「オマカセ」か「オコノミ」か
column vol.1031
今、韓国のMZ世代(ミレニアム世代+Z世代)を中心に「オマカセ」がブームになっているそうです。
〈共同通信社 / 2023年6月4日〉
背景には、同国が日本のGDPと同水準になっており、値段の高いオマカセが富の象徴になっていることが挙げられます。
しかも、興味深いのが、高級鮨店はもちろんのこと、居酒屋、レストランなどにも拡大していること。
最近ではカフェにもオマカセがあるそうですよ…(驚)
コーヒーのオマカセはいろいろな種類のコーヒーをゆっくりと飲ませるスタイル。
ちなみにオマカセは日本語のまま使われていて、コーヒーのオマカセは「コマカセ」という名前で呼ばれているのです(コはコーヒーの「コ」です)。
紅茶の場合は「ティマカセ」。
焼き肉店では牛肉のオマカセになるのですが、「牛」は韓国語で「ウ」と読むので「ウマカセ」となります。
何だか、ウマそうですね(笑)
他にも、韓国の伝統料理である「スンデ」(腸詰め)にまでオマカセがあるのです。
お店本位のオマカセが続出
とはいえ、値段が張るオマカセはブームといえど高嶺の花。
それを表すような調査結果もあります。
韓国のソーシャルマッチングアプリ「正午のデート」が利用者1万2千人を対象に行ったアンケートで、「初めてのデートで相手が『おまかせ』料理の店で会うことを提案したら、どうするのか」という質問をしたところ…
【男性】
「行って割り勘にする」…31%
「行って自分が払う」…28%
「他のメニューを提案する」…21%
+その他
【女性】
「他のメニューを提案する」…38%
「行って割り勘にする」…27%
「デートを断る」…15%
+その他
という結果になり、やはり初めてのデートでオマカセはハードルが高いようです。
ちなみに「初めてのデートで食事代を払う場合、最大いくらまで使えるか?」という質問には男女とも「5万ウォン(約5千円)」がトップ(男性42%、女性43%)。
高級鮨店などでは、場合によって数10万ウォン(数万円)もする高いものもありますが、居酒屋、カフェなどカテゴリーによって金額はマチマチ。
しかし、いずれにせよ「割高」になることは多いわけです。
…そして今、同国で批判を集めているのが、それまでの「コース」を「オマカセ」と名前だけ変えて値上げするパターンがあるとのこと…
…恐らく、ここにはそうしてしまうお店の台所事情もあるのかもしれません…
ビジネスの基本は顧客に誠実であること、顧客満足にあるということは、多くの経営者は分かっているはずです(…と信じたい…)
ただ、苦しくなるほどお店(自分)本位になってしまうのは人の常です…
…とはいえ、お店(自分)本位で短期的に利益を上げたとしても、信頼を失えば結果的には先細りになってしまう…
ここは思案のしどころですね…
「オコノミ」に戻す天才鮨職人
…と、このような話をしてしまうと…、オマカセにネガティブなイメージが付いてしまいそうですので…、ここで一旦フォローしたいと思います。
オマカセ自体にはお客さんにとってのメリットもありまして、天才鮨職人と評される「すし匠」の中澤圭二さんも
(オコノミでやっていた場合)コハダならコハダばかり食べるなんていう人もいたわけです。でも、それだと金額がわからないというデメリットがある。逆にオマカセにして金額が決まり、それなりにいろいろネタが出てくればお客さんからすればお得感がある。
と、その良さを語っていらっしゃいます。
〈現代ビジネス / 2023年5月31日〉
もっと言えば、「オマカセはロスが出ないから美味しいものを提供できる」ということが最大のメリット。
魚が高騰している昨今は、なおさらというところもあるでしょう。
中澤さんも四ッ谷で「すし匠」を開いた平成の初め頃は、接待需要が圧倒的に多かったこともあり、オマカセスタイルに合理性を感じたそうです。
そんなこともあり、一時は
スタート時間が全員一緒、出てくるものも全部一緒で並んで食べる
という究極のオマカセの形になったこともあったとのこと。
しかし、次第にそれは「行き過ぎなんじゃないか」と感じるようになったそうです。
私は、オコノミの楽しさ、お客さんの自由度というのを上げたい、昔のスタイルに少しだけ戻したいと思っている。
そうして、オコノミへの回帰を目指したのです。
顧客本位で判断できているのか?
それは「オマカセを全てのお客さんが本当に楽しめているのか?」という自分への問いかけから始まっています。
お客さんは一人一人食べる速度も違えば、間(ま)も違う。
結局、「オマカセはどこかで店の段取り、店都合になっている」と中澤さんは感じたのです。
はいこのネタの次はコレ、次はこれと一律に出すのはやはり何かおかしい。年齢も違えば、食べる量だって違うし、お酒も入っているわけです。若い人はたくさん食べられるからいいけど、でも年寄りはそのリズムについていけないから、来なくなっちゃう。カウンターの良さは、鮨職人が塩梅を見ながら、お客さんとコミュニケーションをとり、間合いをとれること。好みに合わせて握り、食べていただけるのが、カウンターなんです。その余地を残しておきたいというのが私の思いなんです。
まさに「顧客本位」に考えた結論です。
そこで、オマカセでスタートして、途中からオコノミを聞く。
オマカセの良いところと、オコノミの良いところを掛け合わせたハイブリッドスタイルです。
7月にニューヨーク・マンハッタンで新店を開くそうなのですが、そのお店ではオマカセ6割、オコノミ4割でやっていきたいとのこと。
やはり、超天才と呼ばれる職人さんは、技術だけではなくお客さんを慮る想像力の天才でもあると改めて感じます。
まさにお客さんへの想像力はAI時代に果たすべき人間の役割の1つでもあります。
ここに、お客さんに長年支持されるお店づくりの真髄を感じます。
先ほどの話に戻りますが、飲食店、職人の世界だけではなく、全ての業種に言えることですが、困った時ほど自社本位で物事を考えてしまいがちです。
そうしてドツボにハマっていく…(汗)
苦しい時ほど、クライアント本位、お客さん本位で解決策を考えていけると明日が開ける
と改めて感じた中澤さんの哲学です。
そんな素晴らしい話に刺激を受けながら、私もマーケターとして日々の業務に励んでいきたいと思います😊
