【6-3】逆襲のシャアラストシーン解説③ これがシャアの、悲しい悲しい「友達の愛し方」だ。
殴りに殴ってサザビーの脳をほじくり出すアムロの優しさ
ラー・カイラムによって断ち割られたアクシズから、炎が噴き出す。
「やられた」
と、シャア。
「貴様がいなければ」
───アムロ、貴様がいなければ、アクシズは順調に落とせたのだ。そして、ララアは死ななかった。両方の恨み言をまとめてぶつけるシャア。
そこにアムロのνガンダムが迫り、コクピットがある頭部への攻撃を始める。
アムロは、サザビーのコクピット位置について、確定情報を得ていない。
さすがに、新生ネオジオンの威信をかけたモビルスーツの構造は、最高機密だろう。
しかし、リガズィに乗って、5thルナで対戦したとき、アムロはサザビーの構造をある程度把握したのだ。さすがパイロットと政治家をやっているシャアと違い、パイロットとモビルスーツ開発者をやっているアムロである。
だが、最終的には彼の直観かもしれない。
「コックピットに座っただけで、ガンダムの配線なんか全部わかった」とハサウェイが知ってるくらいの武勇伝があるアムロだ。
噂に違わず、シャアがどこにいるのかアムロは見抜き、徹底的にその頭部に打撃を加えている。
「モニターが死ぬ」
打撃を受け、全天周囲モニターに欠けが発生する。同時に、サイコフレーム搭載モビルスーツの直接的な接触によってか、緑の光がシャアの背後、コクピット内にあふれはじめる。サイコフレーム共振の先触れだ。
このとき、通信ではなくナナイ・ミゲルからの意思、精神的な呼びかけをシャアは察知する。
彼のニュータイプ能力は、それができるほどの域に達していないが、アムロと接触してはじまったサイコフレームの共鳴が呼び水となって、これを感知したのだ。この緑光が、人間の意志を伝える能力をもっていることがわかる。
「戻れというのか」
サザビーは、もう限界に達している。
「大佐、もどってください。四号艦が爆破され、ロンドベルの爆弾も阻止できず、アクシズはバラバラになります。この作戦は失敗したのです。もどってください大佐」───というようなナナイの思念が届く。
彼をとりまく柵(しがらみ)の最先端が、このナナイだ。彼女は、本作戦で「ネオジオン総帥としてのシャア」を呼び戻す使命がある。
そんな説得と祈りが、シャアに届く。しかし。
「ナナイ、男同士の間に入るな」
シャア個人は、アムロとの戦闘中会話に夢中だ。
アクシズの地球落下が現時点で絶望的なのは、シャアにももうわかっている。しかし、今だけは新生ネオジオンよりも、シャアが納得するために戦っていたいのだ。
ここでも彼のエゴが出ている。シャアはアムロに「わかってもらいたいこと」があって、だからこそ継戦能力の高いモビルスーツを作らせたのだ。
個人の本音としては、この対話のために、全てを準備してきている。
戦いを楽しんでいるのでは無い。シャア・アズナブルという男が背負わなければならなかった責任、その理不尽さをアムロに伝えようとしているのだ。そしてそれは、戦闘中のモビルスーツ同士でしかできない。
分かってくれ。
私の苦しみを分かってくれ。
彼はそれを、子供のように正直には言えない。思えば、シャアはいつもこうだ。ガルマのときの白スーツもそうだった。
これが生涯にわたり彼を苦しめ、こじれ、遂にはアクシズ落としなどという大凶行を成そうとしている。
しかし、ナナイに気を取られたのは確かだ。ガンダムに「左拳」の連打で頭部を打ちのめされ、背中から一撃されて、サザビーのコクピットは射出されてしまった。
「大佐、私たちをみすてるつもりなんですか」
敗北が確定してから、シャアを責めるナナイ。
