【物語】あるカフェの本棚に phase07_4 幻
図書館に行ったのは、町史の先行販売の日です。
この日、町の歴史から産業や観光まで時系列で追うことができる第3巻をこの町の公民館で購入することができます。もっと町民が並んでいるかと思ったのですが、先行販売ですからそうでもありません。購入した町史を持って、併設する図書館に入ります。
館員の方にお話すると、あっさりその本は見つかります。『亀甲織 伝承を紡ぐ』です。
この本、意外としっかりした冊子です。分厚い本とまではいきませんけど、麻の栽培についても優しく描かれていて、町の産業を伝える書としては十分という印象です。
「この本、再販できないかな」
『亀甲織 伝承を紡ぐ』を図書館から借りている間、農林課、県議、町議、麻の会と、思い当たる方々に聴いてみます。
どうも所有者もはっきりしない返事ばかりなので、この町に本の所在と再販の可能性を直接聴いてみます。
結論ですが、
「保存期間を過ぎており、データは残っておりません」
とのこと。
「町の伝統工芸なのに、そんなことある?」
とは思ったのですが、担当職員を攻めるわけにもいきません。間違った業務はしていないでしょうから。とはいえ。
データ管理をしていたんだから所有者も町なんだろうと。データがない上に、残された冊子も数冊となると、これはもう、冊子をAIで復元処理してデータ保存することくらいです。ただ、それを個人で進められるわけもなく。
この町のお店に寄贈する郷土本は最終的に2冊に絞られます。
偶然ですが、どちらの郷土本もこの町の名前が入っています。戦国時代のこの町を舞台にしたSF作家による歴史小説と、有名な童話作家と町との関わりを時系列で知ることができる史実です。
そんな事がわかった頃、亀甲織の栞と一緒にリターン品にと考えていた物があります。やはり町の伝統工芸品の一つです。
どうやらクラファンに間に合わなそうです。
phase07_5 に続く
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