世界の面白い言語集 34 「時間」という概念がない。永遠の今を生きる~アモンダワ語(Amondawa)
今回は、現代社会に生きる私たちがもっとも逃れられない呪縛「時間」を、まるごと持たない驚異の言語、アモンダワ語(Amondawa)をご紹介します。
時計もカレンダーも持たず、ただ「今」だけを積み重ねていく。そんな彼らの言葉を知ると、私たちの「当たり前」が音を立てて崩れるかもしれません。
「もうこんな時間?」「締め切りまであとわずか……」
そんな焦りに追われる毎日を送っているなら、ブラジルのアマゾン奥地に住むアモンダワ族の暮らしは、まるで別の惑星の話のように聞こえるでしょう。

彼らの使うアモンダワ語には、私たちが人生の軸にしている「時間」という概念そのものが存在しないのです。
1. 1986年に発見された「時間を忘れた人々」
アモンダワ族が外部の世界と初めて接触したのは、1986年のこと。それから約25年後、イギリスのポーツマス大学の研究チームが彼らの言語を精査し、2011年に発表した調査結果は言語学界を震撼させました。
「アモンダワ語には、時間を客観的に捉える仕組みが一切存在しない」

世界中のほぼすべての言語には「時間」という抽象的な概念がありますが、アモンダワ語はその例外だったのです。
2. 辞書に「時間」という単語がない? 徹底した「今」へのこだわり
アモンダワ語の最大の特徴は、時間を表すための語彙が極端に欠落している点にあります。
存在しない単位: 「時間」という単語はもちろん、「週」「月」「年」といった、時間を細かく区切って計測する単位が一つもありません。
時間のメタファー(比喩)がない: 私たちはよく「時間が過ぎる」「週末が近づく」と、時間を空間や動きに例えて話します。しかし、彼らの言葉にはこうした表現もありません。

彼らにとって、あるのは「昼か夜か」「雨季か乾季か」という、目に見える自然のサイクルだけ。時間は「消費して管理するもの」ではなく、「ただ起きている現象」なのです。
3. 「何歳ですか?」は意味不明。名前のバトンタッチで成長を祝う
「時間を測る言葉」がないということは、当然「年齢」という概念もありません。彼らは自分の年齢を数字で数える代わりに、非常にユニークな方法で成長を記録します。
彼らは成長し、人生の新しい段階(子供から大人へ、あるいは親へ)に達するたびに、それまでの名前を捨てて新しい名前を名乗ります。
自分が使わなくなった古い名前は、新しく生まれてきた子供や、その段階に達した年下の親族に引き継がれます。

「私は30歳です」と数字を積み上げるのではなく、「名前というバトン」を次世代に渡していくことで、コミュニティの中での自分の立ち位置を確認する。それがアモンダワ流の人生の歩み方です。
4. 「出来事はあるが、時間はない」――アモンダワ語が教える自由の形
「時間がなくて待ち合わせはどうするの?」と心配になりますが、彼らの思考は極めて実用的です。
「3時間後に会おう」ではなく、「太陽があの木の上に来た時に会おう」というように、全ては具体的な「出来事(イベント)」に紐づいています。

過去への後悔や未来への不安を抱くための「時間の枠組み」が薄いため、彼らは文字通り「今、ここ」の連続を生きている可能性があります。
時計を持たない、最高の贅沢
アモンダワ語を知ると、私たちがどれほど「時計」という目に見えない支配者に、自分の人生を預けているかを痛感させられます。

時間に追われ、数字に一喜一憂する現代社会。たまにはスマホの電源を切り、アモンダワ族のように「太陽の高さ」や「お腹の空き具合」だけで一日を過ごしてみるのも、究極の贅沢かもしれません。
いかがだったでしょうか?
このブログでは他にも世界の面白い言語を紹介しているので、ぜひご覧ください。