みんなして、自分にすがってくる。
結果を出せないと責める。
ここからも、シャアは本当に逃げたい。
画面では、下手側のナナイから離れる向きで、サザビーの脱出ポッドの赤い球が逃げていく。
この時、明確に推進剤も噴射されている。ナナイから逃げる方向にだ。
演出的にも、シャアはナナイのところに帰還するつもりがないのがわかる。
この噴射自体は、モビルスーツ本体の爆発に脱出ポッドが巻き込まれないための自動設定とは思うが、場面としては、いつもの「シャアの名人芸的な脱出」だ。
最初の「機動戦士ガンダム」以来、シャアは、ジオングから脱出し、キシリアの乗るザンバジルの爆発から脱出し(劇場版)、ハマーンのキュベレイにダルマにされた百式から脱出してきた。このシャアの脱出芸が、ついにアムロに阻止される。
「逃がすかよ」
トリモチランチャーをサザビーコクピットの片側に当てて回転を加え(あるいは噴射口をふさぎ)、追いつき、アムロはシャアを確保した。
アムロが「左拳」の連打でサザビー頭部を殴ったのはなぜだろう。
カラバ時代に、アムロはリックディアスの右腕で、スードリの銃座を殴っている。彼のパンチの利き手は、本来は右なのだ。
「情けない奴」のところで、ダミーバルーンを出しているのは左手指の付け根である。νガンダムの両手には、それぞれ明確な役割分担があった。
サザビーの頭部を、アムロが「左拳」で殴っていた理由。
それは、トリモチの発射機能がある右手マニピュレータを、シャア確保のために温存していたからだ。
あらためて、アムロの戦闘は、サザビーのコクピット(脱出ポッド)を確保する、つまりシャアを生け捕りにする目的で組み立てられているとわかる。
リガズィで対した初戦にて、サザビーの構造をおおよそ見抜き、以後アムロの射撃はサザビーの頭部コクピットを避けて行われている。ビームが狙うのは、胴体か手足だ。
νガンダムにはヘッドバルカンが装備されているので、正面に対すればサザビーの頭部を損傷させることは可能だ。だが、致命弾になるおそれがあるため、このときも、わざわざ手を伸ばして、首の動力パイプを引きちぎっている。
その上で、左手マニピュレータで数回に分けて殴るのも、頭部を分離させる目的だ。ポッド内部の人間にはダメージが通らず、脱出装置だけが働く程度の衝撃を、アムロは複数回にわけて調整しながら頭部に加えている。
アムロは、あくまでシャアを確保しようとしているのだ。
彼は、シャアを強いニュータイプだと思っているし、エウーゴ、カラバ時代にあった同志のような歩みができる可能性を考えているからだ。
そして、アムロもシャアが好きで、シャアとともに生きたかったのだ。
少なくとも、ここで殺してやろう等とは、考えていない。
対等のモビルスーツで戦いたいと言ってたのに、いざ負けると強がって負けを認めないシャア
「つかまった。しかし、もう遅い」
先の爆破で分断され、アクシズは地球から離れると思われた。しかし、後方部分は爆発によるブレーキがかかり、落下コースに落ちていく。
破片をよけるνガンダム。
このときのアムロの背後に、緑色の光が充実している。
サイコフレームの光から、何かが彼に伝わっているのだ。
やや茫然としているアムロ。
彼の中に伝わり行くのは、おそらくシャアの本音だ。サイコフレームの共鳴によって、シャアの精神はサザビー同然に丸裸にされ、緑色の光を通じて、アムロに伝わっていく。
シャアの理不尽を背負わされてきた悲しみや辛さ。それをアムロは茫然としつつ受け取っている。
しかしこれが、シャアの高笑いでストップした。
彼の強がりだ。本心を隠したせいか、緑光は消える。
「何を笑っているんだ」
