旅先で出会った東日本のせんべい。タレを塗り重ねたり、煮込んだり、焼いたり...せんべいだけで、さまざまな体験ができる。
結論
何回もタレを浸けて焼けば言いというわけではない。
今回は、旅先で出会ったせんべいについて解説します。
南部せんべい
南部せんべいは小麦粉から作るせんべいです。青森県で誕生し、岩手県にも広まりました。
500年以上の歴史があるせんべい
南北朝時代、南朝の長慶天皇が奥州を訪れたとき、側近から、蕎麦粉、ゴマ、塩を混ぜた生地を鉄甲でせんべい風に焼いたものを受け取り、食べたという伝説もあります。
実際、戦国時代には作られていました。南部せんべいは、軽く、たくさん持ち運びができ、長期保存ができました。そのため、戦のときに武将たちはせんべいを持ち込んで、食べていました。
江戸時代には、米が不作だった時の常備食として作られました。当時は、粟、黍など雑穀、蕎麦も入っていました。
現在の南部せんべいは、塩、小麦粉、水のみで作った生地がベースです。鉄製の型で丸く成形してから焼きます。ピーナッツ、ゴマなど様々にトッピングされており、味を楽しむことができます。地元の方はせんべいにおこわ、赤飯を挟んで食べることもあります。
なぜ、小麦のせんべいができたのか?
南部地方は、夏、やませという季節風が吹きます。やませは、冷たく湿った北東風です。やませが吹くことにより、太陽が隠れ、気温も上がりにくくなります。そのため、東北地方の太平洋側は冷害に見舞われることが多く、稲作が難しい地域でした。
一方、南部せんべいの原料としてに使われている蕎麦、小麦は冷害に強いです。天保の飢饉の頃には、八戸藩で小麦、蕎麦が注目されました。そのため、せんべいを常備して稲が不作になったときに備えました。
せんべい汁

せんべい汁は、南部せんべいを肉、魚、野菜などとともに、出汁で煮込んだすまし汁です。
南部せんべいは、主食としても活躍します。江戸時代には、味噌汁、鍋に入れて食べられていました。戦後、煮ても溶けにくい南部せんべいが開発されました。非常食から寒い日の家庭料理に変化しました。平成に入ると、B級グランプリの開催により、ご当地グルメブームが到来し、注目されるようになりました。
出汁は鶏ガラベースが多いです。あっさりしつつ、コクも感じられます。煮込むから溶けてしまうのではないか?と思いました。しかし、実際に食べると、せんべいの概念が覆ります。すいとんのようにモチモチです。アルデンテのように、中心には、コシも感じられました。具材からも出汁が出るため、より美味しくなります。
カップせんべい汁という商品もあります。お湯を注いで4,5分待つだけでせんべい汁が味わえます。鍋料理としても堪能できます。
「みみ」がおいしい

型からはみ出した外側の部分を切り落としたものは、「みみ」と呼ばれています。「みみ」は、地元でほとんど消費されるため、出回りません。「みみ」をバター醤油で炒めた「みみバター」は、コシが非常に強く、噛むごとに染みたバター醤油がにじみ出ます。
草加せんべい
浅草駅、押上駅と伊勢崎駅を結ぶ東武伊勢崎線上に埼玉県草加市があります。江戸時代、草加は日本橋~日光を結ぶ日光街道の宿場町として栄えていました。松尾芭蕉のおくのほそ道にも登場します。
草加市の名物は草加せんべいです。草加市内には煎餅屋さんが60店舗以上あります。
団子がルーツ
団子が評判の茶屋を営む女性が、通りすがりの武士に余った団子を平たくつぶしてから、焼いて提供したところ、おいしいせんべいとして評判になりました。ここから草加せんべいができたと言われています。
草加市周辺は旧利根川の支流綾瀬川が流れる低湿地でした。水田が広がり、米作りが盛んでした。当初の草加せんべいは塩味でした。野田が近いため、醤油が手に入りやすく、塩味から醤油味に変わりました。
自分で焼くことができる
草加市にあるせんべいの里では、せんべい焼きの体験ができます。

トング、つぶし、タレ、刷毛、せんべいの原型がテーブルに置かれていました。

せんべいの原型は、うるち米を粉にして熱湯とこねて蒸して、餅状にしてから固めたものを輪切りにしています。見た目は、焼肉屋さんでお肉を注文すると、ついてくる大きなお餅です。

大きなお餅をコンロに乗せます。向きを変えながら、3秒ごとにひっくり返します。短時間で火入れをしてひっくり返し続けることが、均一に焼き上げるコツです。10回ほど繰り返すと、トッポギが突然膨らみます。膨らみ出したら、つぶします。ひっくり返して、膨らんだら潰すを繰り返します。成長が止まったら、焼きの完了です。最後に、刷毛を使ってタレを塗って完成です。

できたてのせんべいは、非日常の味わい
日常で無意識に過ごしていれば、出会うことのない、できたてをいただきます。できたてのせんべいは、パリパリです。

オマケ:何度もタレを積み重ねると美味しくなるだろうか?
せんべいを焼いていて、思いました。
焼鳥、ウナギの蒲焼のように、タレを何度もつけ重ねたら、どんな味わいになるのか?
香ばしさが増して、よりおいしくなるのでは?と思いました。そんな夢を叶えるせんべい屋さんがありました。
東京巣鴨に本店のある雷神堂です。1度、5度、10度塗りの醤油せんべいが販売されていました。

1度つけ
米の味がわかり、塩味をあまり感じません。醤油より米の風味が強いです。スーパーで販売されているせんべいは、まさに一度タイプです。
5度漬け
醤油の風味をしっかり感じ、濃厚です。焼きおにぎりを食べているみたいです。かつて新野製菓が販売されていた「名作」というせんべいを思い出しました。
10回漬け
さらに鼈甲色が濃くなりました。ツヤ、照りが増します。持つとベタつきます。塩辛く、醤油の強い層が見えて少し湿っています。
何度も塗り返せばよいということではないことがわかりました。
結論:何事もバランスの見極めが重要。
料理に応用すると、焼鳥や蒲焼など、タレにつけて焼く作業を繰り返すものは、適度な回数が存在するとわかりました。あっさり、素材の味を感じたいときは回数を減らします。一方、焼きの香ばしさ、タレの濃厚さを出したいときは回数を重ねます。しかし、一定の回数を超えると、塩辛さが勝るようになります。そこの見極めが重要だと思いました。
肉類は、穀物ほど染み込まないため、結果が変わるかもしれません。
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