小さな石ころとカマキリの話/青ブラ文学部
ボクは石ころだ。何処にでもある石ころさ。
誰かが気付いてくれないといつまでも此処にいる。
隣の石ころは、友だちだ。
いつも
『世界中を旅する石ころになろうぜ』
と話し合い夢を見る。
ある日のこと、ザラザラと音がした。人間がスコップで石ころを採取していた。
そして、ボクの隣にいた友だちがスコップに採取されてしまった。
取り残されたボクはひとりぼっちになった。
悲しかった。

しばらくして、ボールが飛んできた。ほんの少しぶつかって、
ボクは数メートル、飛ばされた。
そしたら、ボクを呼ぶ声が聞こえた。
「おい、おい、俺だよ、わかるか?」
誰かがボクを呼んでいた。
「あっ、その声は、隣にいた石ころ」
「そうだよ、俺だよ。元気だったか、会いたかった。うれしいよ」
声は、聞こえるが、何処にいるのかわからない。
「俺はこの中にいるんだ。セメントで固められて側溝の蓋になったんだ。だから、俺は動けない。でも、喋ることは出来る」
「すごいじゃないか!ボクはボールに飛ばされて、此処まで来たんだ。まさか、きみに会えるなんて思わなかったよ」
「良かったな、お前たち、石ころがまた出会えるなんて、滅多にあることじゃない。ほんとうに良かった」
周りの石ころたちが僕たちのことを喜んでくれた。
「また、ずっと一緒だね」
「ああ、そうだな。みんなもありがとう」
「ところで、あっちはどうなってるだろう」
誰かが言った。
「何、何?」
「アスファルトの上にカマキリがいるんだ。だけど動かなくて、踏まれているアスファルトの石ころがくすぐったくて仕方がないらしい」
「えー、そんなことがあるの?でも、車に轢かれた残骸が有るよりは良いけれど、困ったものね」

アスファルトの上にカマキリがいた。さっきの石ころの友だちがアスファルトの中で話している。
「ねぇ、カマキリ、どうして動かないのかしら?」
「ずっと、あの体勢なんだよな」
カマキリは、天下一舞踏会に呼ばれるのを待っていた。
そんなこと、アスファルトになった石ころには、わかるはずもなく、
上に乗られている石ころは、くすぐったくて仕方がない。
「弱ったな、早く退いてくれないかな」
石ころはカマキリに話しかけるが
聞こえないのか、通じないのか、黙ったままで困り果てていた。
「いつになったら迎えに来るんだよー」
カマキリが喋った!
「おーいカマキリくん、何をしているか知らないが、その体勢は、疲れないかい?」
年寄りの石ころが尋ねてみた。
「ん、誰だ!何処に隠れているんだ!姿を見せろ!」
話が通じたようだ。
「わしはおまえさんの下にいるアスファルトの石ころじゃ。おまえさんがそこから動かないから、どうなっているのか教えてくれんか」
「ギャー、石ころが喋った!」
カマキリは、体勢を変えて
話し始めた。
「俺のじっちゃんが、天下一舞踏会があるから、此処で待ってろって言ったんだ。でも、全然、呼ばれないから、どうしようと思ってたところなんだ」
「おまえさんのじっちゃんも、まぁよう言うたもんだのう。天下一舞踏会にカマキリは、出られんぞ。
おまえさんのじっちゃんは、おまえにどの程度、我慢が出来るか、
試したんじゃろ。
悪いことは言わねえ。家に帰りな!
ほれ、あそこに、上手いもんがあるぞ、誰かに取られる前にじっちゃんの土産にしたらどうじゃ」

「あれはなんだろう?みたことが無い。なんで、あそこにあるんだ?」
カマキリは、近くまで飛ぼうか考えていた。
『石ころのじいさんは土産にしろと言ったけど、持っていっちゃいけない気がする』
カマキリは、思い切って飛んでみた。
そのモノのそばまで来てみたが
持ち帰っては、いけないと、カマキリの心が叫んでいた。
「コレは何かの儀式に使うモノだ。持ち帰ったら、禍が起こる。ボクには分かる!」
と言い
其処から離れて、家に帰ることにした。
もう日もしずみ夜の帷が降りてきた。
「長い一日だったな」
カマキリは、そのまま眠ってしまった。
その時、上から鳥が急降下で降りて来た。カマキリを狙っている。
「危ない」
その時、じっちゃんが横から鳥の羽をカマで襲った。鳥は驚いて飛んでいった。
「じっちゃん、何があったの?」
「こんな所で寝てはいかん。木々の間に行くぞ」と言い羽ばたいた。
石ころたちはホッとした。そして、眠りについた。
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