週刊アンチ・ドーピング通信 #5|アンチ・ドーピングのルールブック、実は『8冊』ある
## はじめに
こんにちは、TechKeepです。今週のアンチ・ドーピング情報をお届けします。
前回の第4号では「ドーピングが禁止される3つの理由」を解説しました。
公正性、健康、社会悪という3つの要件は、アンチ・ドーピング活動の根拠となる考え方です。
今週はその活動を具体的に動かしている「ルールブック」の話をします。アンチ・ドーピングの世界には、WADAコード(世界アンチ・ドーピング規程)という中核となる文書があり、その下に8つの国際基準が設けられています。この構造を理解することで、禁止表やTUE(治療使用特例)といった個別のルールが全体の中でどこに位置づけられているのか、見通しがよくなります。
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## トピック① WADAコードとは何か
WADAコード(世界アンチ・ドーピング規程)は、ドーピング防止の基本的な枠組みを定めた「親文書」です。2003年に最初のバージョンが採択され、数年ごとに改訂されてきました。現在適用されているのは2021年版です。
このコードは、WADA(世界アンチ・ドーピング機構)が策定します。WADAは1999年にスイス・ローザンヌで設立された独立機関で、政府とスポーツ団体が共同で運営しています。
WADAコードの特徴は、世界中のスポーツ団体に対して共通のルールを適用するという点です。国際競技連盟(IF)や各国のアンチ・ドーピング機関(NADO)は、WADAコードに基づいた規程を採択する義務があります。つまりWADAコードは「各団体が個別にルールを作るのではなく、全員が同じ基準で動く」ための共通フレームワークです。
日本では、JADA(公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構)がWADAコードを実施する国内機関として機能しています。JADAが策定する「日本アンチ・ドーピング規程」は、WADAコードに準拠して作られています。
> 薬剤師ポイント:スポーツファーマシストとして活動する上で、禁止表の確認はもちろん重要ですが、その禁止表がWADAコードという大きな枠組みの一部であることを理解しておくと、TUEや違反手続きといった他のルールとの関係も把握しやすくなります。
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## トピック② 8つの国際基準──最重要は「禁止表」
WADAコードの各条項を具体的に実施するために、8つの国際基準(International Standards)が定められています。一覧で見てみましょう。
| 略称 | 国際基準名 | 主な内容 |
|------|-----------|---------|
| 禁止表 | 禁止表国際基準 | 禁止物質・禁止方法の一覧。毎年1月1日更新 |
| ISTI | 検査及びドーピング調査に関する国際基準 | 検査手順・競技者の権利義務 |
| ISTUE | 治療使用特例に関する国際基準 | TUE申請・審査・不服申立 |
| ISRM | 結果管理に関する国際基準 | 違反発覚後の処理手続き(2021年新設) |
| ISE | 教育に関する国際基準 | 教育・情報提供の基準(2021年新設) |
| ISCCS | 署名当事者の規程遵守に関する国際基準 | 組織ドーピングへの対応 |
| ISPPPI | プライバシー及び個人情報の保護に関する国際基準 | 個人情報保護 |
| ISL | 分析機関に関する国際基準 | WADA認定分析機関の手続き |
この8つの中で特に重要なのが「禁止表国際基準」です。禁止表は、「この物質・この方法を使ってはいけない」という禁止事項の一覧表であり、全世界の競技者に適用されます。アスレティックトレーナーの国家試験でも、禁止表に関する問題はほぼ毎年出題されています。
禁止表の最大の特徴は、毎年改訂されるという点です。新たな禁止物質の発見、科学技術の進歩、社会状況の変化に対応するため、毎年1回改訂され、原則として1月1日に発効します。この改訂サイクルについては、第7号で詳しく解説する予定です。
> アスリートへのヒント:8つの国際基準の全てを覚える必要はありません。まずは「禁止表」と「TUE(治療使用特例)」の2つを押さえておけば、日常的に必要な知識の大部分をカバーできます。
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## トピック③ 日本でのWADAコード実施──JADAの役割
WADAコードは国際ルールですが、実際に各国で運用するのは各国のアンチ・ドーピング機関(NADO)です。日本ではJADA(公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構)がその役割を担っています。
JADAの主な活動は次の通りです。
- 日本アンチ・ドーピング規程の策定・運用(WADAコード準拠)
- ドーピング検査の実施(競技会検査・競技会外検査)
- TUE(治療使用特例)の審査
- アンチ・ドーピング教育・啓発活動
- クリーンスポーツ・アスリートサイト(realchampion.jp)の運営
第3号でも紹介しましたが、JADAのクリーンスポーツ・アスリートサイトは、トップアスリートからレクリエーション競技者まで、それぞれの立場に合わせた情報を提供しています。
WADAコードという国際的なルールがあり、それをJADAが日本の現場で運用する。この「国際と国内の二層構造」を理解しておくことが、アンチ・ドーピングの全体像をつかむ第一歩です。
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## まとめ
今週のポイントをまとめます。
- WADAコード(世界アンチ・ドーピング規程)は、ドーピング防止の基本的な枠組みを定める「親文書」
- WADAコードの下に8つの国際基準が設けられ、具体的な運用ルールを定めている
- 8つの国際基準のうち最重要は「禁止表国際基準」。毎年1月1日に更新される
- 日本ではJADAがWADAコードを実施する国内機関として機能している
- まずは「禁止表」と「TUE」の2つを押さえておくことが実用的
来週は「禁止表の基本ルール」をテーマに、毎年改訂の仕組みと、試験で最頻出のポイントを解説します。
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## 著者プロフィール
**TechKeep_pharma**
JADA認定スポーツファーマシスト・薬剤師
IRONMANみなみ北海道2024完走
アスリートへのアンチ・ドーピング相談・教育活動を行います。
Kindle書籍「薬剤師・薬学生のためのアンチ・ドーピング入門」準備中
X:https://x.com/TechKeep_pharma
note:https://note.com/techkeep_pharma
Instagram:https://www.instagram.com/techkeep/
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## ご利用にあたって
禁止表国際基準は最低年1回、WADAコードも随時改訂されます。
当アカウントは正確な情報発信を心がけていますが、最新情報は必ずGlobalDRO・JADAの公式情報でご確認ください。
ドーピング違反に関わる最終判断は、アスリート自身の責任において行われます。
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