なぜバフェットは商社株を売らないのか。アマゾン全売却の裏で輝きを増す伊藤忠商事(8001)の絶対的な強さ
導入:アマゾン全売却の衝撃と、商社株が手放されなかった理由
2026年5月、米バークシャー・ハサウェイの最新の保有銘柄報告が市場を駆け巡った。前年末にCEOを退いたバフェット氏に代わってグレッグ・アベル氏が指揮を執った最初の四半期で、長らく保有してきたアマゾン株が全株売却されたことが報道で明らかになった。同じタイミングでビザ、マスターカード、ドミノ・ピザも姿を消し、開示義務のある保有銘柄数は前年末の39から26へ大きく絞り込まれた。米国の投資メディアは「アベル流の選別が始まった」と一斉に報じている。
ところがその嵐の中で、日本の総合商社株は手つかずだった。米SECへの開示対象には含まれないものの、伊藤忠、三菱商事、三井物産、住友商事、丸紅の5社は、2025年末時点で軒並み保有比率10%前後に達していることが、バークシャー側の株主報告書で明らかにされている。新CEOアベル氏は初の株主への手紙で、商社株を米国の主要企業と同等に重要な存在と位置づけたと各種報道は伝える。「米SEC開示の絞り込み」と「日本商社の据え置き」を並べて読むと、バークシャーが今、何を残し、何を切ったかの輪郭が浮かび上がってくる。
その中でも、独特の輝きを放つのが伊藤忠商事(8001)である。総合商社といえば資源で儲ける会社という固定観念を覆し、ファミリーマートを中核とする生活消費領域で利益の大半を稼ぐ。資源価格の波に揺さぶられにくく、日々の暮らしの中から利益を吸い上げる構造を持つ。この記事では、伊藤忠がなぜ「商社らしくない商社」として強いのか、何が崩れるとその強さが揺らぐのかを、構造から丁寧にほどいていく。最大のリスクは、皮肉なことに、この川下戦略を支えてきた消費そのものが構造変化を起こすことにある。
読者への約束
この記事を最後まで読むと、伊藤忠商事という会社を見るときの目線が一段深くなる。具体的には次のことが立体的に見えてくる。
伊藤忠が他の総合商社と「勝ち方」がどう違うのか、その構造的な理由
非資源・川下重視という戦略が機能するための条件と、その条件が崩れる場面
バークシャーが長期保有を続けるという事実を、自分の投資判断にどう取り込むかの考え方
決算のたびに見返すべき監視ポイントと、確認すべき一次情報の方向性
数字を追いかけて疲れる読み方ではなく、ビジネスの骨格を理解して、決算が出るたびに自分でその意味を解釈できる状態を目指す。読み終わったあとは、ブックマークしておいて、四半期ごとに該当箇所を見返す使い方をしてほしい。
企業概要:商社の定義を書き換えてきた会社
会社の輪郭(ひとことで)
伊藤忠商事は、グローバルな調達・取引のネットワークを土台に置きながらも、利益の大半を消費者に近い生活消費領域から稼ぐ総合商社である。「資源を掘り、運び、売る」という従来の商社像から最も遠い場所に立ちつつ、商社という組織形態を保ったまま事業ポートフォリオを変容させてきた点に、この会社の独自性がある。利益の出方が、原油や鉄鉱石の相場よりも、コンビニの来店客数やブランド衣料の売れ行きに近いところで形作られている、と言い換えてもよい。
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