AIコーディングの効率は“動く前”で決まる─Codex実践「謀・定・動」3ステップ
こんにちは。テクノロジーセクションの胡です。
CodexでAIコーディングをしていると、最初はたしかに速く感じます。
でも実際には、「書く速度は上がったのに、思ったより前に進まない」と感じることがあります。
その原因は、AIの性能不足というより、要件が曖昧なまま実装に入ってしまうこと にある気がしています。
私は、この課題を解決する指針として、中国の格言にある「謀定後動(ぼうていこうどう)」という言葉を大切にしています。文字通り「計略を練り、方針を定めてから、動き出す」という教えです。
謀: まずAIと論点を出し切る
定: その中から採用する方向を決める
動: 方針が固まってから実装を進める
要するに、先に広げて、次に絞り、最後に動く という流れです。

謀:AIを「実装者」ではなく「思考相手」として使う
「謀」の段階では、まだコードを書かせません。ここでやるのは、AIと一緒に問題を話し切ることです。
この段階は、単なる要件確認ではなく、AIを相手にしながら自分自身の理解を深める時間でもあります。調べながら考え、考えながら比較し、分からないところを埋めていく。そういう使い方をすると、AIは「答えを出す道具」よりも「思考を前に進める相手」に近くなります。
私自身、この段階では、いきなり実装を頼むのではなく、まず背景や目的、制約を説明し、あわせてIDE上で見えている情報やproject内の関連ファイルもAIに渡すことが多いです。何を作りたいのかだけでなく、どのファイルが関係しそうか、既存実装のどこを前提にするのかまで共有しておくと、AIも前提をそろえたうえで初期方針を出しやすくなります。
たとえば、次のような聞き方をよくします。
背景はこうで、目的は〇〇です。関連しそうなファイルはこれです。まず認識が曖昧な点を整理してください
制約は△△で、既存実装はこのあたりです。この前提で、実装前に決めるべきことと初期方針をまとめてください
今IDE上で見えている情報と関連ファイルを踏まえて、どこを起点に考えるのがよさそうか整理してください
実装はまだ始めずに、まず背景・目的・スコープ・関連コンテキストを整理したいです。そのうえで初歩的な設計案を出してください
こうして最初に前提とコンテキストをきちんと渡しておくと、AIもいきなりコードを書くのではなく、前提をそろえながら初期案を返しやすくなります。
freee会計のデータを自社基盤へ取り込むような仕事でも、実際には考えることが多くあります。流れだけ書けば、イメージはこうです。

スコープはどこまでか
まず connector を作るのか、その先までやるのか
認証はどうするのか
最初に同期するエンティティは何か
定期全量か、増分か
今回やらないことは何か
この段階では、正解をすぐに決める必要はありません。むしろ、
あり得る構成を並べる
それぞれの長所と短所を比べる
自分が分かっていない部分をAIと一緒に学ぶ
仮説を増やして見落としを減らす
ことが重要です。
あとで使わない案が混ざっていても問題ありません。
「何を採用しないか」を見極める材料になるからです。
定: 正しい方向を決めて、不要な文脈を捨てる
「謀」で論点が出そろったら、次は「定」です。ここでやるのは、探索の結果をそのまま流さず、今回進むべき方向を確定すること です。
AIとの会話は便利ですが、探索中の文脈を抱えたまま実装に入ると、あとで混線しやすくなります。だから「定」では、次のことを意識します。
採用する案を決める
採用しない案を外す
実装の拠り所になる版を決める
次に持ち越す文脈を減らす
私の場合、ここではCodexに plan を作らせるだけでなく、仕様書や設計メモとしてローカルに残すことが多いです。
これをやっておくと、次の会話で前提をすぐ再ロードできます。つまり「定」は、計画を作る段階であると同時に、膨らんだコンテキストを整理して掃除する段階 でもあります。実際、探索フェーズで出た文脈の多くは、その後の実装ではもう不要です。ここで一度「今回使う前提」だけを残しておくと、会話が長くなりすぎたときも立て直しやすくなります。
動: 方針が固まってから、小さく速く進める
ここまで来て、はじめて「動」です。
この段階では、Codexの強みがよく出ます。既存コードを読み、ファイルを編集し、検証まで進められるからです。ただし、ここでも一気に全部やらせない方がうまくいきます。
例えばデータ連携なら、
connector を作る
接続と認証を確認する
対象エンティティと移行タスクを決める
S3への出力を安定させる
最後に下流へつなぐ
というように、小さく切って進めた方がブレません。
もし途中でズレたら、無理に進めず「謀」か「定」に戻る。この戻り方ができると、AIはかなり強い実務パートナーになります。
逆に、ここを省いて走り続けると失敗しやすくなります。例えば、全エンティティを増分同期で進める前提だったのに、途中で一部は全量同期に切り替えざるを得ないと分かることがあります。
そのまま方針を整理し直さずに進めると、コードは増えていても、最後に大きな手戻りにつながりやすくなります。
つまり、AIが悪いというより、前提が揺れたまま進み続けることが問題になりやすい、ということです。だからこそ、探索は探索、確定は確定、実装は実装で段階を切ることに意味があります。
おわりに
AIコーディングの効率を上げる方法というと、ついモデルやプロンプトの話に寄りがちです。
でも実際に効くのは、その前にある整理だと感じています。
何を作るのか。どこまで作るのか。どういう順番で進めるのか。
ここが曖昧なままだと、AIは速く書けても、速く迷います。だから今の私は、Codexをうまく使うコツは、すぐに動かすことではなく、動く前に揃えておくことだと考えています。そのための合言葉が、私にとっては 「謀・定・動」 です。
AIに任せる量を増やすほど、この順番の価値は大きくなる。いまのところ、それが私にとっていちばん再現性の高い使い方です。
エンジニア採用強化中です!
テックオーシャンではエンジニア採用を強化中です!
ご興味がある方は、ぜひこちらからアクセスお願いします!
