ショートショート クリスマスの灯りの下で
美智子は、透へのクリスマスプレゼントを何にしようか悩んでいた。
手作りのお菓子は苦手だし、無理をしても気持ちが空回りするだけだ。
ならばマフラーはどうだろう。
そう思って店に足を運んだ。
ふっとショーウインドウ越しに外を眺めた瞬間、息が止まった。
透が、見知らぬ女性と腕を組んで歩いている。
えっ……なに、これ?
ふたりが付き合って三ヶ月。
毎日連絡を取るわけでも、頻繁に会うわけでもない。
どこか遠慮が残る関係で、このクリスマスでもっと距離を縮めたいと思っていた矢先だった。
混乱したまま店を飛び出し、透とは反対の方向へ歩きながら、美智子の胸はざわついていた。
そんなとき、
スマホに〈今日は何してるの?〉
という透からのメッセージが届く。
さっきの光景が頭にこびりついて、指が震えた。
でも、逃げても何も変わらない。
そう思い、
〈話したいことがあるんだけど〉
と返信し、駅前のカフェで会うことにした。
透は少し緊張した顔で現れた。
「さっき、女性と歩いているのを見たの」
美智子が言うと、透は一瞬驚き、そして困ったように息をついた。
「ああ、あれはいとこ。頼まれて買い物につき合ってただけだよ。
そんなふうに見えたよな。ごめん」
嘘をついているようには見えなかった。
それよりも、自分の中の不安の方が重かった。
「私、自信がなくて。まだ距離がある気がして、何かあったらすぐ離れていくんじゃないかって」
正直に言うと、透は静かに手を伸ばし、指先でそっと触れた。
「俺、本気だよ。ゆっくりでいいから、美智子とちゃんと近づきたい」
その言葉が、固まっていた胸の氷をゆるやかに溶かしていく。
「私も、そう思いたい」
美智子が答えると、透はほっとしたように微笑んだ。
「クリスマス、一緒に過ごそう」
×××××
クリスマス当日。
街は色鮮やかな灯りに包まれ、冷たい空気の中を人々が楽しげに歩いていた。
美智子は、迷いながら選んだマフラーを紙袋に入れ、待ち合わせ場所へ向かった。
透はすぐに気づき、少し照れたように手を上げた。
「来てくれて、ありがとう」
並んで歩くと、イルミネーションの光が足元に落ちて、街全体がやわらかく見えた。
「この前のこと、本当にごめん」
と透が言う。
「美智子を不安にさせたくない。もっとちゃんと話したい」
そのまっすぐな言葉に、胸の奥が少し温かくなる。
「私も。同じだったよ」
美智子は、意を決して紙袋を差し出した。
「これ、クリスマスプレゼント」
透がマフラーを取り出すと、顔がふっとほころんだ。
「すごくいい色だ。好きだよ、こういうの」
胸の奥がじんと温かい。
透も小さな箱を差し出した。真鍮のシンプルなキーリングだった。
「まだ大げさすぎるものは早いかなって。でも、これからも会っていきたいって気持ちは伝えたくて」
「ありがとう。大事にするね」
その言葉だけで十分だった。
帰り道、ふたりの歩幅は自然とそろっていた。
まぶしい奇跡なんてなくてもいい。
誰かの気持ちが静かにこちらへ向かうだけで、世界はこんなにも温かくなる。
今年のクリスマスは、きっと忘れられない日になりそう。
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