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初冬のヒグラシ

季節外れの静けさに揺れる心

初冬の空気は

澄みすぎていて

息をすると胸の奥まで

きゅ

と音がする


もうヒグラシの季節ではないのに

心だけが

夏の名残りみたいに

「のたり のたり」と鳴いている


木枯らしが枝を鳴らすたび

季節は確かに冬へ向かっているのに

自分の内側のどこかでは

あの夕暮れの色が

まだ消えずにゆらいでいる


初冬の冷たい静けさに

身を置きながらも

心はなぜか落ち着ききれず

小さな波紋だけが広がる


終わったはずの季節の気配を

なぜ今

聴いてしまうのか


ヒグラシは

とうに鳴き止んだというのに

僕の中では

夏の終わりの声が

遅れて届く


それは不安の種か

それとも

まだ手放せない何かの影か


初冬の冷えた風を受けながら

心の奥で

ただ一匹

季節外れのヒグラシが

のたり のたり

と鳴き続けている





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