「宮﨑駿が"最も愛した小説"」がマジでおもしろすぎた。
本棚の中で、忘れ去られていた本。
ある日、愛用している電子書籍リーダー「Kindle Paperwhite」のライブラリを眺めていたら、見知らぬ本が入っていました。
夏目漱石『草枕』です。
購入した記憶はありませんが、夏目漱石はいつか全作品を読みたいと思っていた作家。
「いい機会だ」と、軽い気持ちで読みはじめました。
すると——。
人生が変わりました。
「何度も気軽に読みたい」と思い、紙の文庫本をすぐに購入したくらいです。

↑本作には辞書で調べても意味が出てこないような言葉が頻出するので、青空文庫よりも、解説付きの新潮文庫がおすすめです。
筆者プロフィール:照沼健太
編集者・ライター・YouTuber。テレビ東京やNetflixのメディア運営、レディオヘッドら数々のアーティストのCD封入解説文、HIKAKIN、米津玄師、押井守、藤本タツキなどのクリエイターや多くのビジネスパーソンの取材を担当。2023年末からはYouTubeチャンネル「てけしゅん音楽情報」を運営(2025年2月末時点でチャンネル登録者数約5万人)。
連想したのは、スタジオジブリの名作。そして…

冒頭の散文があまりにも有名な作品ですが、それに並ぶ勢いで驚かされたのは、風景描写でした。
峠を越えていく道すがら、木立の間から見える海、遠くで鳴くひばりの声。やけにリアルで、同時に夢見心地で、見えるはずのない空気や光の粒子まで描き出しているかのよう。
そして、2025年現在、それらの風景がすでに失われていることもはっきりと伝わってきます。
夫を失った後の祖母が遺した「陽光が差す山道を歩いていたら、ある小さな蝶々が自分の周りをずっと着いてきた」という不思議な体験を綴った俳句を、僕は思い出しました。
続けて、さらにハッとしました。
『草枕』の風景には見覚えがある……。
いくつかのイメージが融合したデジャヴだと思いますが、最も直接的に想起されたのは、宮崎駿監督作品『風立ちぬ』でした(僕が一番好きなジブリ作品でもあります)。


気になってGoogleやChatGPTを使って調べてみたところ、夏目漱石『草枕』は宮崎駿監督の愛読書であることが判明。
ぼく、『草枕』が大好きで、飛行機に乗らなきゃいけないときは必ずあれを持っていくんです。どこらでも読めるところも好きなんです。終わりまで行ったら、また適当なところを開いて読んでりゃいい。ぼくはほんとうに、『草枕』ばかり読んでいる人間かもしれません。
— 宮さん(宮崎駿)bot (@miyasan_bot) April 12, 2022
……マジか。
しかも『風立ちぬ』で2人が最後の時間を過ごす黒川邸は、『草枕』の舞台である前田家別邸をモデルにしているのだそう。

さらには「半藤一利が宮崎駿に夏目漱石『草枕』アニメ化を依頼」なんて記事も出てきました。
まったく記憶はありませんが、もしかしたら数年前の僕はこの記事を読み、「いつか読まなきゃ」と『草枕』をKindleに入れたのかもしれません。
ともかく、出発点もよく分からないままの読書が、思いもよらない鮮烈で偶然の出会いをもたらしてくれました。
読みながら連想したイメージに、あまりに明確な繋がりがあった。
……ですが、これはあくまでも『草枕』の入り口です。
本作は宮﨑駿との関係抜きにして、とにかく徹底的におもしろい。逆説的に宮﨑駿が本作に惹かれるのも、よくわかる内容です。
クリエイターを虜にする物語。その理由は

じゃあ、『草枕』の何がそんなに面白かったのか。そして、宮﨑駿を虜にした理由とは何か。それは……
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