直前にアムロが感じていた、シャアの本当の感情的な動機、シャアの理不尽への嘆き。それとはあまりに反対な哄笑。
ヘルメットをとるシャア。ここでやっと二人は顔をさらしている。
仮面、サングラス、ヘルメット。顔を覆うものは「実は別に本音がある」ことの象徴だ。いまの二人にはこれらがない。先ほどの緑色の光を通じて、お互いに何を考えているかが、伝わった後だからだ。
しかし、その上でシャアは強がる。
「私の勝ちだな」
なぜ強がるのか。
負けを認めたくないからだ。
なぜ認めないのか。
戦いが終わってしまうからだ。
この期に及んでも、シャアはまだプライドが打ち砕かれず、アムロを認めてしまえないからだ。
「いま計算してみたが、アクシズの後部は地球の引力に引かれて落ちる。貴様らの頑張りすぎだ」
この結果は、偶然かもしれない。一度は、アクシズ落下による地球寒冷化作戦は失敗したかと思われたのだ。
だが、天はこの運命の修正を許さなかった。
シャアは笑う。私はずっとこれにもてあそばれてきた。
さあ、お前たちも、信じられない理不尽を味わうがいい。
これは、私の、運命に対する逆襲だ。
今度はお前たちが、この理不尽を受け止めてみせろ。
そして、私のように敗北していけ。
私の敗北をわかってくれ。
そんなシャアを理不尽な人生ごと受け止めるアムロの、鍛えられすぎた理不尽耐性
間髪を入れず、アムロは落下するアクシズに突っ込んだ。
彼の額からは、汗が飛び散る。
これはアムロの冷や汗だ。彼はマシンでもなければ超人でもない。シャアと同じに、恐怖を感じれば嫌な汗もかく。それを超えて、アムロはこの巨大な理不尽に立ち向かった。
我々は、過去に冷や汗に顔を濡らして戦うアムロを見てきた。ホワイトベースに乗っている頃の、わけても初期のアムロは、いつも恐慌のなかで汗にまみれていた。
その天才性ばかり取り沙汰されるが、彼こそ信じがたい理不尽な環境を戦い抜いてきた男なのだ。
ザクに襲われ、軍人としての訓練を何も受けずに戦場に出され、シャアに襲われ、このビームライフルも当たらないような敵にガンダムハンマーで戦えと言われ、燃えていくザクを横目に大気圏突入を果たし、ジオンの地上部隊に追い立てられ、イセリナに銃を向けられ、ランバ・ラルに襲われ、久しぶりに会った母は子供の命より一般常識を振りかざし、ハモンに襲われ、黒い三連星に襲われ、水爆をいい感じに斬って無力化しろと無茶を言われ、パワーアップしたはずのガンダムハンマーはゴッグに効かず、グラブロに襲われ、ジャブローでまたシャアに襲われ、宇宙に上がればビグロに襲われ、ザクレロに襲われ、久しぶりに会った親父はおかしくなっており、それを案じてくれたスレッガーさんはビグザムに特攻し、ギャンに襲われ、ブラウブロに襲われ、運命の出会いをしたララアを自分の手で殺してしまい、ジオングに襲われ、やったことのないフェンシングを挑まれて肩をぶっ刺され、すっかり愛着のできてしまったホワイトベースのクルーを、ひとりで導いて脱出させた。
アムロこそ、巨大な理不尽を前に、最後まで戦い抜いた男だったのだ。
「ふざけるな。たかが石ころひとつ、ガンダムで押し出してやる」
アクシズは巨大隕石である。
そしてシャアの人生に降りかかった巨大な理不尽だ。
それを「たかが」と言われ、シャアはカチンときている。
「馬鹿なことはやめろ」
しかし、分かってもいるのだ。
シャアも無謀と思われることをやってきた。馬鹿だったのは自分だ。
カミーユに言われた辛辣な御意見が象徴するシャアの生涯を、まるごとひっくり返して見せるアムロの男ぶり
「機動戦士Ζガンダム」で「君はシャア・アズナブルという人のことを知ってるかね?」とシャア本人(このときはクワトロ・バジーナ)が問い、カミーユ・ビダンが「あの人は、両親の苦労を一身に背負って、ザビ家を倒そうとした人ですから。でも、組織に一人で対抗しようとして敗れた、馬鹿な人です」と返している。
