見出し画像

エンジニア出身 x 開発会社起業という選択肢

この記事は【GAOGAO Advent Calendar 2025】の 12日目の記事です。


私は新卒から10年間エンジニア経験した後、GAOGAOという開発会社を創業して8年ほどが経ちます。現在AIネイティブなエンジニアが主に上場企業のお客様を中心に開発をチームで支援し、60名以上のエンジニアメンバーが常時稼働している規模感の会社です。

一見、エンジニアとして開発会社を起業というキャリアパスは地味と思われるかもしれません。私のこれまでの経験を振り返ると、地味であるのは間違いないですが、着実に成長できる要素を持ったビジネスとして立ち上げるには案外悪くない起業の第一歩の選択肢として考えています。

地味と言われるポイント 「Jカーブを描けないでしょ?」

SaaSをつくる、AIプロダクトを立ち上げる。そういう話のほうが聞こえはいいですよね。まだ小さい規模の受託開発会社の場合、「それ、起業っていうの?」という空気すら感じることもあるずです。日銭稼ぎのために仕方なく受託をするような考え方も一般的な風潮としてあります。

実際、その空気は正しい部分もあります。開発会社という響きは地味で、Jカーブの成長モデルを描くイメージがない。実際に私も過去VCと話すことはありましたが、特に創業期は見向きもされない経験もしました。労働集約モデルという言葉で片付けられてVCの投資先候補にも上がりません。

でも、少し視点を変えてみてください。

地味で良い。自己資金でスタートできる

起業するとまずは資金調達が必要というイメージが先行しますが、自己資金で進められるのであればそれに越したことはありません。

スタートアップなのに資金調達していないのが地味かもしれませんが、外部資本入れずにビジネス創出できるとしたら、それはとても素晴らしいことなんです。

資金調達をすることでExitをより意識して動くことで成長を早められる可能性は高いです。一方、外部資本を入れることにより、さまざまな経営上の制約も同時に受ける可能性があるため一概に最初に資金調達すれば良いというわけでもありません。

私の考えでは、外部から資金を入れる前に初期の本質的なバリューをまず作ることに重きを置くのがおすすめです。まずは自分のみの力で運転できるくらいの利益を生み出すことへトライすることが大事です。その選択肢としてSaaSではなく、開発会社というのが案外現実に取り得る選択肢なのです。

開発会社として上場し、大きな評価を受けている企業たち

例えばSHIFTやSun Asteriskといった企業を例に挙げます。SHIFTに関しては品質管理の文脈からスタートしていますが基本的にはソフトウェア開発の市場でクライアントワークを行なっている会社です。時価総額だけ記載すると現時点で2,500億円規模にもなっています。

彼らはプロダクトを売っているわけではありません。労働集約 x エンジニアリングの力を武器にしたビジネスの分野で市場で大きな評価を得ているのです。大きな市場ニーズと供給側のマッチングを実現する方法が確立できるのであれば、労働集約モデルであってもスケールのための方程式を確立することは可能です。その実現方法の確立が一般的にかなり難易度が高く、やりきれればその仕組みそのものが他社がすぐに真似できないビジネスを継続的に成長させることができるプロダクトという見方もできます。

開発会社が対象とする市場はとても巨大です。IDC Japanの発表では、2025年の市場規模は前年比9.7%増の27兆8953億円で2024年~2029年の年間平均成長率(CAGR)は6.4%で推移し、2029年の市場規模は34兆6954億円に達すると予測しています。つまり、IT開発・SI市場は巨大市場であり、今後も大きく成長し続けるのです。

このような上場規模まで持っていける開発会社の登場で「開発会社=スケールしない」という発想は事実変わってきているのかもしれません。

エンジニアとしての経験が、そのまま武器になる

エンジニアが起業して開発会社を立ち上げる際に、重要なアドバンテージがあります。それはすでに持っているスキルであるコードを書く力、システムを設計する力が、そのまま売り物になるので、プロダクトを一から考えて市場を探り当てる必要がありません。

GAOGAOの創業ストーリー。IT人材育成事業から従業員60名規模の開発会社へ

弊社GAOGAOは、創業当初から開発エンジニアによる支援をやっていたわけではありませんでした。

創業の2018年当時はプログラミングスクール形式の人材育成事業からスタートしました。エンジニアの育成にフォーカスしてコミュニティ運営を取り組んでいた中、とある中小企業や上場企業から「エンジニアが採用できない」「開発リソースが足りない」「技術的な相談相手がいない」「力を貸してください」そんな声を直接聞く機会が増えていったのです。

顧客の声に耳を傾け、彼らが本当に困っていることに応える。その繰り返しの中で、自然と開発支援事業が立ち上がり、今では世界各地にエンジニアが活躍する組織にまで成長しました。この経験から学んだのは、「ニーズドリブン」でビジネスを開拓することの重要性です。

自分が作りたいものを押し付けるような形ではなく、顧客が直面している技術的課題や開発面の悩みを直接聞き、それに対して提案する。このサイクルを回せるようになると、ビジネスは自然と広がっていきます。

開発会社(一次受けでクライアントワークをしている会社)という形態は、新規サービス立ち上げやDX、AI活用の文脈で顧客が抱えている課題を直で聞ける環境そのものとなります。

キャッシュフローが読める安心感

ソフトウェア開発は準委任契約による毎月の稼働に基づく請求を基本としているため仕事を受ければそのタイミングでお金が入ります。シンプルですが、これは経営者にとっても重要なポイントです。プロダクト型のスタートアップの創業期のビジネスでは、売れるまで収益ゼロという期間を耐えなければなりません。私もGAOGAOの前に一社起業し経験していますが、ランウェイを気にしながらPMFを探し続ける日々はエキサイティングなことは間違いないですが、精神的にも相当ハードな日々が続きます。

