あくび#片思い文芸部
あくびをする隣りの席の男子。
「ふあぁ......」
1限目の現代文、教科書を開いた瞬間、隣の席から聞こえてきたあくび。
それはもう見事なまでに、退屈の象徴って感じのあくびだった。
「眠そうだね」
思わず声をかけたのは、ただの気まぐれだった。けど、隣りの斎藤くんは、ちょっと困ったような顔で笑った。
「うん、ちょっと夜更かししてて」
「ゲーム?」
「いや、妹が熱出しちゃって。
ずっと看病してたんだ」
その一言で、胸の奥がふっと熱くなった。
あくびは、眠いからじゃなかった。
優しさの後に来た眠気だった。
それ以来、私は斎藤くんのあくびに、ちょっと敏感になった。
小さなあくびを見つけるたび、
「あ、誰かのために頑張ったのかな」
なんて思ってしまう。
そしてそのたび、私は、勝手に好きになっていく。
彼の優しさを、あくびの数だけ知ってしまうから。
いいなと思ったら応援しよう!
いつもありがとうございます。よろしければ応援をお願いします。これからも分かりやすい記事の投稿に努めてまいります。