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副業ライターが「音楽メディア」を終わらせた説

これは音楽に限らず、広く「Webメディア」全般に当てはまる話です。

その上で、僕のメインフィールドでもある「音楽」を中心に、自戒と後悔を込めた話をしたいと思います。

筆者プロフィール:照沼健太
MTV Japan、株式会社インフォバーンでの勤務を経て独立。2014年から2016年末までユニバーサル ミュージックジャパンのWEBメディア『AMP』の企画・立ち上げおよび編集長を務め、2018年にコンテンツ制作会社『合同会社ホワイトライト』を設立。テレビ東京やNetflixのメディア運営、レディオヘッドら数々のアーティストのCD封入解説文、HIKAKIN、米津玄師、押井守、藤本タツキなどのクリエイターや多くのビジネスパーソンの取材を担当。2023年末からはYouTubeチャンネル「てけしゅん音楽情報」を運営(2025年2月末時点でチャンネル登録者数約5万人)。

なお、僕たち「てけしゅん」のしゅん君が兼業ライターとして綴ったこの記事も併せて読んでいただくと、さらに多くのことが見えてくると思います。ぜひご覧ください。(照沼健太)


レコードを安売りする店は、正義か悪か

2000年代後半、円高の影響で海外から輸入されるレコードがとても安かった時代がありました。

さらに当時はネットだけで展開するレコードショップが登場し始めた時代。実店舗を持たない分コストも抑えられることもあり、7インチレコードが800円程度、12インチレコードも1200円程度、アルバムですら2,000円未満で買えることがほとんどでした。

レコードブーム以後の今となっては信じられませんが、CDよりもレコードの方が安く買えました。

しかし当時、僕が敬愛するレコード店の店主は、そんな状況についてたびたびブログで苦言を呈していました。

その内容は「安売りすれば文化が壊れる」といったもの。

当時の僕はまだ幼い消費者だったため、「安く買えればいいし、そういう店が続けばいい」くらいに考えていた部分がありました。

けれども、今となってはハッキリわかります。あれは正しかったのだと。

音楽メディアの「自転車操業」状態

写真:照沼健太

Webメディア、とりわけ音楽メディアは今、かろうじて続いているものの、実際には自転車操業のような崩壊状態に近いと感じています。

もちろん、今もなお存在感を放つメディアはありますし、読み応えのある有益な情報を発信しているところも数多くあります。そうしたメディアを否定するつもりはありませんし、僕自身リスペクトもしています。

しかしその裏には、安い給料や安い原稿料・撮影料で稼働している人がたくさんいます。なかでもフリーランスの立場で仕事をするライターの多くは、実は「専業」ではありません。専業としてやっていけないほどの報酬しか得られないからです。

音楽が好きでメディアで書いているけれど、その原稿料だけでは生活が成り立たない。結果的に「やりがい搾取」で回している構造が生まれ、それが当たり前とされてしまっています。

これが本当に「健在」と言えるのか。

もうとっくに終わっている。そう言っても過言ではないと僕は思います。

「安売りは文化を壊す」

ここで最初に書いたレコード店の話に戻ります。レコードの安売りが文化を壊す、というあの店主の言葉。僕たちはまさに音楽メディアにおいて、同じような状況を体験しています。

むしろレコードブームとインバウンド需要が訪れたレコード店より、メディアの方がはるかに悲惨です。

この状況を生み出した要因はいくつか考えられますが、その最たるもののひとつは「副業ライター」の存在と、そうしたライターを使い倒してきたメディアの構図にあると僕は考えています。

プロvsアマチュアの品質論理

写真:照沼健太

有名な仕事論として「プロとアマチュアなら、アマチュアの方が高品質なものを作れる」という話があります。

これは「プロはある程度の網羅性を持つ必要があり、さらには報酬に見合うレベルの仕事をこなす必要がある。一方でアマチュアは自分の好きな分野に先鋭的に取り組めばよく、採算を度外視して熱量を注げる」といった理屈です。

実際、僕が2014〜2016年に音楽メディアの編集長をしていた頃、まさにこの現象が顕在化していました。

当時のWebメディアとその編集者は、SNSを通じて、アーティストや特定の音楽ジャンルに深い知識を持つアマチュアと簡単にマッチングできるようになり、安価で高品質な記事を発注できるようになりました。

アマチュアにとっては「自分の記事や名前が音楽メディアに載る」ということが大きな名誉でしたし、「本業があるし」と原稿料をあまり気にしないことも多かった。また「本当にカルチャーが好きな俺たちが、商業主義的な文化を塗り替える」という、気高い志もありました。それは僕が学生時代にライターとして仕事を始めたときも同じでした。

しかし、その結果として何が起こったのか。

今の惨状です。

まるで『エヴァQ』のあの世界。

得意分野の“賞味期限”が過ぎた書き手や若さを失った書き手が去り、「価格破壊」が進んだ荒野に、新たな若手が入ってきてはさらに安価で搾取されていくループ。これが2025年現在です。

「善意」が招く、カルチャーの崩壊

写真:照沼健太

しかし、ここで強調しておきたいことがあります。

安売りするレコード屋さんにも、副業ライターにも、悪意はありません。結果的に悪となっているだけです。

他の産業で成功した企業や人物が「文化に貢献したい」という善意で音楽やクリエイティブの領域に参入し、採算度外視の「トントン」な価格設定で“還元”する。それは一時的には「カルチャーヒーロー」のように見えるし、多くの人が喜びます。

でも、それが長く続くことはほとんどありません。最終的にそうした企業や人物が撤退すると、そこには破壊された価格水準と「適正価格=高すぎる」という誤った認識だけが残ってしまいます。

結果として、ボランティアのように扱われがちな報酬基準が定着し、それを受け入れられない人が去っていく。売る人たちがどんどん減っていく。そうして文化が疲弊していきます。

本当の悪は誰なのか。

彼らを短絡的に重用したり、ありがたがったりする人たち。つまり、彼らに適性よりも安価で原稿を依頼してきたメディア、安価である理由を疑いもせずにレコードを買ってきた消費者にも、責任はないと言えるのでしょうか?

繰り返しますが、この記事は僕個人の自戒と後悔を込めた文章でもあります。

僕はかつて副業ライターでもあり、彼らに安く発注してきたメディア側の人間でもあった、両方の立場を経験してきた人間です。

そして、レコードを安く買ってきた消費者でもあります。

これから何をすべきか

写真:照沼健太

はじめの話に戻りますが、これは音楽メディアに限った話ではありません。

多くのWebメディアは同じ状況にあります。

外から見れば「まだ元気そう」に見えるかもしれませんが、その実態は限界ギリギリの“続いている風”であることも少なくありません。

では、どうすればいいのでしょうか。

安い報酬で副業ライターをどんどん増やす方法は、一時的にはコンテンツ量を維持・拡大できるのかもしれません。しかし、文化として長く息を続かせるには、しっかりとした対価を払い、適正な価格や報酬がある世界を再構築する必要があります。

……けれども、そこに無慈悲に投下された爆弾が生成AIです。

もはや、誰かの善意や、意識の改革に頼ってどうにかなる状況ではありません。

そんな今、どうするか。その答えの一つが「ダイレクトメディア」へのシフトだと僕が考えています。

(照沼健太)

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↑昨日買った本です。特撮とアニメから学ぶべきことは多いと思います。

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