ひとりひとりの想いで紡ぐ ~コ・プロダクション(共同創造)~
前回リカバリーカレッジを紹介した際に、”コ・プロダクション(共同創造)”という考えに簡単に触れました。
この考えはリカバリーカレッジで提供されるサービスの根幹とも言えるほど重要なものであると同時に様々な場面で活用されているものなんです。
そこで今回はコ・プロダクションの素晴らしさをお伝えしたくて記事にしました!
その起源は1970年代、アメリカのシカゴ警察。
当時シカゴ警察はパトロールの方法を徒歩や自転車から車へと移行していました。
車でのパトロールは短時間で広範囲を巡回でき、街中の治安が良くなっていくような効率的な方法に見えますが、その期待とは裏腹に犯罪率はどんどん上昇していきました。
この状況に頭を抱えたシカゴ警察がエリノア・オストロムという政治学者・経済学者に相談したことが始まりです(のちにこの方は女性初のノーベル経済学賞を受賞されます)。
この問題に対してオストロムさんは「車の中にいて巡回していることが、保護していると思っている地域との関係を希薄にしている」と結論付けました(実際、犯罪を含め警察が地域と関わる機会が減っていたのも事実だったようです)。
ここから、犯罪を減らすには警察の持つ”専門性”と市民の持つ”経験”の両方が必要であるという気づきが生まれました。
各種政策は専門家のみによって作られるイメージがありますが、一方的に何かが提供されるのではなく提供側と利用側の双方が協力して創り上げることがコ・プロダクションであり、その効果も認められています。
少年犯罪についても専門家と犯罪歴のある少年が共同する機会を設けたところ、参加した少年の再犯率が下がったという事例もあります。
イギリスではリカバリーカレッジだけでなく、行政など様々な場面でこの考え方が積極的に応用されています。ここで、NEF(New Economics Foundation)が出しているコ・プロダクションの主な特徴が良くまとまっているので紹介させてください。
1)人を財産だと認識すること
2)人の持つ能力を積み重ねること
3)相互性を大切にすること
4)ピアサポートネットワークを構築すること ※仲間同士で支えられるようなシステム作り
5)専門家、生産者、消費者などの壁を壊すこと ※お互いの力を認め合いより良いものを創造するため
6)専門家は変化を促す触媒になること ※ただの提供者にならないこと
これらの項目からお互いが認め合い、それぞれが持つ力を重ね合いながら良いシステムが創り上げていく様子がイメージされますよね。
そして、創るだけでなく実際に実行して振り返りながらさらに良いものに仕上げていきます(もちろん、コ・プロダクションで!)。
僕がリカバリーカレッジの視察に行った際には5)の壁を壊すことが何度も強調されていたことが印象的でした。
それもそのはずで、リカバリーカレッジで講座を作るときには医師のような専門家と精神疾患の経験者が対等に話せなくてはコ・プロダクションが成り立ちません。
日本では医師はどこか敷居の高いイメージが拭い切れませんが、海外でも同様の壁があるようです(診る、診てもらうの関係を一時的にでも変えるって想像しただけでも難しいですよね)。
ここで力を発揮するのが、リカバリーカレッジのスタッフです。
事前に専門家に説明してどのような流れで進めるのかを納得してもらい、話し合いに参加する学生にも注意事項などを十分理解してもらったうえで講座作成のプロジェクトが開始すると言っていました。
このような過程を経て出来上がった講座に何度か参加しましたが、専門性と経験が見事に織り込まれたクオリティの高さに驚かされ続けています。
講座内容に経験がふんだんに盛り込まれていること、講座中も学生ひとりひとりが尊重されていることで、”自分の場合はこうだ”と参加学生がさらに自分の経験を重ねていきます。
それによって、他者を知り自己理解が深まるだけでなく同じような経験者から有益な情報を得るきっかけにもなっています。学生は本当に熱心で”何かを得よう”と積極的にメモを取る、もっと知りたいところは質問をして深めるといった様子も印象的でした。
講座作成の段階だけでなく、提供時にも皆がコ・プロダクションの考えに基づいて良い講座を創ろうとしているのも大きなポイントだと感じています。
これからもできる限り講座に参加して僕自身経験を積むことと、基礎となる理論や技能を習得して日本に持ち帰り、何かしらの形にしたいと考えています。
今回はここまでになります。
コ・プロダクションという考え方のイメージは伝わったでしょうか?
この考え方に賛同して頂ける方が少しでも増えていくと良いなと思いながら終わりにします。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
