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春が好き

今年も春の陽光が、まだ少しだけ遠慮がちに近所の校庭の隅を照らし始めた。私の心が、ざわめき始める。

春といえば、多くの人が体験した新しい学年の始まり。それは、希望と不安が入り混じる特別な季節であり、何よりもまず、クラス発表という名の、運命の分かれ道が待ち受けていることだ。

思い返せば、小学校に入学して以来、私の新学期は、いつも張り出された名簿の前での、小さな絶望から始まった。
幼馴染の彼女、優しくて明るい笑顔がひまわりみたいに元気な彼女の名前を、私の探す列に見つけることは一度もなかった。
隣のクラス、あるいはもっと遠い場所に、彼女の名前はあった。
小学生の頃の私たちにとって、クラスが違うということは、世界の半分が違うと言っても過言ではなかった。
休み時間に少しだけ顔を見ることができても、一緒に下校することもなく、共有できる話題も少なくて、中身も薄い気がしていた。

本当は、ずっと、誰よりも近くにいたかった。彼女の屈託のない笑顔を見るたびに、胸の奥がほんの少しだけ熱くなるのを感じていたから。子どもながらに、それが友情以上の特別な感情なのだと、ぼんやりと感じていたのかもしれない。
だからこそ、毎年、クラスが離れるたびに、小さくため息をついた。

中学校に入ると、私たちは同じバスケットボール部を選んだ。家が近かったこともあり、必然的に、毎日の朝練にはじまり、登下校は一緒になった。
他愛もない話で笑い合ったり、部活の練習の疲れを分かち合ったりする時間は、私にとって何よりも大切で、本当に嬉しくて楽しかった。隣にいる彼女の存在が、日常をいつも明るくしてくれた。
クラスは、またしても別々だったけれど、一緒に過ごせる時間が増えたことで、以前のような寂しさは薄れていた。

高校は、別々の学校に進学することになった。さすがに、その時は大きな喪失感に襲われた。毎日のように顔を合わせていた彼女が、手の届かない場所へ行ってしまい、まるで、私の世界から色が一つ消えてしまったようだった。

それでも、私たちは時々、共通の友達も誘ってグループで遊びに行った。たまには、二人だけで会うこともあって、買い物へ行ったり、カフェでお茶をしながら、他愛もない話に花を咲かせた。私の心の中にある秘めた想いを悟られないように。
わざとらしく恋の話題を振ったりもしながら、彼女の好きな人の話を聞いていると、胸の奥がチクリと痛むけれど、それでも、隣で笑っている彼女を見ているだけで、満たされたような気持ちになった。
友達としてなら、こうして隣にいても大丈夫。気兼ねもいらない、心地よい距離感。そう思うことで、自分の気持ちにはずっと蓋をしていた。

高校を卒業すると、私たちはそれぞれの道を歩み始めた。彼女は県外の大学へ進学し、私は地元の企業に就職した。会う機会はめっきり減り、連絡を取り合うのも、年に数回程度になってしまった。それでも、時折、SNSで彼女の楽しそうな投稿を見つけると、遠く離れていても、彼女が元気でいることを知るだけで、心が安らいだ。

そして、ある日、突然、彼女から結婚するという連絡がきた。披露宴にも招待された。その知らせを聞いた瞬間、喜びよりも先に、言いようのない寂しさが、まるで冷たい雨のように私の心に降り注いだ。胸が締め付けられるように苦しくて、素直に「おめでとう」と言えるだろうか、と不安にもなった。
彼女が誰かのものになる。
それは、私がずっと心の奥底にしまい込んでいた、小さな希望の光が消えてしまうことを意味していたからかもしれない。

結婚式当日、ウェディングドレスに身を包んだ彼女は、信じられないほど美しかった。本当に幸せそうな笑顔が、会場全体を明るく照らしていて、それを見ているうちに、胸の奥のチクチクとした痛みは消え、心から「おめでとう」という言葉が溢れ出た。
彼女の幸せそうな姿を見ていると、私も嬉しくなった。
これで、本当に気持ちを切り替えよう。
友達として、彼女の幸せを心から願おう。

そう思った矢先だった。
数ヶ月後、彼女が突然の交通事故で亡くなったという知らせが届いた。あまりにも突然で、あまりにも残酷な事実に、私はただただ泣き崩れた。
何が起こったのか理解できず、涙が枯れるまで泣き続け、何日も抜け殻のように過ごした。
彼女のいない世界が、信じられなかった。

しばらくして、近所の学校を通りかかると、目に映る景色には、淡いピンク色に染まり始める木々があった。

そう、桜、もう春だ。

桜の蕾が、固い殻を破って、今にも咲き誇ろうとしている。
かつて、彼女と二人で、この桜並木を眺めながら学校へ通った日々が、鮮明に蘇ってきた。
他愛もないことで笑い合った帰り道、部活帰りにアイスクリームを分け合ったこと、二人だけの秘密の話……。
楽しかった思い出が、まるで走馬灯のように私の心の中を駆け巡る。
そして、その一つ一つの記憶の中に、いつも彼女の笑顔があった。あの太陽のように明るい笑顔が。

春が来るたびに思い出すのは、クラス発表の日の、小さな絶望だけじゃない。共に笑い、共に過ごした、彼女とのかけがえのない日々。
そして、今も私の心の中で、色褪せることなく輝き続ける、彼女の笑顔。

#春になると思い出すこと

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