シャアの人生を、カミーユは容赦なく総括した。
そしてシャアもこれを「正確だ」と認めている。
本作「逆襲のシャア」で、このときアムロは、人類の未来を一身に背負って、アクシズを押し返そうとしていた。
巨大な小惑星に一人で対抗し、この理不尽をひっくり返そうとしている。
まるきり、シャアが置かれた状況に、そのシャアの目の前でアムロが立っているのだ。しかも、彼は自らここに飛び込んでいる。
「やってみなければわからん」とアムロ。
「正気か」とシャア。
理不尽の前には、人間は結局逃げるしかないのだ。
しかし、アムロはそれに立ち向かっている。シャアには、それが正気とも思えない。
そして、正気であると、認めたくない。
シャアは、絶望していたのだ。
人類に、ではない。
繰り返し襲い来る、人生の理不尽にだ。
「貴様ほど急ぎすぎても居なければ、人類に絶望もしていない」
これが二人の最大の違いである。
その悲しみを胸に抱いたままで、涙よ海へ帰れ
アムロは両腕で、全身でアクシズを押す。
シャアのコクピットを胸に抱いているのは、シャアのその悲しみが分かるからだ。
「アクシズの落下は始まっているんだぞ」
落下阻止は不可能だ。
私のように、あきらめて、そして逃げろ。
返してアムロは言う。
「νガンダムは伊達じゃない」
たかが石ころひとつ。
これは、アムロの強がりではない。
シャアの悲しみを、アムロが「大したことないよ」と言って代わりに抱えようとしているのだ。
シャアがこれに頼もしさを感じた瞬間、それにナナイは確かに気がついた。シャアの恨みが解放されはじめたのだ。
これまでのシャアの恨みは、ネオジオン総帥の位置に相応しく、理不尽に虐げられてきたスペースノイド代表者の位置に、ピタリと同調していた。
これがあったから、彼はジオン・ダイクンの後継者たりえたのだ。
しかし、その恨みが消えていくのを感じる。
彼の人生の恨みが、アムロの「優しさ」によって解放されていく。
「ララァ・スンは、敵対するアムロの中に求めていたやさしさを見つけた」とシャアは言う。ララアが一瞬で発見したその要素に「ニュータイプのなりそこない」であったシャアは、やっと出会えたのだ。
「アムロ・レイは、やさしさがニュータイプの武器だと勘違いしている男です」と、ナナイはアムロを評した。
そのアムロの優しさによって、シャアが解放されていくことに、彼女はショックを受けている。
説教をされても、人間は悔い改めない。
自分が恨んだ理不尽な環境に、真正面から戦う誰かの真っ直ぐな姿を見せられて、はじめて人間は自分を恥じるのだ。
そして、自分よりも理不尽な環境で、それでも戦う人間を見て、はじめてその人の恨みは、ほどかれる。
「νガンダムは伊達じゃない」
アムロは叫ぶ。
シャアがサイコフレームを送った理由と「情けないモビルスーツ」の意味は、実は三つある。
ニューガンダムは、古いガンダムとは違う。
父テム・レイの作ったガンダムは、理不尽を跳ね返せなかった。運命を変えることはできなかった。最終的にララアを殺してしまったのだ。
だが、これは違う。新しいガンダムは、荒れ狂う運命を、理不尽な死を跳ね返すのだ。
その姿を、シャアは間近で見ている。
アクシズが地球の大気圏に触れて、断熱圧縮により(作中では摩擦熱と言っている)高熱を発しはじめた。
この状態で、何の装備も無しに大気圏突入となれば、νガンダムと言えども燃え尽きてしまうだろう。古いガンダム同様に耐熱フィールド(または耐熱フィルム)があったとしても、それを収納していたスペースは、サザビーのサーベルが切り裂いてしまった。
