見出し画像

バス通学の思い出#風まかせ文芸部

高校時代、私はバス通学をしていた。
朝は友だちと並んで座り、たわいもない話をしながら登校した。
帰りはひとり。窓の外に沈みかける夕陽を眺めながら、
今日一日のことをぼんやりと思い返すのが好きだった。

当時は、まだ車掌さんがいた。
男性の車掌さんで、「停留所の名前」を言うのに、その言い方が個性的で面白い人が多くクスクス笑っていた。
そんな車掌さんたちのおかげで毎日の通学が少しだけ特別に思えた。
私の友だちに、バスのシフトを知ってる人がいて、その人が車掌のバスに乗るというツワモノがいた。
そして、高校卒業後、付き合いを始めて結婚したのだ。


先日、久しぶりにバスに乗った。
車掌さんの姿はもうなく、車内には静かなアナウンスの声だけが流れていた。
けれど、不思議と停留所の名前をいくつも覚えていて、
次の名前が呼ばれるたびに、昔の景色が少しずつ心の奥に浮かんできた。

窓の外には、新しい建物や知らない店も増えていたけれど、
バスの揺れ方も、ブレーキの感触も、あの頃と変わらない気がした。


そして、今は滅多に東京に行く用事は無いけど、東京に出掛けた時、都内をバスで移動したくて、バス乗り場を前もって調べて東京駅からお台場に子どもたちとバスで行ったことがある。

乗る人は少なくなったけれど、私は今もバスが好きだ。
あの頃の私と今の私を、見えない糸でそっと結んでくれるから。





#私の作品紹介
#思い出
#風まかせ文芸部

いいなと思ったら応援しよう!

てみ いつもありがとうございます。よろしければ応援をお願いします。これからも分かりやすい記事の投稿に努めてまいります。

この記事が参加している募集