詩 「復讐」 千葉 貴史 第62回宮城県芸術祭第10回文芸作品公募 詩 一般の部 最優秀賞受賞作品
祈りを灯す小舟に揺られ囀りの間で感傷を強く信じていた。拘るから祟られると口移しで気付かせる暗号を愛していた。孤独を煽らば日々は盲目のララバイ。握られた昔しか私はいらない。止めを刺された今にしか私はいない。溢れ滾る私の生存の泉で後ろ指の精霊が仰る。夢に顕れた秩序とは熾烈な抽象画。朝霧の螢が迷い子を隠し無償の遺憾に献ずる感銘の叡知を謳っている。欺瞞と敬虔に追われながら逆境を踊る。寝静まる心の檻で聴こえた畏敬の沈黙で躯を洗う。研く為に傷を入れると人はどうなるかを私らは試されている。女々しい嗜好に縋る暴かれた火の魂に一本の煙草をくれ。焦燥の焦点を引き摺れば解るだろう。辛苦を求めて産まれ落ちたと。糸は糸を呼び結びつける所縁と喩えを扱き使う。喪え。楽になるだろう。貪る信号機として朱く憚るがいい。凡てに面会すべく平伏した無意識のモンタージュで己を書いている。悪阻の憶測を諭す真に合掌する。柩を拐う理は砂状の警句で抉られた宿命である。あの日から壊れぬ様に護られている。ずぶ濡れの因果律に打ち抜かれ朽ち果てた私の痛手はぼろ儲けだった。サバイバーの路上の咽頭で暮らす無形の鬼を崇拝していた。蟠りの深入りで躓かぬ玄人の言霊。生きとし生ける者よ。荒れ狂う大海原の神髄で大いに転べ。去勢された血路のデモテープを聴いて育った私の螺を回している。儀式として偲んだ御手洗いとは反芻の聖。近親の弱さを慈しむ影踏みを継いで私は薫る。道ならば無に無を悟る無が有ればいい。墓参で穢れを取るといい。無敗で尋ねられた蝋燭の悔恨で君を庇った。戯曲の散財に囚われた抑揚の無事を司る私の吃音とは峠。蠍座の善行を積んだ不問の糧で限られた芝居。情ならば脊髄の性分で買われた稽古に擬態する無惨な楽園。礼節とは如雨露に棲める価を自己防衛する金魚売りの謙抑。列べられた過酷な位牌に取り囲まれた君の過去の一滴を私は忘れない。色で畏まる泪に象られ呑み干す帰還よ。世観の寛解を覚悟したまえ。向こう側の岸壁では拗らせた寂寥の不安定が剥き出しの情緒を振り絞り雨を降らせている。出入りする扉の罪を贖える喝采が点滅している。血統の遡上で立ち直る無限に照らされる希望に敬服せよ。ポラロイドの哀歌を慎んで断るがいい。紅く彫らば長引く命であると生前戒名の一行詩が告白する。蟻地獄で日の出を求め曝され探された半生だったと認知する万華鏡の海馬で水遊びしている。文明の享楽の局部で濁った自業の汚泥で咲き誇る蓮の花を為す復讐が私の人生の目的である。美醜を映す鑑の境地には生涯上れない。裁かれた地蔵の頭を撫で宥め確認し振り返る癖のある君は羞恥心を翻訳し傘を開いて再会を誓い旅に出るだろう。俯瞰する団扇で奏でられた本能の玉砕が私の災いの涯で木霊していた。
千葉 貴史
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