注文住宅夫婦日記⑦ それって全部私たちが決めるんですか?

【これまでのあらすじ】
人生1度目の家づくりで大失敗を喫した私たち夫婦。背水の陣で挑んだ2度目の家づくりは、信頼できる担当者Fさんとの出会いで幕を開けました。
2人の子供が巣立った後の家なので、夫婦で住めるこじんまりした家を、注文住宅を売りにしている会社で建てることにしたのです。

しかし、幸せの絶頂であるはずの「契約日」、Fさんから告げられたのはまさかの退職宣言
その後、後任が次々と入れ替わる異常事態に、私たちの不信感はピークへ。「家づくり中止」の瀬戸際まで追い詰められます。

【今回のお話】
中止の危機はなんとか回避。しかし、安堵したのも束の間、施工業者側が「注文住宅のリアル(厳しさ)」を突きつけてくる怒涛の展開が始まります。

こんな階段になりました

1 和解そして試練

前回の打ち合わせで、施工業者側の姿勢に不信を募らせた私たち夫婦は、打ち合わせを途中で打ち切って帰ってしまいました。
翌日、チーフ建築士のXさんから丁重なお詫びの電話があり、至急、改めて打ち合わせを行いたいとのことだったので、1週間後、出先の支店に私たち夫婦(以下、「夫婦」と言います)はいそいそと出かけました。

2 専門用語連発

冒頭で、チーフ建築士のX氏からのお詫び(内容は省略します)が終わり、打ち合わせ再開。
改めて私たちの正式担当となった一級建築士のX氏が立て続けにぶっ放してきます。

X氏「杉の無垢の床材までは決まっていますが、仕上げはどうしますか?」
夫婦「仕上げ?」
X氏「うづくりにしますか、それとも一般的な仕上げ方ですか?」
夫婦「うづくりって、どんな仕上げですか?どう書くんですか?」
(X氏「浮造り」について説明 夫婦沈黙 以下、繰り返し)
X氏「床材の張り方向は?」
「階段はどうします?ささら桁(げた)ですか?ちから桁ですか?蹴込みどうします?」
「階段の手すりは2段?1段?」
「トイレの壁は塗りにしますか?」
「玄関のカウンターは底抜きにしますか?」
X氏の攻撃はすさまじく、そもそも用語がわからないから、判断のしようもない。

夫婦は目配せしながら、無言の激しいバトルを繰り広げます。
妻(ちょっとこの人何言っているのよ?あなたわからないの?)
夫(わかんないよ。おまえが注文住宅を希望したんだろうが。勉強しておけよ)
妻(あなたが知らないことをなんで私が知ってるのよ。いろんな雑誌見てたじゃない!)
X氏はこの夫婦の無言の諍いを尻目に、次々とこちらに決断を迫ってきます。
そのたびに夫婦は迷い困惑し、沈黙してしまいました。
このままでは、家づくりの途中で「夫婦空中分解」なんていう事態になりかねません。

やっとのことで、私はX氏に尋ねます。

「それって全部私たちが決めるんですか?」

X氏「はい。施主様のご意向に従って家づくりを進めます。
それが注文住宅ですから
X氏は薄く笑いを浮かべ、当然だろうが、という顔をしています。

3 撤退

つまり、これってあれですよ。
謝罪した分の元はとりますよ!という、ある意味、戦闘開始の合図であり、「注文住宅はあんたが思ってるほどヤワなもんじゃないんだからね」というカウンターパンチなのでしょう。
もちろん、相手側に悪意がある訳ではありませんが、こちらとしては防戦一方です。

結局、この日の打ち合わせでは冒頭のお詫びがあっただけで、結局何一つ決められず。

X氏は鼻から息を漏らしながら「では、次の打ち合わせまでにご検討いただきますようお願いします」で終わり。
もちろん、車中の夫婦はずっと無言。この日も雨。ワイパーの音だけが響きました。

今回の教訓
注文住宅を建てるなら、最低限の専門用語の知識を持って臨むべし。

第7話終わり。
次回は、「玄関ドア、素敵なご提案があるんです」

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