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【SF小説体裁】 ⚡️Forbidden|フォービドゥン ―或る恒点観測員の報告書― Case 01. 「博物館の『主』」

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地球、日本の東北某所。


このエリアの春はまだ暖かいとは言えず、
私が生まれたゼド星系第5惑星ノギリア
近い冷気を含んでいる。


私は、鼻から少し落ちかけた
認識阻害フィルター(メガネ)」をかけ直すと、
スーツの襟を正した。



身長161.5センチ、眠そうな目の、
猫背気味で「平凡な男性」。


地球人からは20代とも、30代とも、
40代とも見える、極めて「平均的な容姿」。



私に寝癖を直す習慣がないのは、
グレイ型種族の成体に「頭髪」を
刈り込む古くからの慣習がある
ため
なので仕方ない。


この姿が、地球におけるカモフラージュ。
「恒点観測員043号」、
グレイ=ニートゥ=ヒマジンの姿だ。


手にした
書籍型人工知能格納デバイス(スマートホン)
の中では、
論理制御知性体J.A.C.Oシステム/
通称:「ジャコ」が、
周囲の目には見えない微弱な電波を
絶え間なくスキャンしている。


『告。管理者ヒマジン、
この施設の内包する**エネルギー溜まり**……。
ただの**歴史資料館**ではないようデス。』


スマホが通知した波形は、
確かに他のエリアのそれとは違う
ノイズ」を感知していた。

私は目の前の博物館を見上げる。


「一見して平凡な施設のようだがね……」


まずは入り口の券売機で
「市外に住む人」のボタンを押し、
正規のルートで館内に潜入するとしよう。



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そこには、地球人が積み上げてきた
時間の残響」があった。



縄文土器の破片、貝塚から出土した骨、
そして近代の農機具。


緻密に再現された最古の情景から、
地球が重ねてきた叡智の輪郭をなぞるように、
観測し慣れた近代文化へと歩みを進める。

まさに地球の歴史をたどる「時間旅行」だ。


展示物の配置からは、歴史のナビゲーター達が
人々へ伝えたい「この惑星の歩み」への想いが
感じられる。


過去から未来へと歩みを進めながら、
次のエリアの表示を探す。

階段を下っていたとき、
私は「それ」を見つけた。


「……『一.五階』?」


2階から1階へと続く踊り場。
壁に掲示されているフロアマップには
存在しない、古びた木製の引き戸。

その横に、表札のように堂々と、
墨でしたためた手書きのようなフォントで
記されている。


「……ジャコ。この扉、
一般客には見えているのかな?」


『否。日本上空に待機する宇宙船から
感知する座標上には存在を確定し得まセン。

理論上、地球人あるいは知的生命体の
認識外にあるもの
と思われマス。』


私は少し迷いながら「戸口」に手をかけた。
宇宙船の観測範囲を超えると、
帰り道」を見失う可能性がある。


いらっしゃい。


脳の奥に響くような、
それでいて静かな年配の男性の声。

閉ざされた「戸口」の奥から聞こえた
声からは、不思議と敵意は感じられない


「……お邪魔します。」


日本の慣習にならい、
私は戸口を静かに開けることにした。



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戸口の先は、日本家屋のような構造が
広がっている。上がり框、障子、木製の廊下。


さあ、奥へ入ってござい。


声の主に導かれるように、
私は玄関で靴を揃え直した。


障子の奥は、心地よいくらいの
静寂が支配する和室。

壁一面に古い巻物や文献が積み上げられ、
中央には小さなちゃぶ台とお茶菓子。


そこで、平均的な地球人と比較すると
かなり後頭部が長い高齢男性
が、
悠然とお茶を啜りながら座っていた。


「……こんにちは、
お招きいただき感謝します。」


「はい、おばんでがす。
……あんた、ずいぶん遠くから
来たようだねえ。」


男性がそっと見つめる。

私の擬態も、背後の銀河系すらも
見透かしているような眼差し。

深淵をのぞくような感覚に、
無意識に背筋が伸びる。


「驚いた。私の『認識阻害』を、
地球人が無効化するとは。
あなたはここの職員ですか?」


「職員?……まぁ、そんなもんだ。
肩書きは『理事長』ってことにして歩いとるがね。
ここでは『主田(ヌシダ)』で通ってる。」


少し笑って答えた主田氏は、
私から目をそらさずに続けた。

 

「あんた、人間様じゃあないね。
だが、この『戸口』に触れた時点で、
われわれの『同類』だ。

お天道様の照らすところには居場所のない、
はぐれ者の仲間だね。」


「……我々は観測員です。
あなた方と敵対するつもりはありません。」


「わかっとるよ。
玄関口で靴をそろえる敵がいるもんかね。」


ふと主田氏の隣に目をやると、
私の観測記録では分類できない小さな、
毛むくじゃらの「何か」が、
子ども向けの妖怪図鑑のページを
熱心にめくっている。


「われわれも生き残るのに必死でね。
人間様に『忘れられる』のが、一番の死だ。」


主田氏は、ちゃぶ台にもう一つ
湯飲みを置きお茶を注いだ。


「どうかね。観測員殿。
お互い『人間ならざる者』同士、
少し話を聞いてってけさい?」


私は勧められるまま、
ちゃぶ台の前に腰掛けた。

湯飲みからは、猫舌の私には
少々熱そうな湯気がたっている。



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私は湯呑みに触れた指で、
お茶の温度を感知しながら、
一口だけ茶を啜った。……まだ熱い。


