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【📓小説】③心クリーニング書店 「家族か仕事か」

第3話「家族か、仕事か――その後悔をクリーニング」



1 「お父さん、また遅いの?」

カケルは会社帰りに「心のクリーニング書店」の前に立っていた。
夜風が少し涼しい。看板の灯りが、いつもよりやけに温かく見える。

(今日も、依頼者が来るんだよな……)

扉を開けると、チリンとベルが鳴る。
奥では、薫が読書の手を止めて顔を上げた。
「カケル、今日も来たのね。――ちょうど依頼者が来たところよ。」

ソファには、スーツ姿の男性が深く腰掛けていた。
目の下にはクマ。ネクタイは緩み、どこか疲れ切ったような顔。

「……山根浩二、37歳です。」
男は、低い声でつぶやくように言った。
「家庭か、仕事か。……選び方を間違えた気がしてならないんです。」



2 仕事人間だった父親

山根は、2年前に管理職へ昇進した。
夜遅くまで残業、週末も出勤。
「お父さん、また遅いの?」と小2の娘に言われるたび、胸が痛んだ。

「でも、家族を守るために働いてるはずなんだ……」
彼の声は、かすれていた。

一方で、妻との距離は広がる一方。
「あなた、娘の参観日、今年も無理なの?」
「仕事なんだ……」

――そして昨夜。
娘がぽつりと、「お父さん、いなくても平気かも」と言ったという。
「……その言葉が、頭から離れないんです。」

カケルの胸に、ずしりと重いものがのしかかった。
(俺の父親も、忙しくて家にあまりいなかったっけ……)

薫が静かに頷く。
「浩二さん。――その“後悔”、クリーニングしてみませんか?」



3 タイムリープの扉が開く

薫が分厚い本を開く。
「今日はカケルが先導してね。爺、準備を。」

「お嬢様、承知いたしましたぞ。」

光が広がり、三人は――2年前、昇進を告げられた日のオフィスに立っていた。



4 1回目のタイムリープ――「家族優先」の選択

「山根くん、管理職の話、受けてくれるね?」
部長の声が響く。

浩二は一瞬ためらい、振り返った。
後ろに立つカケルが、思わず口を開く。
「浩二さん、今度は家族を優先してみませんか?」

浩二は深くうなずき――
「すみません。……家庭を大事にしたいので、今回は辞退します。」

――その瞬間、光景は一気に変わった。



2年後。
娘の運動会。浩二は笑顔でカメラを構えている。
妻とも仲良く手をつなぎ、家族の空気はあたたかい。

(……これだ。これが幸せじゃないか!)

しかし、ふと目の前に映った自分の名刺を見て、浩二の表情が曇る。
「……給料、下がったな……」
周囲の友人たちは海外旅行の話や新築購入の話題で盛り上がる。
「パパ、ディズニーは?」娘が無邪気に問う。
「……今度な。」

浩二は俯いた。
(……結局、これで良かったのか……?)



5 2回目のタイムリープ――「出世優先」の選択

再び光が走る。
同じ場面、昇進を告げられるオフィス。

今度はカケルが耳打ちした。「逆の選択も見てみましょう。」

浩二はうなずき――
「……お受けします。」



2年後。
高級マンション。リビングのテーブルには豪華な食事。
娘の部屋にはピアノや教材が並んでいる。

だが、家には静寂が漂う。
「パパ、今日も帰り遅いの?」娘が冷たい声で言う。
妻も目を合わせず、「私たち、もう限界かも」と告げる。

浩二の胸が締めつけられた。
「……これじゃ、何のために働いてるんだ。」



6 未来を覗く――爺のページ

「――最後は、未来よ。」
爺が分厚い本を開いた。

光の中に映ったのは――5年後の浩二。
そこには、管理職として働きながらも、週末には娘と遊び、妻と笑い合う浩二の姿があった。

「……なんで?」
薫が微笑む。「あなたは“今”で選び直せば、未来を変えられるの。」

浩二は涙をこぼしながら呟いた。
「……俺、やれるんだな。」



7 現実へ――決意

光が消え、書店に戻る。
浩二は大きく息を吸い込み、「……家族も、仕事も、諦めないでみます。」

「ええ、それが正解よ。」薫がにっこりと笑う。
爺も茶を差し出し、「お嬢様、今日も見事で。」

カケルは拳を握った。
(これだ……これが、この相談室の力なんだ。)



8 余韻とシェアの一文

カケルはふと思った。
(後悔って、過去じゃなくて“今”で上書きできるんだ……)

薫が本棚を整えながら微笑む。
「ねえカケル。人は、未来を知ることで“今”を選び直せるのよ。」

その言葉が、胸に深く刺さった。



「過去じゃなく、今で決めよう。」
その一歩が、未来を変える。




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「家庭と仕事、どっちを取る?」あなたならどう選びますか?




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