もちろん開発会社とは言え案件と採用の需給のバランスを図れなければ収益を生み出せません。うまく営業サイドと採用サイドが足並み揃わないと思うようにビジネスを伸ばせないのは事実です。

案件獲得を常に狙いつつ、正社員と業務委託による参画メンバーの人数バランスをとって進行する形式が取れればある程度リスクを低く利益を出しながら走れるはずです。(詳細は今後"開発会社の作り方"の連載記事で言及してきます)

ビジネスの全要素を学べる—しかもエンジニアの強みを活かして

開発会社を経営すると、営業から採用、プロジェクト管理、ファイナンスまで、技術観点だけでなく、ビジネスに必要なあらゆる要素を経験することになります。

そして面白いのは、これらすべてにおいて、エンジニアであることが強みになります

営業:「持ち帰ります」がなくなる

一般的な営業担当者がお客様先で技術的な質問を受けると、「確認して後日回答します」となりがちです。しかし、エンジニア出身であれば違います。

その場で技術的な課題に対して即座に提案ができる。「それならこういうアーキテクチャでいけますね」「そのAPI設計だとこういう選択肢があります」。こうした会話がリアルタイムでできることで、商談のスピードと信頼度が格段に上がります。技術がわかることで、お客様との距離が一気に縮まるのです。

採用:エンジニア同士、わかり合える

開発会社にとって、エンジニア採用は生命線です。ここでもエンジニア経験が活きます。

まず、候補者のスキルを見抜くことが容易です。履歴書や職務経歴書だけではわからない、実際の技術力や問題解決能力を、技術的な会話の中で自然に把握できます。

そしてもう一つ大きいのが、エンジニア同士で単純に仲良くなれる可能性が高いということ。同じ苦労を知っている、同じ喜びを共有できる。技術の話で盛り上がれる。この「共感」は、採用において非常に強力な武器になります。GAOGAOではこれまでエンジニアがエンジニアと密に話すことで採用の数値に直結する結果を出してきました。

プロジェクト管理:中身がわかるから、トラブルに強い

開発会社としてプロジェクトを管理する立場であっても、エンジニア経験があればプロジェクトの中身を深く把握できます

日々のプロジェクト進行も技術面での強みは活かせますが、大きく効いてくるのは、何らかのクライアントプロジェクトでトラブルが発生したときです。何が原因なのか、どこがボトルネックなのか、どう解決すればいいのか。技術的な理解があることで、問題の本質を理解し、スムーズに解決に進められます。

支援している内容を自身で最終的に把握できる体制を自分自身で作れるからこそ自信を持ってプロジェクトを遂行できます。それは結果的に現場のメンバーの心の支えにもなります。

ファイナンス:数字を扱う素養がある

エンジニアの多くは、数値的なセンス(工学的な)を持っているはずです。ロジカルに考え、数字を扱い、アルゴリズム的に物事を整理する。これはまさにファイナンスに必要な素養そのものです。

開発会社初期のフェーズは資金調達含めた資本政策は必ずしも必要ではありません。一方、売上目標と必要経費から方程式を組み立て、それを実現するための事業計画は重要です。この事業計画目標に沿ってコツコツ実行する「数字で考えて、愚直に積み上げる」という泥臭い作業は案外エンジニアの性格に合っているケースが多いです。

数字が示す課題を解決するのは、バグを潰していく作業にどこか似ているようにも考えられます。

見え方が変わる瞬間

派手な起業ストーリーを思い描くのであれば少し物足りないかもしれないですが、開発会社立ち上げはある程度再現性があり、リスクがコントロールでき、着実に力がつく道は、むしろ積極的にトライしてみる価値のある領域です。

日本には約2万社のソフトウェア開発会社があると言われており、従業員50名以上の会社は上位10%に位置します。そこまでの規模に持っていけると徐々にビジネスの再現性が確立し始めて、見える経営方針の景色も変わってきます。

エンジニア起業家にとって「まず受託」は消極的な選択ではなく、戦略的な第一歩になりえます。むしろ、学びの宝庫と感じています。

様々なプロジェクトを横断的にみることができ、営業、採用、クライアントワーク、プロジェクト管理、ファイナンス。ビジネスに必要なすべての要素を、エンジニアとしての強みを最大限に活かしながら経験できる。顧客の課題を直接聞いて、ニーズドリブンでビジネスを広げていける。しかも、上が見えないくらいの巨大な成長市場で戦える。

「エンジニアが開発会社をやる」ということは、自分の強みを存分に活かしてビジネスを作り、学べる最高の環境なのです。

この点を理解すると、エンジニアの皆様にとって開発会社の捉え方が少し変わってきたりしないでしょうか。もしあなたがエンジニアとして起業を考えているなら、開発会社という選択肢をつまらないと切り捨てる前に、一度フラットに検討してみてください。思っているより、面白い道になるかもしれません。

最後に

今回の記事は"開発会社の作り方"をコンセプトにした連載記事の序章の位置付けででした。

もちろん実際に開発会社を立ち上げて成長をさせるのは一言で言えるほど簡単ではありません。創業してからある程度の規模に持っていくまでに直面する課題は本当に多々ありましたし、現在も直面しています。

その辺りに言及する開発会社の作り方本編に関しては引き続きnoteにてに記事発信をしていきます。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事は noteマネー にピックアップされました

noteマネーのバナー