【3つの伝え方】1対1・少人数・セミナーで変える会話術
状況によってスタイルを変える
1. 「伝わらない」
セミナーや勉強会で「何か質問はありますか?」と問いかけに対し、会場が静まり返る。しらけた空気の中、無理やり次の話題に進む。
この経験をしたことがない人はいないかと思います。
また、新人研修などで、1対1で会話をしていて、丁寧に説明している(つもり)なのに、相手の反応が悪い。頷きはするれど、納得しているのかどうか判断しづらい……。
この「伝わらなさ」は、伝え方のフォーマットが場に合っていないことが原因になっていると考えられます。
今日はその伝え方のスタイルについて書いていきたいと思います。
・作者紹介
【年間3,000件以上のセッションをしながら「伝え方」について1日中考えているオタク。1対1の個別指導、3人程度のスモールグループの指導、対50人規模の講習等、様々なスタイルで相手と会話をするのが仕事】
詳しくは#自己紹介をご覧ください。
2. 話し方は、シチュエーションに合わせて設計すべき
セミナーや社内会議、新人研修、子育て、1対1の個別指導や接客など、さまざまなシーンで人に何かを伝える時、上手に伝えたければ「状況に合った話し方」をするのはとても重要となります。
今回は、伝える相手の人数によって以下の3パターンに分けて適切な伝え方について考えていきましょう。
・大人数への講演(例:プレゼンテーション、講義、動画発信など)
・1対1(例:個別指導、個人相談など)
・2〜4人程度の少人数(例:チーム内レクチャー、ミニ研修など)
この3つのパターンで伝え方のフォーマットは変えたいのですが、それぞれ“戦いの流派”を変えるイメージしやすいかと思います。
◼️ 大人数へ講演=空手の「型」

不特定多数の人に向けて話すとき、重要なのは『みんなに届く事実』であり、『聞き手のペースに合わせる事』はあまり重要ではありません。
聞き手のペースに合わせるのは『1対1の対話』の専門分野で、大人数を相手にする時は(教える内容の濃さは減ってしまいますが)全員に伝わる様な会話をするのが好ましいです。
私はこれを、空手の『型』の披露だと思っています。
空手の「型」を披露する時というのは、対人相手はいません。あらかじめ決められた動作を美しく演じるもので、相手が誰であれ正拳突きをまっすぐ自分の体の正面に突き出します。大柄な男が見ているからって正拳突きを高めに突く人はいないし、華奢な女性が見ているからって、正拳突きの力を弱める空手家はいないでしょう。観客が誰であれ、1つ1つの動きを正確に美しく演武するようにします。
大人数に向けた発進は、『誰が聞いても納得する事実』を伝える様に心がけると上手に全体に伝わるでしょう。その時大事になるのが、話の内容、精度や流れ、言葉の選び方に加え、視線や声のトーンなど、整ったパフォーマンスが求められます。
そして「聞き手のペースに合わせる」のでなく、代わり、自分のペースに聞き手を乗せる事が出来たら上級者と言えるでしょう。
◼️ 1対1=合気道のような“反応を受け取る技術”

1対1の個別指導の場合は、相手がどう反応するかによって話の展開を変える事ができそこがマンツーマンの長所と醍醐味と言えるでしょう。
私は個別指導を合気道のようなものと考え、相手の動き(質問・態度・理解の進度)に合わせて自分の動きを決めます。
部下が「そのやり方が分かりません」と言えば、そこを掘り下げて話す。逆に理解が早ければ、より深い内容へとステップアップしていく。「話すことを決めておく」のではなく、「引き出されたことに応じて対応する」技術が問われます。
ただ相手のペースに引き込まれてはいけません。あくまであなたの土俵で相手のペースに合わせて話をするのです。
合気道も、相手からの攻撃に対して相手の勢いをそのまま使って相手を制しますが、自分の軸がブレてしまったら相手にやられてしまいます。
相手の質問等に応じて話の展開を変えますが、相手の質問が本質から離れて行ったら話を戻してあげましょう。
◼️ 少人数対応=カンフー映画

