広がる共創イノベーション
vol.1517
現在、とある仕事で高輪ゲートウェイシティにある「LiSH」と打合せを重ねています。
LiSHの正式名称は「TAKANAWA GATEWAY Link Scholarsʼ Hub(リッシュ)」で、JR東日本が主導して今年5月に本格的に運営開始した、最先端の知や技術が集まるビジネス創造・共創拠点です。
100社を超えるスタートアップや企業、アカデミアなど、多様なバックグラウンドを持つ人々が入居・参画し、コラボレーションやオープンイノベーションが活発に行われています。
そして、事実は私もとある団体の企業たちとの共創を図ろうとしています。
LiSHを通して改めて感じるのは、日本には魅力的なスタートアップ企業が多いということ。
そうした企業と、既存の企業が掛け合わさることで、まだまだ面白い展開は見られるはず。
実際、ビジネスマッチングの場は増えています。
大阪発の新たな共創拠点
例えば、大阪にあるNTT西日本が運営するオープンイノベーション施設「QUINTBRIDGE(クイントブリッジ)(QB)」です。
2022年に本格的に運用開始しましたが、開業から3年間で会員は個人約2万5千人、法人約1900社・団体に上っています。
〈産経新聞 / 2025年8月14日〉
こちらは、社会課題解決に自らのアイデアやスキルを役立てたい個人や法人が会員登録、パートナーを見つけてビジネスを「共創」する施設。
マッチングイベントには地域の課題が持ち込まれ、企業との共創が続々と生まれています。
カフェとテーブル席があり、仕切りのない1階は「志を持つ仲間、新しいアイデアと出会う場」。
2階は「アイデア実現の場」でミーティングスペースで個室もある。
そして、3階は法人会員専用オフィスがあり、資金調達のプロも控えています。
会員は入会時、会社名などの他に、マッチングに必要な基礎データとして「興味関心カテゴリ」(地域創生、テクノロジー、金融など14種類から選択)、「保有スキル」(IT、マーケティング、経理など11種類から選択)を登録。
声をかけやすくするツールとして、会員には着席時「自己紹介ボード」と名づけたカードに「つながりたいヒト・モノ・コト」を書き、卓上に置くこともできます。
また、「共創ポスト」と呼ぶキャビネットに課題を書いた紙を貼ると、見た人が回答を投函してくれます。
さらに希望すれば、普段から利用者と会話するなどして情報を収集している「コミュニケーター」と呼ばれる仲人役が仲介してくれるのです。
そうした仕組みをつくり、企業、学生、自治体などが立場にとらわれず交流し、新しい価値を創造するオープンイノベーションの場となっている。
異文化交流が持つ魅力を感じます。
共創マッチングの課題
ほかにも、ソニーグループの事業マッチングのプラットフォーム「バウンダリー・スパニング・サービス(BSS)」も、新たな可能性を示しています。
〈日本経済新聞 / 2025年8月18日〉
サービスに登録した事業者の数は600を超え、これまでに接点がなかった企業同士が出会う環境が整い始めているのです。
こちらも、NTT西日本の「QUINTBRIDGE」と同様、「人工知能(AI)」や「研究開発」、「知財」といったキーワードを入力したり選択したりすることで、必要な人材や企業を検索できます。
そして、気になる企業に連絡し、相手が承認すればその後はメールなどで個別にやりとりできるのですが、登録者間のやりとりの件数は3000件を超えているそうです。
ちなみに、そのうちの1社であるバンダイナムコホールディングス傘下の「バンダイナムコテクニカ」は、BSSで訪日外国人向け通訳ガイド紹介事業のシステムの開発委託先を探したところ、候補が十数社見つかったとのこと。
このマッチングサービスは、ソニーG内の事業開発を促進する組織「ソニーアクセラレーションプラットフォーム(SAP)」が始めたものなのですが、SAPを立ち上げたソニーGの小田島伸至さんは、800件を超える案件に関わる中で、イノベーションに必要な要素として
「圧倒的に多くの組織へのアクセス権があること」
だと気付いたそうです。
やはり、いかに接点をつくるかが重要ということですね。
一方で課題もあり、これまで接点のなかった相手と事業を進めることに対する財務やガバナンスの面で不安を払拭していく必要があるとも仰っています。
これができないと、非上場企業や無名の新興企業とのマッチング比率が低くくなってしまう…
また、根本的な企業のマインドの変化も必要になるでしょう。
早稲田大学商学学術院の清水洋教授は
「アメリカでは、産業・経済単位でイノベーションの分業がなされています。リスクが高い技術開発をスタートアップが行い、そこで競争力が出てきた事業を大企業が担う。そして、これらの技術開発の基盤となる基礎研究は、国が大学やスタートアップに資金を拠出して行われます」
と、スタートアップを巻き込みながらイノベーションするアメリカと、企業単独でしようする日本の違いを指摘しています。
〈BUSINESS INSIDER JAPAN / 2025年7月31日〉
もちろん、日米でのビジネスや制度の違いや、どちらが良い悪いではないということを前提にしての話なのですが、企業が長く存続すればするほど硬直化が見られるというのはアメリカも同じとのこと。
それでも、アメリカがスタートアップの力を借りるのは、市場での新陳代謝が激しいことが大きい。
日本でも硬直化を脱するためには、オープンな関係づくりが必要なのです。
異質との共創を体質できるのか
もちろん、この国でも「ディープテック」と呼ばれる研究開発型スタートアップが、大企業が担えないイノベーションの種を生み出す存在になりつつあります。
こうしたスタートアップが増えていくことで、オープンイノベーションや日本の大企業との連携を通じて、新しい事業を生み出していく可能性は大いにある。
清水さんもスタートアップの数はもっとあっても良いと語った上で、
「事業の種はたくさんあると思いますが、それをビジネスにできる経営人材の不足がボトルネックになっている。現状、国内で成功例とされるスタートアップでも、プロの経営人材に任せれば、さらにグローバルなレベルまで事業が拡大できる可能性もあります」
と仰っています。
さらに、大企業がスタートアップと連携する上では、すぐに事業化につながるアイデア「以外」にもしっかりと目を向けておくことが必要だとコメント。
「以前、スタートアップとの連携で急成長したアメリカの企業を取材した際、いかに良いアイデアの最初の相談窓口になるかが大事、と語っていました。自社に全く関係のないアイデアも含めて幅広く相談を受け続けることで、いざ自社事業と相性が良いアイデアが出てきたときに1番最初の相談窓口になれる可能性が高くなる。
こういったマインドセットは、日本企業がオープンイノベーションや、アクセラレーターに取り組む際の参考になるのではないでしょうか」。
とても当たり前のことですが、自社の利益だけではなく、共創する企業とともに成長するという考えが必要です。
清水さんは、研究開発や事業の領域を戦略的に変革した企業の成功例として、清水教授は日立やソニーを挙げていらっしゃいますが、ソニーについては先ほどのBSSを見れば分かる通り、自社でマッチングプラットフォームを立ち上げ、さらには自社以外の企業の発展も考え、共存共栄を図っています。
内向きの経営から、外向き経営を志し、内外一体の経営に変えていく。
そうしたマインドを持つ企業がイノベーション企業として成功していくのかもしれません🤔
さらには、そうした企業に株主の期待が集まるような社会になっていくと、この国はもっと面白くなっていくような気がしています。
個人的にも、LiSHを通じて大企業とスタートアップ企業の媒介として、さまざまな試みを行っていきたいと思う今日この頃です。
本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!
