向日葵#風まかせ文芸部
その坂道は、毎年夏になると向日葵でいっぱいになる。
駅から少し離れた住宅街のはずれ。誰が植えたのかもわからないのに、ちゃんと毎年咲く。太陽の方をまっすぐに向いて、誰に見られなくても、堂々と咲く。
高校生の頃、あの坂道で彼とよく会った。待ち合わせでもないのに、なぜかよく時間が重なって、照れくさそうに挨拶を交わしていた。
ある日、彼がふいに言った。
「向日葵ってさ、太陽を見てるようで、ほんとはずっと誰かを探してるみたいに見えるよな」
そのときは意味がわからなかった。
ただ笑って、「詩人だね」
って軽く返した。
それから何年も経った。彼は遠い町へ行き、私はこの町に残った。あの坂道を通ることも、少なくなった。
でも、ふと思い出して、今年の夏、ひさしぶりにその坂を登ってみた。
向日葵は、今年も変わらず咲いていた。
まっすぐ空を見つめるその姿に、私は少しだけ涙がにじんだ。
あのとき、私が何を見ていたのか、
ようやくわかった気がした。
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