放」というテーマが暗示されていたからです。
 ちょっともう、凄すぎて表現する言葉が見つからないです。

 ここで少し自慢をさせていただきますと、創作大賞2024にエントリーしていた「大阪城は5センチ」を2024年7月に拝読していまして当時も感想文を書いています。当時

読み終えた感想として
『この小説、メダル確定!』
という心境です。小説としての完成度が高いです。


 と書いています。けど、本当は『金メダル確定!』という心境でした。そのくらいのインパクト
「こういう作品が創作大賞を受賞するんだろう」
という予感を抱く作品でした。ただ、あまりの衝撃に真面目に感想文を書けなかった記録がこちらです。


 さて、創作大賞2024の時点でも凄い小説だったのに、そこから加筆修正をされたということで、魅力がさらに増していることは言うまでもありません。
 また、タイトルにもある「大阪城」の描き方がとても上手で、匠の技を楽しむことができます。

 ただ、少し野暮なことを言わせていただくと、「恋愛を軸にしているけど、恋愛小説というより、根底にあるのは人間愛の物語なんじゃないかなぁ」
 とも感じています。

 不器用で不自由で幸せを実感できなくて、妥協とか打算とか惰性で生きている、幸せになりたいと願いながらもその方法がわからない。
 常識とか家族と仕事やお金とかの檻とか澱の中で、もがくように生きている人たちへの作者からのエールのようにも感じるのです。
 登場人物たちを通じて、作者が持つ優しさ、他者への愛を感じさせてくれるような印象を抱いています。そう言えば、昨年の私は良いことを書いていました。

 この作品を読めば人間が好きになる、心が優しくなると思うのですよ。

 再読して、この気持ちをより強く感じたところです。
 そう感じさせてくれる作品に出合えた幸運に、機会をくださったnoteに感謝です。

#読書の秋2025
#あなたの四月を知らないから

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