コアファイター脱出もなく、耐熱フィールドもなく、アクシズごと機体は炎に包まれようとしている。
サザビーのコクピット内でも、嵐のように緑の光があふれはじめた。
ひたすら逃げ続けてきたシャアが、命が惜しくないのか、とアムロに問うたのだと思う。返してアムロが「ああ、シャア、お前も、命が惜しいのか」と水をむける。すると
「命が惜しかったら、貴様にサイコフレームの情報など与えるものか」
と、シャアは打ち明ける。ここには、二人しかいないからだ。
「なんだと」
サイコフレームは、ただニュータイプの戦闘能力を底上げするシステム以上に、共鳴現象が確認されている。
シャアの口ぶりからは「アムロと対等に戦って勝つ目的で、能力を底上げする素材を提供した」と聞こえるが、本音としては、共鳴しやすい共通素材を搭載して、モビルスーツごしの対話をしたかったのだ。
アムロはシャアが分かっても、シャアはアムロが分からない。
ニュータイプ能力に差があるからだ。
これを、サイコフレームで埋めたくて、技術を横流ししたのである。
シャアは、なお強がる。
「情けないモビルスーツと戦って勝つ意味があるのか」
もし本当にそう思っているなら、同等のモビルスーツと戦って負けた今、彼は満足しているはずである。これは間違いなく強がりだ。
そして、νガンダムの前に、リガズィで対戦したときシャアは「そんなものでは」と言っている。
これは、リガズィの性能の低さを「情けないモビルスーツ」と失望しただけではない。
冒頭の解説では「そんな理屈(エゴだから駄目)では、私の考えは覆らない」という意味と書いたが、もう一つ、アムロの「エゴだよ、それは」という言葉が、自分に全く響かないことに苛立ったのだ。
ララアという強力な磁石に擦(こす)られて、鉄が磁気を帯びるように、ア・バオア・クーでの両者は(シャアはジオングに搭載されたサイコミュの力を借りて)互いの考えや位置が読み取れた。
蘇れ、あの感覚。その願いをこめて、サイコフレームの技術は横流しされたのだ。シャアの願いは、全盛期を過ぎたスポーツ選手がガジェットに頼るのにちょっと似ている。
シャアが「情けないモビルスーツ」と言ったのは本心だ。しかしこれは「お前の考えてることをバッチリ伝えてくれるガジェットを積んでくれないと、お前ほどの感能力がない私はお話しするとき困るのだ。見ろ、実際にリガズィなんかだと、ぜんぜん響かない」という本音を隠しての強がりである。
「しかし、これはナンセンスだ」
馬鹿馬鹿しい結果に終わった。シャアの本当の目的は、先述のように、アムロと永遠に戦い続けることだ。そして、戦闘濃度のミノフスキー粒子環境下で、相手の考えていることをバッチリと察しながら本音で友達トークをしつづけることであろう。しかし、そのために送ったサイコフレームが、予想以上にνガンダムを強くしてしまい、決着がついてしまった。シャアには馬鹿馬鹿しい結果だ。
「馬鹿にして」
アムロは、シャア以上の感応力があるし、サイコフレームを通じて、シャアの苦しみが分かっている。アクシズ落としが個人の感情から来る行動であることも。
だが、そんなもののために、たくさんの人間が死んでいるし、自分たちも命を捧げてブライトの作戦にあたっているのだ。一言くらい言いたくなる。
「そうやって貴様は、永遠に他人を見下すことしかしないんだ」
そうは言われても、幼少期の事情から、シャアは腹を割って本心を話せる友達がいなかった。
彼のニュータイプ能力がアムロほど発達しなかったのは「ジオン軍の内部で、本心を隠してザビ家への復讐をしなければ」という、一ミリも心を開けない事情のせいだったのかもしれない。
