本雑綱目 61 山口夢 明治日本の産業革命遺産
今回は山口夢著『明治日本の産業革命遺産』です。
サプライズBOOK、探し方が悪いのかISBN出てこない、というか下の読書メータも本の中身は消えていて、ひょっとして発禁にでもなったのかしら。見つけたら誰か教えて。
NDC分類では281、歴史>日本(伝記)に分類しています。
日中バタバタしてて投げるのが遅くなったのですが、雑に運用をしているのでまあいいよね。
これは乱数メーカーを用いて手元にある約5000冊の本から1冊を選んで読んでみる、ついでに小説に使えるかとか考えてみようという雑な企画です。
★図書分類順索引
1.読前印象
明治の本が続いているけれど、タイミング的にそんなときもあるよね。
同じ時期に同名・類似名の本がたくさんあると思ったら、2014年に富岡製糸場が世界遺産に登録された関連か。産業遺産、特に八幡製鐵所などの鉄鋼関係はとても興味があるところ。韮山反射炉あたりは江戸時代だっけ。自分の中では幕末(開国)前後から明治中盤あたりまでが文化的に一塊で、あんまり時代区分を意識していない。
思い浮かぶのは建築物が多いけれど、産業革命遺産というからきっといろいろあるのだろうか。蒸気機関車とか。
とりあえず開いてみよう~。
2.目次と前書きチェック
はじめにを読むと、世界遺産はランキングではなく、後世に残しておきたいものが選ばれるとある。なぜ選ばれたかを知ることが大事で、それは単純な外国の模倣ではない日本のものづくり文化の素晴らしさが評価されたのであり、当時の人々のスピリッツがすごいのだ、というようなことが書いてある。わりとライトな感じで「すごいぞワッショイ」みを感じる。対象年齢層若め。
目次は『世界遺産について』、『エリア1 萩』、『エリア2 鹿児島』、『エリア3 韮山』、『エリア4 釜石』、『エリア5 佐賀』、『エリア6 長崎』、『エリア7 三池』、『エリア8 八幡』にわかれている。鉄鋼、造船、炭鉱といった感じ。どれも興味ある……。
韮山は行ったこともあるし歴史もわりと詳しいから外すとして、『エリア1 萩』、『エリア6 長崎』、『エリア7 三池』、『エリア8 八幡』を読んでみます。いつもより多いけど好きなんだよっ。薄い本なのでよい。
意外にも富岡製糸場はなかった。
3.中身
『エリア1 萩』について。
諸藩に先駆けて作られた萩反射炉、ロシア技術によるスクーナー型軍艦とオランダ技術によるバーク型軍艦を製造した恵比寿が鼻造船所から始まり、このような技術展開の基礎として大分山たたら製鉄、様々な革命藩士を生み出した松下村塾が紹介される。
吉田松陰の人生って、改めて見るとアクティブすぎる。そもそも長州藩の動きがアクティブすぎて、戦々恐々としていた下田あたりのムーブとは真逆で比較するとなかなか興味深い。その辺はお家柄というか地域色なんだと思う。
『エリア6 長崎』について。
長崎は江戸初期より出島で長くオランダとの通商を行っていて、17世紀中頃から西洋医学を学ぶものが現れるなど西欧の知識に富む土地だ。開国後もオランダは主導権を確保するために長崎海軍伝習所などの建設に協力した。
洋船に対応できる日本初の蒸気機関を擁した近代様式ドッグである小菅修船場、洋船を製造するための長崎鎔鉄所ができ、洋船を作り始めて50年あまりで東洋一の造船所となり、現在もドッグの1つが未だ使用されている。
その他三菱長崎造船所、高島炭鉱、軍艦島についてと、これら長崎まわりの近代化を支援したグラバーの旧グラバー邸について。グラバー邸って擬洋風建築なんだね。言われてみればそうかも。
『エリア7 三池』について。
三池炭鉱の宮原杭は排水にすぐれ、日本の炭鉱を牽引した。炭鉱内電車の最初の導入も三池炭鉱である。石油運搬のために鉄道が敷設され、堤防工事を行い三池港が築港された。岩倉具視使節団の見聞を元に三角西港に近代港湾が築造された。
これ、財閥のちからだよなって思うやつ。このシムシティ的な開発状況は外から見るには凄いと思うが、おそらく周辺住民については無視されていた想像。
『エリア8 八幡』について。
福岡藩は開国以前から西欧諸国の侵略に対して警告を発するなど先進的な意見を出していたが、動きとしては消極的なまま明治に至る。日清日露戦争による石炭需要の増加により三池炭鉱及び筑豊の中小炭田が誕生し、明治30年ごろには全国の出炭量の半分以上を筑豊で賄うようになる。明治34年に寛永八幡製鐵所ができる。そしてその歴史についての輝かしい歴史。
全体的に、各地の時代背景や関連人物を紹介しつつ西欧技術の流入によって生まれた産業革命施設について紹介する本。先進的な設備を導入するというのは土地柄とその時の気風というものが大きく影響するものだなと思った。ライトな本なのであまり詳しくはない。
小説に使えるかというと、幕末明治を描くなら時代感の把握にざっと読んでもいいかもしれないし、写真もたくさんあるからそれなりに参考にはなる、けどやはりあんまり詳しい感じはしない。基本的に明治上げの本なので、労働環境や公害には触れられていないから、働く人達について書くには圧倒的に資料が足りない。
4.結び
やっぱ時代は石炭燃料、高純度鉄なんだなって感じ。他の話を書く時に調べた時、海底炭田を掘削する技術というのはかなりの新技術だったような記憶があるな。
ちょっと勘違いしてたところがあって、何かの本で日本は弥生時代だかに青銅と鉄の鋳造方法が入ってきたけどその流入時期に100年くらいしか差がないと聞いていたものだから、もともとそれなりの製鉄技術があると思ってたんだ。
でも幕末の大砲が青銅鋳造なことを考えても炉の火力が足りなかったのだろう。日本の製鉄はマサ土などの花崗岩から抽出したものが多くておそらくたたら製鉄等で狂気的に密度を上げていかないとなかなか実用に耐える強度(刀)は保てなかったのかもしれない。鍛造だと大砲作れないしね。そうするとこの反射炉とか八幡製鉄で導入されたベッセマー転炉(あれ? でもこの本では転炉の話はでてないな? 何故だ)で高純度の鉄を作るというのはもう時代2つ飛ばすほどの産業革命だったのだろうと思う。
次回は郭伯南他著『中国文化のルーツ 下』、です。
ではまた明日! 多分!
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