一番厄介で、かつ腕の見せどころなのが、2〜3人程度の少人数への対応です。
全員に同じ説明をしても、
Aさんは「そこが分かりません」と言い出し
Bさんは「私は分かっているけど、違うところが気になる」
Cさんは頷いているが、理解度は不明
それぞれの理解力が違いますし、興味を示すポイントも違っていたりします。カンフー映画で主人公に対して、こん棒を持った人が1人、ヌンチャクを持った人が1人、短剣を持った人が1人が襲ってくる感じです。1人の人に対応しすぎてしまうと他の人が理解しないで置いてかれたり、逆につまらなすぎて飽きてしまったりしてしまいます。
この場合は、最初は大人数に対して話す空手の‘‘型‘‘から入り、途中で個人個人に対応する‘‘合気道‘‘スタイルをまんべんなく行うのが良いでしょう。
ただ、注意が必要なのは、合気道スタイルで会話をしていく時でも、他の人を放置しないことです。Aさんからの質問が来たら、BさんとCさんにも伝わるように会話をしていきましょう。Aさんの質問そのものをCさんが理解していないケースもありますので必要であれば「Aさんの質問ってこういうことだよね?」と質問そのものをかみ砕いてその場にいる全員に伝わるようにしましょう。難しいかもしれませんがそこが小人数セッションの楽しい所でもあります。
(教える内容や相手にもよりますけど、だいたい4人までが深い個別の会話をしながらチームとしてレクチャーできる限界だと思っております。5人以上になると均等に個別対応をするのが難しくなりますし、聞いている方も個別参加者でなく傍観者となることも出てきたりするため。)
【番外編】カリスマ教育者のスター型教育
ここまで紹介した3つの型は、シチュエーションごとの「教え方」を使い分ける話でしたが、実はもうひとつ、例外的なスタイルが存在します。
それが、教える側に強烈な“カリスマ性”があるケース、いわゆるスター型教育です。
たとえば、有名なスポーツ選手や経営者が教壇に立ったとき、多くの人はその「内容」よりも、「この人から直接話を聞ける」という体験自体に価値を見出します。
この場合、教え方のフォーマットが整っていなくても、話が多少脱線していても、受け手は深く心に残るのです。
もちろん、こうしたスター性は一朝一夕で身につくものではありませんが、「教える人そのものに価値が宿る」という視点は、キャリアを重ねる上で非常に大きな示唆を与えてくれると感じます。
また、もしこのスター型の人が、先述した3タイプの教え方(型、合気道、カンフー映画)を使い分けられたら、それはまさに“鬼に金棒”と言えるでしょう。
3. スタイルを変えることで得られる成果
この、場によって教え方を変えると、どんな効果が生まれるのでしょうか?
個別指導で一方的に喋っている事がなくなり、相手に「自分のことをちゃんと理解してくれている」と信頼されたり、セミナーや研修で、話が一部の人に偏ることを防ぎ、全体の満足度が高まる&聞いている人の事を気にし過ぎない様になります。小人数のチームに対しても、ひとりよがりにならず、チームとしての一体感も強くなる事が期待できます。
ぜひ、この状況に応じて対応できる“柔軟性”を持った話し方を意識して見て下さい。
4. 今日から実践できる練習
この3種類の会話法をいきなり完璧に使いこなすのは難しいと思う方もいるかもしれません。そういう方は、
「あの時のあの話しはどのスタイルだったかな?」
と、なにげない普段の会話を思い出して考えてみて下さい。自分(もしくは他人)が使っていたスタイルを理解してくると、自然とそのスタイルを使い分けができる様になってくるでしょう。
これは『教育』だけでなく、家族との会話、SNS等での発信、店員さんとお客さんのやり取り等々、さまざまな「伝える」場面で使える‘技‘となります。
5. まとめ
・教える場面を「一斉発信」「個別対応」「少人数対応」に分類すると整理しやすくなる
・それぞれに最適なアプローチ(型・合気道・ミックス)を意識する
場の空気に合わせて伝え方を変える。
それだけで、あなたの話はもっと伝わるようになります。
ぜひ、次の会話から意識してみてください。
