【創作】大根おろし #シロクマ文芸部
夜に降るのは流れ星ばかりじゃなくて、思い出も混じるのかもしれません。
何年振りか思い出せないですが、久しぶりに大根おろしを食べました。一味唐辛子と醤油で味を整えたのです、母と同じように。
人を貶めるものではないのですが、母は壊滅的に料理が下手で、美味しく作ろうとする向上心も感じられませんでした。
そのおかげで「外で食べるご飯は美味しい」という経験をたくさん得ることができました。
時々、母に対して
「大根おろしは上手だね」
と伝えることが有りましたが、最後に食したのがいつだったか、思い出すことができないのが残念で悔しいです。星も教えてはくれません。
自宅で大根おろしを作りました。手が疲れて痛くなるくらい大根を擦りましたが、沢山の量は作れませんでした。
味は母の足元にも及びませんでした。一生、追いつけないような気もします。
母は15歳で生家を出て75歳まで生きたけれど、料理を習うことも学ぶ機会もなく、ずっと貧しい生活で、安い材料で手早く作ることばかり繰り返していたので「美味しく作る」という姿勢は難しいことだったでしょうね。
自炊するようになり2年半が過ぎました。自画自賛で恐縮ですが、母の料理よりも美味しく作れているような気がしていました。
夜に降るのは流れ星ばかりじゃなくて、思い出もあるのかもしれません。
思い出が美化されていること踏まえても、母の大根おろしの美味しさを越えることはできませんでした。独りで暮らしている限り、母の大根おろしの味を超えられないような気がします。
ただ、何とか後20年を生き抜いて、母の享年は越えたいと考えています。
そしたら、辛くてしょっぱくて、美味しい大根おろしの食べ比べをしましょう。お互いの感想を地に残る子どもや孫に降らせて伝えましょう。
あなたを越える日まで、もう少しお待ちください。
(おしまい)
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