「伝える」よりも「伝わる」
vol.1537
日々、マーケティングを行っていても、人と対話していても、「伝わる」ことの難しさを感じます。
ときに何度も伝えても伝わらないこともある…
例えば、マーケティングなら、ちゃんと特長や他社より優れた点を訴求しているはずなのに、ターゲットの反応が見られない…
これは、一体なぜなのか…?
実は、そこには「視点のギャップ」が存在することが多いのです。
「あなた視点」で考える
視点のギャップとは、一人称と二人称の違いです。
つまり、「私の視点」と「あなたの視点」の間にギャップが存在しているということです。
例えば、車を買う際、1000馬力(100万円)と1200馬力(150万円)だったら、皆さん、どちらを購入するでしょうか?
恐らく、即座に回答できた方は、車好きか、スペックへの理解が高いはずで、大抵の方は、2つの車の馬力の違いと、それに伴う値段の違いをすぐさま判断することはできないと思います。
つまり、業界では当たり前の性能も、一般の人にはわからない可能性は高い。
わからなければ、その馬力の凄さは伝わらないわけです。
ソフトバンクグループの代表取締役会長兼社長である孫正義さんは、かつて人型ロボット「Pepper」の発表会で1つの逸話を残しています。
それは、Pepperを
「世界初の、感情を持ったパーソナルロボット」
として発表しただけに留まり、ほどんど「ロボットが感情を持てるようになった技術的要因」を話さなかったのです。
〈PRESIDENT Online / 2025年7月30日〉
恐らく、技術的要因を語ったところで、専門家は納得するかもしれませんが、一般の人には理解できない。
それよりも、
「未来をどう変えるか」
「人々の生活をどう豊かにするか」
といったビジョン先行型で語り、夢を広げることを優先したわけです。
結果として、社会に与えるインパクトは大きかった。
ちなみに、孫さんは自社製品・サービスをチェックする際は、最新のスマホを使わないとのこと。
これは、最新機種ゆえにユーザー視点での使いやすさの欠如や操作性の違いを体感できなくなることを避けるためで
製品やサービスが本当にユーザーにとって使いやすいか
を確かめるための工夫なのです。
このように徹底的に「あなた視点」(ユーザー視点)に立つから、伝えたいことが、しっかりと伝わるようになる。
まさに、マーケティングのお手本です😊
こだわり抜いた品が売れないワケ
優れたマーケティングとは、相手が「知らない状態」を前提にしています。
よく作り手がこだわりに、こだわった商品が売れないという話を耳にしますが、大抵は消費者にそのこだわりが「伝わっているだろう」ということが前提になっている。
さらに言えば、熱意と技術だけでは付加価値を感じてもらえないケースもあるでしょう。
それは、フォーブスの【量より質の時代。では「高い質」に欠かせない要素とは】という記事からも伝わってきます。
〈Forbes JAPAN / 2025年8月21日〉
この記事では、ラグジュリーの本質は職人技や製品品質だけでなく、地域や空間、文化、社会全体との関係性まで含めて考える必要があると述べられています。
つまり、作り手の熱意や技術だけだと付加価値の高い商品にはならないということです。
そのモノが生産される地域社会や文化的背景、実際に使われるシーンまでを複合的に掛け合わせて初めてラグジュアリーになる。
イタリアには「テリトーリオ」という言葉があるのですが、これは都市・農村のつながりや文化、自然など広い視点で空間や価値を捉える概念であり、ラグジュリーを考える際にもこうした全体性が重要だとされているのです。
ここを見落としてしまうと、一人称と二人称の視点のギャップが存在してしまう。
価値への評価を深く理解することも、コミュニケーションを行う上でポイントになると覚えておきたいところです🤔
顧客の利点とは何か?
車のエンジンに話を戻しますと、より深めたいのが顧客の利点についての理解です。
利点と聞くと「セールスポイント」を思い浮かべる方が多いと思いますが、実はここにも落とし穴があります。
TikTokで大人気の「営業の乾」ことセールスの達人・乾哲也さんは、利点とは商品・サービスの「特徴」や「強み」(セールスポイント)ではなく、その特徴が顧客にどんなベネフィットをもたらすかが重要だと指摘しているのです。
〈集英社オンライン / 2025年9月9日〉
つまり、製品やサービスを使うことで得られる「価値」や「恩恵」がカギということ。
もう少し言えば、それを手にすることで、どんな喜びがあるかということです。
車のエンジンでいえば、1000馬力よりも1200馬力の方がスピードが出やすいわけですが、一方で制限速度は決まっているわけですし、そこにベネフィットを感じない方も多いでしょう。
それよりも、加速性能が良くなることで、運転が楽になり、長時間のドライブでストレスが減ると言った方が、より利点を感じやすいかもしれません。
乾さんは、このベネフィットを意識したコミュニケーション術を「利点話法」と名付けているのですが、不動産を例にこのように説明されています。
「不動産であれば、『この物件、駅チカでお勧めです』で終わってしまうのではなく、『お客さまの勤務先に直結の路線にすぐ乗れます。だから、お客さまも通勤が楽ですよ』までが利点話法です」。
このように、相手にとってどこが喜びポイントなのかを探っていく。
それが営業ならばヒアリングですし、マーケティングならリサーチになるわけです。
つまり、「伝わる」には、それだけ「聞く」ということが必要になる。
このように、いかに一人称の視点を二人称の視点に変えるかが肝要というわけです。
いずれにせよ、相手を知ることが何よりも重要になる。
…と、自分にも改めて言い聞かせておきたいところです…😅
本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!