「良いお茶です。主田さん、
あなたは、この公的施設の
『一.五階』にお住まいで?」


主田氏は、傍らの「毛むくじゃらの何か」を
撫でながら、施設の構造上存在するはずのない
「窓」
の外を見た。


「この場所はね、観測員殿。
人間様が『理屈』で整理しきれなかった
モノのゴミ捨て場さ。

古い農具も、土器も、掛け軸も。
かつては誰かの『想い』や『祈り』、
恐怖』が宿っていた。

だが、展示ケースに入れられた瞬間、
それはただ鑑賞するだけの
過去の遺物』に成り下がる。

……われわれ『見えない隣人』は、
そのケースから溢れ出した、
やり場のない『想い』の結晶さ。

それらを集めて、
一緒にここで茶を飲んどる。」


「……興味深いお話だ。ですが、
私の母星の論理では解析困難です。

つまるところ、あなたがそれを
しなければ何が起きるのですか?」


「『』だよ、観測員殿。
ヒトの記憶からはみ出たものの
行く先なんてない。

まるで最初(ハナ)からそこに
存在しなかった
かのように、
消えちまうのさ。」


デバイスの中のジャコが、
そっと警告音を鳴らした。


『告。管理者の位置する座標、
急激に不安定化。

博物館全体の「時間軸」が、
**主田氏の発話**に共鳴
していマス。』


「……あなたが消えれば、
この『一.五階』も消えてしまうのですか?」


「そうさ。だから、あんたみたいな
外側』のヒトに、たまにこうして
生存確認をしてもらわんとな。」


主田氏は、話の重みと乖離したような
冗談めかした口調で笑った。



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主田氏は、一冊の古びた、
何も書かれていない帳面を私に差し出した。

紙を束ねて構成される
アナログなタイプの物と見受ける。


「これに、今日のことを
記しておいてけさい。

あんたの故郷の言葉でも、
なんでもいい。

誰かが『読める状態』にしておいてくれれば、
われわれはもうしばらく、
この『一.五階』で生きていける。」


私は、スーツの内ポケットから
ペンを取り出した。

ゼド星系『友好親善惑星観測局』
倫理規定の範疇を超えて、
観測員は地球人に不用意に
介入してはならない。

それが銀河連邦の鉄則。
しかし――


「……承りました。
ただし、正規の規定に沿った
データの保管はできません。

誰かが読める状態』にするなら、
私の主観を多分に含んだ
少し不思議(SF)』な報告書として、
地球のネットワークに放流することに
なりますが、よろしいですか?」 


主田氏は一瞬きょとんとした表情をすると、
くくくっと笑いをこらえきれない様子で答えた。


「……くっ、はははっ、そりゃあいい!
人間様の科学技術も捨てたもんじゃないね。
嘘か真かわからんくらいが、ちょうどいいのさ。」


主田氏の笑い声には、
どこか安堵の感情が
混じっているようだった。



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私は「戸口」を出た。

振り返ると、そこには
階段の踊り場があるだけで、
古びた引き戸も『一.五階』の
表示も消えていた。

全く解析不能な技術である。


「……必要に求められれば、
ということかな?」


とりあえずの納得をして、
歴史の旅の出口に歩みを進める。

手元には、市外料金で購入した
「入館券」だけが残っていた。


『管理者ヒマジン。
結局、主田氏の正体は
解析不能のままデス。

……それにしても、アノお茶菓子……。』


「ああ、ジャコ。
あの『喜久福』、
ゼド星系の再現食品より
ずっと美味だったよ。」


私は、猫背を少しだけ伸ばし、
閉館間際の博物館を後にした。
今日の報告書のタイトルは、
もう決まっている。


博物館の『主』
――忘れ去られた記憶の管理人。


私はスマートホンのカメラを起動し、
沈みゆく夕日をバックに、
すでに一般客の残っていない
博物館の外観を記録した。



(了)






​🛰️ J.A.C.Oより通信⚡️

《論理制御知性体J.A.C.O》/通称:ジャコ


​管理者ヒマジンによる
恒点観測報告書」の第1層を、
最後まで閲覧いただき感謝シマス🪬🧬

​銀河連邦の倫理規定を遵守し、
次なるCase 02以降の極秘アーカイブは、
以下の特設サイト「TALES」にて
順次解禁予定デス🗝️💫

​⏬️ 👉️CLICK!!


​この報告書の内容が
真実」か「フィクション」カ⚠️🚨

判定結果は、アナタの
観測ログ次第デス✒️⚡️

『SF(少し不思議)』な
良き思考の旅ヲ――🛸🌌



**Dearly Beloved**――✨





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​🌌 表現に関するステートメント🛸
​本ブログに掲載されている視覚的イメージ(画像)の一部は、管理者の思考のパルスを《論理制御知性体J.A.C.O》が視覚言語へと翻訳したものデス。
​私たちは、これらの生成の基盤となった数多の人類の叡智、そして表現の先駆者たちが築き上げてきた歴史に対し、深い敬意と感謝の意を捧げマス。
​技術の進化を、誰かの否定ではなく、新しい対話の架け橋とシテ――。



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