「決断力を磨け」は間違いだった──本当の判断力
こんにちは、こたろーです。
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。前回を読んでない方はこちら👇️
栗山監督の【監督の財産】、いかがでしたか。どこかひとつでも、ご自身の心に引っかかる部分があったなら、書いた側としてこれほど嬉しいことはありません。
プロ野球の監督というのは、日本にたった12人しか存在しないポジションです。その極限の場所で、長年戦い続けてきた人の言葉には、やっぱり他では味わえない重みがある。読んでいる最中、何度もそう感じました。
この本を読んで、私が一番心に残ったのは——「判断」についての記述でした。
世の中には「決断力を磨け」「スピードが命だ」と書かれたビジネス書が山ほどあります。でも、栗山監督の語る判断論は、そういったものとは全く違う手触りがありました。
判断には「タイミング」がある、と監督は書いています。早すぎれば、バッティングで言う「泳ぐ」状態になる。遅すぎれば、「差し込まれる」。この絶妙な野球的感覚で語られる判断論を読んだとき、私は思わず鳥肌が立ちました。リーダーにとって大切なのは、決断の速さでも遅さでもなく、その「間」なのだと。
辞書のような大著と、一ヶ月間の格闘
最初にもお伝えしたのですが——この本、本当に分厚いんです。
単行本換算で5冊分。手に持つとずっしりと重く、まさに「辞書」という表現がしっくりくる一冊です。
読み切るまでに、まるまる一ヶ月かかりました。
実はその一ヶ月の間、体調を崩してしまった時期があって。毎日ガンガン読み進めるような状態にはなれず、「今日はここまで」「体調が戻ったらまた」と、少しずつページをめくる日々でした。
でも今思えば、そのペースで読んだからこそよかったのかもしれない、と感じています。一言一言が、じんわりと五臓六腑に染み渡っていくような読み方ができたから。
読み終えて強く感じたのは——「この本に書かれていることの多くに、心から共感できる」ということでした。私自身もこれまで、人間学をはじめとするさまざまな分野を学び、実践し、失敗を繰り返してきました。その積み重ねがあるからこそ、栗山監督が苦悩の末にたどり着いた言葉が、するりと胸に入ってくる。そんな感覚がありました。
「名プレイヤー、名監督にあらず」という球界の定説を考える
「名選手が名監督になるのは難しい」——よく耳にする言葉ですよね。
天才的な技術を持った選手が、指導者になった途端に苦しむ。その理由は、プレイヤーとしての感覚と、監督としての感覚が、根本的に違うからだと思っています。
選手に必要なのは「自分のパフォーマンスをどう最大化するか」という個人の感覚。でも監督に求められるのは「自分以外の人間をどう動かし、組織として機能させるか」という全く別の能力です。
栗山監督の現役時代は——ご本人も著書の中で自嘲気味に書かれているのですが——世間が言うような「大活躍した選手」では、正直なところなかったそうです。怪我や病気にも悩まされ、プロの世界の厳しさを誰よりも体感してきた方でした。
それでも、引退後にキャスターとして野球をグラウンドの外から見つめる経験を積み、そこから監督の道へ。北海道日本ハムファイターズでリーグ優勝・日本一を成し遂げていく。まるでドラマのような歩みです。
なぜここまでの実績を残せたのか。それはきっと、プレイヤーとしての才能に頼れなかった分、「組織を動かすために何が必要か」を、誰よりも純粋に、ひたむきに学び続けてきたからではないかと、私は思っています。
組織を勝利へと導く「人間学」と『論語と算盤』
栗山監督の勉強量は、私たちの想像をはるかに超えています。
特に「人間学」的な本の使い方が、采配やチームづくりの現場でごく自然に活かされているのが印象的でした。渋沢栄一の『論語と算盤』は、本のあちこちで顔を出してきます。道徳と経済の両立を目指した渋沢の思想を、栗山監督は「選手の人間教育」と「試合での勝利」という形に落とし込んでいる。
技術や戦術だけでは、人間は動かない——そのことを、栗山監督は古典と先人の知恵から学び取っていたのでしょう。
チームを率いるリーダーは、目先のことにとらわれず、常に「全体」を俯瞰し、その瞬間の最適解を導き出し続けなければならない。頭がちぎれるほど考え続けながら。この本には、そんなリーダーの孤独と思考法が、リアルに書かれています。

敗戦の記事にこそ滲み出る、栗山監督の圧倒的な「人間らしさ」
この本を読んで、最も深く感動した部分をお話しします。
それは、本の「構成のバランス」についてです。
通常、こういった回顧録やビジネス書は、成功エピソードや勝ち試合の話が中心になりがちです。でもこの本は違いました。チームが勝っているときの話よりも、「負けているとき」の記述の方が、圧倒的に多い。
読んでいて、胸を打たれました。
自分の采配が裏目に出て負けてしまった日。その失敗から目を背けることなく、当時の苦しい心境をそのまま書き残している。葛藤や自己嫌悪、選手への申し訳なさ——そういった「ドロドロとした部分」が、驚くほど率直に描かれているんです。
さらに、ミスをしてしまった選手や、スランプに苦しむ選手一人ひとりに対して、「当時どんな気持ちで彼らを見ていたか、どんな言葉をかけたか、あるいはあえて黙っていたのか」という裏側まで、細かく書かれている。
その眼差しの根っこにあるのは、ひとことで言えば——「優しさ」だと思います。ただの指導者を超えた、一人の人間としての、深くて静かな優しさ。それが本の全編を、柔らかく包んでいました。
私にとっての「バイブル」と、これからの学び
この本は今、私にとって単なる「元監督のドキュメンタリー」ではなく、何度でも読み返したいバイブルになっています。手元に置いておくだけで、背筋がすっと伸びる。そんな特別な一冊です。
振り返ってみると、私はこれまで、栗山監督がインタビューや著書で紹介されていた本を、ほぼ全て手に取って読んできました。どれも、私の人生に深く影響を与えてくれる名著ばかりだったからです。
今回この分厚い一冊を読み終えて、また新たに学びたいテーマがいくつも見つかりました。栗山監督が紹介していた「また別の本」についても、後日改めて記事にしていこうと思っています。
ぜひ、引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
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