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なぜ半導体株なのに話題にならない?世界シェア9割「継手」の日本ピラー工業(6490)という静かな独占者

半導体という言葉を聞くと、多くの人は最先端のチップを作る巨大メーカーや、露光装置のような花形の製造装置を思い浮かべる。ところが、そのチップが生まれる工場の裏側で、目立たないまま世界の首根っこを押さえている日本企業がある。株式会社PILLAR、旧社名を日本ピラー工業という。会社が発信する資料や複数の報道によれば、この会社は半導体の洗浄装置に使うフッ素樹脂製の「継手(つぎて)」で、世界シェアの9割超を握っているとされる。継手とは、配管と配管をつなぐ小さな部品のことだ。地味の極みのような製品で、事実上の独占に近い地位を築いている。

武器は「流体の漏れを制御する技術」だと会社は説明している。半導体を作る工程では、硫酸や塩酸のような劇薬を高温で流す。ここで一滴でも漏れれば、製品は全滅し、下手をすれば人命にも関わる。だからこそ「絶対に漏れない」という当たり前が、途方もない技術の塊になる。金属の配管では微量の金属イオンが溶け出してチップの品質を損なうため、扱いの難しいフッ素樹脂が選ばれる。その難素材を精密に加工し、独自の封止構造で漏れを止める。この一点に、創業から100年をかけた蓄積が凝縮されている。

ただし、好調に見える会社ほど、崩れるとしたらどこからかを先に考えておきたい。この会社の最大のリスクは、その強さの源泉とほぼ同じ場所にある。売上の主力が半導体という激しい波を持つ市場に集中していること、そしてその中でも特定用途の継手に稼ぐ力が偏っていることだ。独占は美しいが、独占しているがゆえに「顧客が自前で作り始める」「市況の谷で受注が一気に細る」といった揺れを、そのまま業績で受け止めることになる。この記事では、その光と影を、できるだけ数字に頼らず構造として解きほぐしていく。


この記事を読むと分かること

この記事は、決算のたびに見返せる「一枚の地図」として使えるように書いた。読み終えたとき、次のような観点で自分なりに判断できる状態を目指している。

  • この会社がどうやって儲けているのか、その勝ち方の骨格

  • 独占的な地位が「なぜ」守られ、「何が起きると」崩れるのか

  • 半導体の波と、それを和らげる産業機器という二本目の足のバランス

  • 成長シナリオが本物かどうかを見極めるために、どこを見ればいいのか

  • 好調時ほど隠れやすいリスクの芽と、それを早めに察知するための監視ポイント

具体的な株価水準や目標株価には踏み込まない。代わりに、決算資料やIR資料のどこを、どんな視点で読めばいいのかという「見方」を持ち帰ってもらうことを狙っている。


企業概要

一言でいうと、どんな会社か

株式会社PILLARは、流体の「漏れ」を止める部品を作り、それを半導体産業と重厚長大な産業インフラの両方に供給している会社だ。誰に何を売っているかを一文にすれば、半導体の製造装置メーカーには超純水や薬液を漏らさず流すためのフッ素樹脂部品を、石油精製や化学プラント、発電所には回転する機械や配管からの漏れを止めるシール部品を、それぞれ提供している。派手さはないが、どちらも「止まると大事故」という領域を握っているのが特徴だ。

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