医学部という独特な共同体「仲間」として生きる6年間の学びの濃度
子どもが医学部に入ってから、私は新しい世界を知った。
同じ大学の中でも、医学部という場所には独特の空気がある。
上下関係の厳しさ、それでいて仲間同士の結びつきの強さ。
それは単なる学部の違いではなく、未来に同じ職業に就く者同士が6年間という時間をかけて育てていく独特の文化のようなものだった。
ここでは、親として子どもを通して見えた「医学部という共同体」の内側を覗いてみたい。
医学部という独特な場所
子どもが医学部の水泳部に入ってから、私は「医学部という世界」が持つ独特の空気を知るようになった。
足がないときに先輩が車で駅まで迎えに来てくれたり、休日に先輩に遊びへ連れて行ってもらっても子どもは1円も払わせてもらえなかったり…
そんな話を聞くうちに気づいた。これは単なる部活の上下関係ではない。もっと深い、特別な絆のようなものがそこにあるのだと。
医療職という共通の前提がつくる関係性
医学部が他の学部と決定的に違うのは、同級生のほぼ全員が「将来の医師仲間」であるという点だ。
縦(先輩・後輩)、横(同級生)だけでなく、斜めのつながり(看護、薬学、リハビリなど医療系学部)まで含め、皆が将来、医療現場という同じ舞台で働くことを前提にしている。
この閉じられたが濃密なコミュニティの中で、関係の形成は自然と「職業」色彩を帯びる。子どもの通う医学部では、水泳部の部長は必ず医学科3年生から選ばれるという「暗黙のルール」まであるそうだ。
まるで、医療現場における年次や役割のヒエラルキーをそのまま反映したような構造である。
試験を乗り越えるための団結力
6年間、同じメンバーで同じカリキュラムを履修し、厳しい進級試験を共に乗り越える。
試験範囲があまりに広いとき、学年全体で範囲を分担し、互いに教え合うという。
私はその話を聞いて驚いた。大学で「学年全体」が協力してテスト対策をするなんてことは他の学部ではまずありえない。
ただ一方で、集団になじめない学生もいるはずだ。その場合はどうなるのかこの強い一体感が誰かを置き去りにしてはいないかという疑問も残る。
医師国家試験という明確なゴール
医学部の学生たちは、6年間を通して「医師国家試験」という一つのゴールに向かって歩む。
卒業後の進路が企業、公務員、大学院、起業などに分かれていく一般学部とは根本的に構造が異なる。
医学部は、ある意味で「大学という名の専門学校」といえる。少人数で、同じ目標を共有しながら進むその道のりは、互いの関係をより密にし、強い仲間意識を育てていく。
濃密さの光と影
この世界で子どもが得る人間関係は、一生ものになるに違いない。
支え合い、共に学び、同じ未来を描く仲間たち…その絆の強さは、医療という「命に関わる仕事」を目指す覚悟にも通じる。
しかし同時に、こうした濃密な関係性を息苦しく感じる人もいるだろう。6年間という長い時間を限られた環境の中で過ごすのは容易ではない。
それでも私は思う。医学部という場所で子どもがどんなふうに自分の居場所を見つけていくのか。その過程を見守ること自体が親にとって貴重な学びなのだと。
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