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居酒屋の“出店ラッシュ”も“閉店ラッシュ”も、この会社の利益になる── テンポス・ホールディングス(2751)という盲点


導入:潰れる店も、生まれる店も、同じ会社に流れ込む

繁華街の一角で、長く続いた居酒屋がシャッターを下ろす。その数か月後、同じ区画に別のオーナーが新しい店を構える。閉店と開店、正反対に見える二つの出来事の裏側で、じつは同じ一社が両方から利益を得ている。閉じる店からは厨房機器を買い取り、開く店にはそれを整備して安く売る。しかもそれだけにとどまらず、閉店の後片づけから開業の資金調達まで、飲食店の一生に寄り添って稼ぐ。この珍しい商売を全国規模でやっているのが、東京都大田区に本社を置くテンポス・ホールディングス(証券コード2751)である。会社資料や信頼できる報道によれば、同社は業務用中古厨房機器の買取・販売で国内トップシェアを長く保ってきた。


この会社の武器を一言でいえば、「飲食店の栄枯盛衰そのものを収益に変える仕組み」にある。中古厨房機器は、大型で重く、買い取った後に修理して再び売れる状態に戻す手間がかかる。だからこそ、これを組織的に全国展開しようとする企業はほとんど現れなかった。同社はその“面倒くささ”に正面から挑み、全国の店舗網と自社の修理再生拠点を武器に、参入障壁を自ら築いてきた。飲食店が次々に生まれ、そして消えていく限り、買い取る商品も、それを求める新規開業者も、途切れることがない。景気の波に対して逆張り的に効く、独特の“全天候型”のビジネスだと言える。

一方で、好調に見えても崩れうるポイントもはっきりしている。第一に、この会社の株価は「割安で放置された株」ではない。株価純資産倍率(PBR、純資産に対する株価の水準。以下PBR)でみて帳簿価値を大きく上回り、市場はすでに一定の成長を織り込んでいる。第二に、同社は潤沢な資金を、皮肉にも“飲食店経営そのもの”へと次々に投じている。ステーキチェーンや居酒屋チェーンを買収し、本来は距離を置けていたはずの飲食店の経営リスクを、自ら抱え込みつつある。第三に、創業者である森下篤史氏への依存が極めて濃く、後継者はまだ定まっていない。潰れる店からも生まれる店からも稼ぐ美しい構造の裏に、これらの“盲点”が横たわっている。本記事は、その両面を事業構造から資本政策まで分解して読み解いていく。

この記事を読むと分かること

この記事は、決算のたびに見返せる「観測地点のセット」を持ち帰ってもらうことを狙って書いている。細かな数字の暗記ではなく、どこを見れば同社の強さと脆さが判断できるか、その骨格を渡したい。

  • 事業の勝ち方の骨格:中古厨房機器のリサイクルを核に、閉店支援と開業支援の両輪で「飲食店の一生」を丸ごと押さえる構造が、どう噛み合って利益を生んでいるのか。

  • 伸びるために満たすべき条件:本業のリサイクルが盤石なこの会社が、それでも企業価値を高めるために、飲食店経営への進出という賭けをどこまで成功させる必要があるのか。

  • 注意すべきリスクの種類:飲食市場そのものの縮小、創業者への一極集中、そして「本業とは性格の違う飲食事業を取り込むことで、逆張りの強みが薄まる」という自己矛盾のリスク。

  • 確認すべき指標のタイプ:売上の絶対額よりも、物販事業の利益率、飲食事業の採算、買取件数の伸び、そして資本の使い方と後継者育成の進捗。数字そのものより「その数字がどちらに動いているか」を見る視点。


企業概要:この会社の輪郭をつかむ

この章の狙いは、以降の分析を読むための土台づくりにある。テンポス・ホールディングスが「どこから来て、いま何を売り、誰に統治されている会社なのか」を、輪郭としてまず頭に入れておきたい。

会社の輪郭を一文でいうと

テンポス・ホールディングスは、飲食店向けの中古・新品の厨房機器を全国の店舗とインターネットで販売しつつ、開業支援から閉店支援までを丸ごと請け負い、さらに自らも飲食店を経営する、外食産業の裏方に立つ総合企業である。事業の実体は、持株会社の傘下にある中核会社テンポスバスターズと、ステーキチェーンのあさくまをはじめとする複数のグループ会社が担う。会社の位置づけとしては、単なる厨房機器の販売店ではなく、「飲食店の一生に伴走する会社」を志向している点が、後述の戦略を理解するうえで効いてくる。

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