かもしれない弁天/毎週ショートショートnote
浪人の新八は、江戸の片隅にある「かもしれない弁天」に願をかけにやって来た。
「どうか、お願いします。
あっしに、仕官の道を開いてください!」
と、手を合わせた。
すると、どこからともなく弁天の声が響いて来た。
「あなたは明日、大名にスカウトされる……....かもしれない」
翌日、新八は江戸の町を歩いていると、突然、馬が暴れ、大名の駕籠が横転し、とっさに馬を抑えると、大名の井伊直弼が感心して、
「見事な腕前だ。名を名乗れ!」
ついに仕官か! と新八が名乗ろうとしたその時、町人が駆け寄った。
「お侍様、その馬、うちの厩から逃げたものでござんす」
大名は苦笑し、
「ならば馬の持ち主に感謝することにしよう」
と言い残し、去ってしまった。
がっかりした新八は、神社に戻った。
すると、弁天の声が響く。
「ほらね、スカウトされるかもしれなかったでしょう?」
新八は静かに手を合わせ、
もう二度と、このかもしれない弁天には、願掛けはしないぞと誓うのだった。
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