しかし、戦ううちに、アムロというニュータイプとそれができることに気がついた。
シャアは、友達の愛し方を、モビルスーツでの戦闘越しでのやりとり以外に知らないのだ。
アムロとのモビルスーツ戦は、シャアにとって大切で貴重な「友達と飾らずにおしゃべりできる時間」だ。瞬間に決着がついてしまうような格差のあるモビルスーツでは許せない
思えば、ガルマはあっという間に死んでしまった。(シャアが地球に降下して10日ほどで戦死している)自分が謀略をめぐらせただけで、あっさりと。
アムロはシャアにとって「全力で敵意をぶつけても死なない、大切な大切な友達」なのだ。
余談 ミノフスキー粒子を使って会話するニュータイプ
ニュータイプは、どうして意思を通じ合わせることができるのだろう。
「機動戦士ガンダム」の作中では、二人のニュータイプの間に、映像でも音声でもない方法で、意思が伝わっている。
超能力の定義は、五感以外の入力と、筋肉以外の出力だ。
ニュータイプ能力はこれにあたる。
しかし、劇中とは言え、ニュータイプ同士の意思の疎通が存在しているのなら「不思議な超能力」では済まされず、何らかの科学的な根拠があるはずだ。
ニュータイプ同志は、何を媒介に意思を伝達しているのだろう。
ガンダムという世界にしかいないニュータイプ。
両者間に存在する、この世界独特のものとは何か。
それこそミノフスキー粒子である。
ミノフスキー粒子はレーダー波を減衰させるため、これが散布されている環境下では通信が使えない。しかし、ニュータイプはそのミノフスキー粒子を媒介に意思の伝達ができる能力者という説がある。
(これ、どこか考察サイトかyoutubeで観たネタなので公式ではないです)(どこだっけ? 読者さま、知ってたら教えてください)
「戦争がなければニュータイプの目覚めはなかった」と言われるのは、戦闘濃度でミノフスキー粒子が散布されている、より濃度の高い場所で会敵してこそ、互いの意思が通じやすくなるためだ。
シャアも、その感覚を理解していた。だから、人が見ている前でとっくみあいの喧嘩をするより、ノーマルスーツでバズーカとグレネードを打ち合うより、戦闘濃度のミノフスキー粒子環境下で、継戦能力の高いモビルスーツにサイコフレームを載せて感応力を底上げし、接近戦をしている方が、ここちよく意思が伝わるのだ。
シャアがサイコミュ技術を横流ししたのは、アムロと決着をつけたいための戦闘狂の側面という説も聞く。
しかし彼は、これ以外に友達と話す術を知らなかったのだ。
ただ、実は対等の実力を持つアムロに、アクシズ落としを止めてもらいたかった、という説(シャアの気持ち)は、あると思う。
それもまた、理不尽に押しつぶされそうな、シャアの救いではある。
単機でアクシズを押し返さんとスラスターを噴射しつづけるνガンダムから、網目のように薄く、緑の光が広がっていく。
これに呼応して、二つの現象が起きた。
ジェガンの参戦と、ナナイ・ミゲルが言う「大佐の命が吸われていきます」という現象だ。
ナナイはそう言うが、シャアは死人や病人のように生命力を失っているようには見えない。その意味を、次回解説しよう。
以下6-4の目次
・「大佐の命が吸われていきます」とジェガンの参戦
・ジェガン隊のみなさんの手前、カッコイイ台詞で誤魔化しはじめるシャア
・泣きながらウソをついている、シャアの最初の「わかるんだよ」
・「逆シャア観るんなら、1stとZだけでいいよ、ZZは別に観なくていい」なんて言ってる子はいないかな?
かくいう僕も「ZZはプルが全て。あとハマーン様が死んだね。最近プルツーの良さがわかってきた」くらいに思ってたヨ。
お楽しみに!
