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人生の転機⑩|復職準備開始!そして僕は“ある衝撃の事実”を知った

社会復帰への一歩と、突きつけられた現実


半年間の休職生活も残り1か月を切った。
体調はほぼ回復し、医師からも「いつでも復職できますね」と言われるまでになった。
ここからはいよいよ社会復帰への準備が始まる。


新しいスーツと第二のスタート


まずはスーツを新調した。
大学入学式から新卒1年目まで着続けたスーツは、もうボロボロ。
何度もボタンが取れ、そのたびに付け直してきた相棒だった。

本当は社会人になったタイミングで新しいスーツを買う予定だった。
けれど入社してすぐ、心身が限界に近づき、適応障害になった。
買いに行く気力も、余裕もなかった。
毎日を乗り切ることだけで精一杯だったのだ。

休職中も収入はあったが、傷病手当金は前職の給与の約2/3。
そこから税金や社会保険料が引かれるため、手元に残るお金は大学生のバイト代と同じくらいか、それより少し多い程度だった。
贅沢などできない生活で、出費は最低限に抑えていた。

だからこそ、このスーツは特別だった。
全貯金を握りしめ、人生で初めて自分の意思で選んだスーツ。

「ここから第二の人生が始まるんだ。」

そう思い、少しだけ背伸びをして、少しいいものを選んだ。
それは僕にとって、復職への覚悟と決意の象徴だった。


実は…人事とのやり取りがあった


復職準備を始めたとき、まず人事に部署異動の相談をしていた。
希望は「キャリアアドバイザー職」。

企業支援ではなく、人の人生に直接寄り添いたかった。
伴走支援は自分の強みだし、このままBtoBの営業を続けても
「人の人生を変える」という入社当初の想いからどんどん離れてしまう気がしていた。

転職するならキャリアアドバイザーに行こうと決めていた。
ちょうど所属企業にもそのポジションがあったから、
「ここでならもう一度やり直せるかもしれない」と思えた。

しかし、人事からの答えはこうだった。

「部署異動はできません。」

絶望しかけた僕は、食い下がるように交渉した。
「それなら辞めるしかないかもしれません」と本音を伝えると、
人事は少し考えて、こう言った。

「まずは復職してから、直属の上司に相談してください。
そこから異動の話を進めていきましょう。」

半年間、ずっと寄り添ってくれた人事担当の言葉だったから、
僕はそのアドバイスを信じることにした。
「ここまでサポートしてくれた人が言うなら間違いない」
そう思い、復職に向けて本格的に準備を始めたのだ。


復職決定と顧問医との面談


復職日は11月18日に決まった。
その1週間前、顧問医との電話面談が予定されていた。

スマホを耳にあてると、プツッという接続音のあと、
優しそうなおじさんの落ち着いた声が聞こえてきた。
少し緊張が和らぎ、胸の鼓動がゆっくりと整っていく。

「こんにちは。調子はいかがですか?」

体調、生活リズム、睡眠、食欲──
ひとつひとつ答えると、「それなら大丈夫ですね」と柔らかく返してくれる。
半年間準備してきたことが認められた気がして、少し誇らしい気持ちになった。

少し迷ったあと、僕は切り出した。

「復職後は、上司に部署異動の相談をしようと思っています。
人事からも『復職したら上司に相談してください。
そこから異動の話を進めていきましょう』と言われています。」

数秒の静寂が流れる。
電話越しに聞こえるわずかな呼吸音が、やけに大きく感じられた。

「……そうですか。」

顧問医の声が少しトーンを落とした。

「私はこの会社で長く顧問医をしていますが……
今まで部署異動できた人を、一度も見たことがありません。」

その声は冷たくはなかった。
むしろ申し訳なさそうに、優しく伝えてくれていた。
それでも、その言葉の重さは変わらない。

人事の声が頭の中で繰り返される。

『復職したら上司に相談してください。そこから異動の話を進めていきましょう。』

その言葉を支えに、ここまで準備してきた。
朝起きる時間を直し、通勤訓練もして、スーツも買った。
全部、この一言があったから頑張れたのに──。

「復職してからの異動も含めて、前例はないですね。
もちろん、復職自体は問題ありませんよ。」

顧問医の穏やかな声と、突きつけられた現実の落差に、
心の中で何かがスッと冷えていく。

「……はめられたのかもしれない。」

スマホを握る手にじわりと汗がにじんだ。
半年間積み上げてきた希望が、音もなく崩れ落ちていく感覚があった。


父への相談と再決意


帰宅して、リビングで父に直接相談した。
「もう復職する意味あるのかな……」と弱音を吐く僕に、
父は落ち着いた声でゆっくりと話してくれた。

「まずは一度復職して、上司に相談してみたらどうだ?
それでうまくいかなかったら、そのときに辞めるかどうか考えればいいんじゃないか。」

強い指示ではなく、あくまで提案。
真正面から話を聞いてもらい、心が少し軽くなった。
確かに、まだすべてが決まったわけではない。
まずは復職して、事実を確かめよう。

再び決意を固め、復職準備を続けることにした。


復職直前の上司面談


面談当日、上司に異動希望を伝えた。
しかし返ってきたのは、予想通りの厳しい言葉。

「甘い。まずは責任を持って戻ってきてください。
復職してからのことはまた話しましょう。」

適応障害は環境調整がとても大切。
しかし、この会社はその理解があまりないのだと、あらためて感じた。
不安と不信感が入り混じったまま、復職当日を迎えることになる。


次回予告


次回は、復職編

半年ぶりに迎えた出社日、
4月22日のあの日とは真逆の、軽やかな朝。
新しいスーツに袖を通し、ワクワクしながら出社した僕を待っていたのは──

同期との再会、上司との1on1、そして地獄のテレアポの日々。
復職してわずか数日で、再び心と身体を追い詰められていく僕。
そして、上司・部長との緊急1on1でぶつけた本音。

「明日、会社を飛ぶ可能性すらあります。」

人生で一番苦しい“面接”の末、
僕が下した決断とは──?

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