風船の行方【第18回】
🍊第18回 3つのお題
🎈お題①:「風船の行方」
🐾お題②:「月の鏡」
⏳お題③:「約束の駅」
「風船の行方って、知ってる?」
彼女がそう言ったのは、放課後の帰り道だった。
夕焼けの風が少し冷たくなってきた季節。
商店街の角で、幼い子どもが赤い風船を離してしまった。
風船はふわりと浮かび、ビルの影を越えて空に吸い込まれていった。
「どこかで誰かが、拾うんじゃないかな」
俺が言うと、彼女は笑った。
「そんな都合のいいこと、あるかな」
彼女の笑い方は、少しだけ泣き方に似ていた。
二人が通っていたのは「月の鏡」という名前のカフェだった。
夜になると、テーブルに置かれた丸い鏡が、月明かりを反射してきらめく。
マスターが趣味で置いたものらしいが、彼女はその鏡を見るのが好きだった。
「ねえ、月って、鏡みたいだと思わない?」
「なんで?」
「だって、見た人の心を映すから」
そのときの彼女の横顔が、ほんの少し震えていた。
あの日、最後に会ったのは「約束の駅」だった。
名前だけ聞けばドラマみたいだが、本当にそういう駅名なのだ。
二人で「いつかまた、ここで会おう」と約束した場所。
けれど、その「いつか」は来なかった。
春になって、俺は一人でその駅に降りた。
風が通り抜けるホームに、月がのぞいていた。
ふと空を見上げると、赤い風船がひとつ、ゆっくり流れていった。
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