ノアの方舟#青ブラ文学部
旧約聖書に出て来るノアの方舟の話を読むと、私は“乗れなかったものたち”のことを思ってしまう。
選ばれた一対の動物たち。人間の中にはバカバカしいとしてノアたち家族を眺めていたり。
でも、大きな扉が閉まる前、遠くから舟を見ていた影があったのではないか、と。
聖書は淡々と、洪水が起き、やがて水が引いたことだけを語る。
でも、その行間には、書かれなかった気持ちがいくつも落ちているように思える。
ノアの家族だって、本当は不安だったはずだ。
「本当に助かるの?」と空を見上げた瞬間があったかもしれない。
動物たちも、雨音に耳を澄ませながら眠れない夜を過ごしただろう。
虹の場面はきれいだけれど、ノアが地面に足をつけたとき、
まず胸に広がったのは祝福よりも「やっと終わった」という安堵だったのではないか。
物語の裏側には、名前のない感情が静かに横たわっている。
そこに触れると、遠い昔の話が少しだけ身近になる。
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