【短編小説(恋愛)】 斜陽 1400字
[HL:この系統の話が一般的に不謹慎な話なのか最近悩んでいる]
「お前、赤目崎さんが好きなの?」
「え、好き? 何で」
唐突な韮原の言葉に困惑して、少々固まった。全く予想外だったからだ。
「いや、だって最近よく赤目崎さんのこと目で追ってんじゃん?」
確かにその時、放課後の教室で俺の3つ前で1列左の窓際の席に座っている赤目崎さんをぼんやり眺めていた。そして秋も深まって来た最近特に、よく赤目崎さんを見ているなと思い出す。
赤目崎さんも韮原も同級生だ。
「あ? ……ああ、まあそうかも」
「えっどこが?」
「どこって……」
どこがといっても漠然と見ているだけで赤目崎さんのどこかを見ているわけでもないなと思いつつ、韮原の最初の言葉を思い出す。
「え? 赤目崎さんが好きかどうかってこと? それは……よくわからない、普通かな」
「じゃ、絶賛一目ぼれ中ってかんじ?」
「一目ぼれ?」
「理由もないんだろ、話して感じがよかったとか趣味が共通とかさ」
ニヤニヤする韮原に、少し嫌な気分になる。別に俺は好きだから赤目崎さんを見ているわけじゃない。少し不思議だなと思っていただけで。けれど思いかえせば、とりたてて話をしたこともない。授業でグループになった時くらいしか。だから赤目崎さんの趣味も、好きな話題も何も知らない。
だから赤目崎さんについては、最近俺が見ている範囲のことしかわからない。つまり中肉中背で特に華美な感じでもなく、多分ショートな黒髪で俺から見ると茶色系統の色を好んでいるように見えるってこと。あとは……そうだな、一緒に帰ってる友達はいなさそうなことだ。いつも一人で帰っている。今日もまた。
ガタリ、と椅子が鳴った。
鞄に荷物を詰め終わった赤目崎さんが立ち上がる。
そうして差し込む西日でできた影を廊下側に伸ばし、あまり見たことのない種類の明かりを背負いながら教室から出ていって、それで世界は平板に戻る。
「ほら、ずっと見てんじゃん」
韮原に言われて、確かに赤目崎さんをずっと目で追っていたことに気が付いた。
「ああ、見てたけど。……なんか変な感じに見えるんだよ、赤目崎さんのまわり。妙に明るいっていうか」
韮崎は振り返り、今は無人の赤目崎さんの机を眺める。
「明るい? それは夕陽がさしてたからとかそういう?」
「夕陽……? ああ、夕陽ってあんな風にみえるのか、普通は」
「普通?」
俺は昔からみんなのいう夕陽というものがわからなかった。俺は赤と緑がよく見えない。緑とオレンジの区別があまりつかないし、赤は茶色に見える。だから幼稚園とか小学校の低学年の頃は苦労した。見たままに塗ったはずの夕陽やトマトなんかが変な色だとからかわれる。だから俺は今も美術は嫌いだ。
けれど色の区別が全然つかないわけじゃない。それに今はバリアフリーだとかで信号なんかも人のマークが入っているから、普通に暮らしていくには特に困ったりはしない。だから別に、これまで他人にいうことでもなかった。
夕焼け、か。
俺にとって夕焼けとは昼から夜に平坦に移り変わっていくだけで、みんなのいう夕陽の輝きやグラデーションの美しさというのはよくわからなかった。
そういえば赤目崎さんが背負うあの光はなんだか、温度を感じた。そうするとあれが、赤色なんだろうか。みんな赤は茶より暖かいと言っていた。
その時急に、ざわざわと首回りに風が吹いたような感じがして、赤目崎さんがいないこの教室が肌急に寒く感じた。思わず鞄を背負い、椅子がガタリと音を立てた。
「おい、どうした」
「ひょっとしたら赤目崎さんが好きかもしれない。ちょっと追いかけてくる」
Fin
一応、主人公はP型色弱のつもりで書いています。
僕は日と体調によって五感の一部がゴソッと欠けたり過剰になったりするんだけど、明度が急に上がった時はこんな風に世界の見え方がガラッと変わる時がある(たまに)。特定の誰かだけ特別に見えたりはしないけど。
参加しますー。期限は今日まで……?(いつも雑)。
#片想い文芸部 「色にまつわる」片想い
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